仲間?①
ギィィ……と、錆びついたドアの重い音が、静寂に包まれた小屋の中に響き渡った。
(やばいやばいやばい! 騎士団か!? 賞金稼ぎか!? 俺の第二の人生、マジで数分で終わるのか!?)
健斗は心臓が口から飛び出しそうなほどのパニックに陥り、身構えた。指名手配書に載っていた罪状を考えれば、踏み込んできた相手に即座に首を跳ね飛ばされてもおかしくない。冷や汗が背中を吹き出す。
だが、光を背に受けて入ってきたのは、甲冑を着込んだ騎士でも、血生臭い大男でもなかった。
そこにいたのは、水色の髪を揺らす小柄な女の子だった。華奢な体つきに、幼さの残る顔立ち。どう見ても十代前半にしか見えないその少女が、健斗の顔を見るなり、瞳を輝かせて駆け寄ってきた。
「レディオン様! ずっと、ずっと会いたかったです……!」
「……え?」
拒絶する間もなく、少女は健斗の胴体に力いっぱい抱きついてきた。
(……え? 誰この子!? てか、めちゃくちゃ柔らかいし、なんかすごく甘くていい匂いがする……!?)
男としての理性が一瞬で爆発しそうになる。しかし、健斗にはこの時、ゲームのアバター機能として刻み込まれた『感情抑制』のパッシブスキルが強制発動していた。どれほど脳内でパニックを起こしていようと、高身長の美青年『レディオン』の表情は、氷のように冷徹で無崩のままだ。
(あぶねぇぇぇ! このスキルがなかったら、引きこもりニートの俺に美少女が抱きついてきた瞬間に、変な声出して崩れ落ちてるところだった……!)
心の中で冷や汗を流しながら、レディオンとしての威厳を保ち、低く静かな声で問いかける。
「……貴様は、誰だ?」
その一言が出た瞬間、少女の身体がびくつと震えた。健斗の胸から離れると、その大きな瞳からボロボロと大粒の涙をこぼし始める。
「私のことを……お忘れになったんですね……。そうですよね……レディオン様にとって、私なんて覚える価値もない存在なんですよね……」
絶望に打ちひしがれ、今にも消えてしまいそうな声で呟く少女。だが、健斗の頭の中で、十五年間のゲームの記憶が激しく巡っていた。水色の髪。小柄な体躯。そして、新聞の『指名手配』の端に小さく載っていた。
(あれ……? この子、どっかで見たことあるぞ……。水色の髪……まさか……)
「……お前、まさかシエルか?」




