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【09話】二人の馴れ初め

 私、川岡美和かわおかみわは、4年前ここへ引っ越してきた時に、

 彼女から勇気をもらったのだ。


 小学4年生の7月に、私は生まれ故郷の大阪から、この町に越してきた。

 大阪といっても都会ではない、だんじりで有名な岸和田の近くで正直田舎だ。

 まぁ古墳しかない咲良の住んでる辺りに比べたら都会だけど。


 親の仕事の都合でこの町にやってきたが、私は前の学校でもこのズケズケと言ってしまう性格で、周りにうまくなじめてなかったから、ちょうど良いとさえ思っていた。


 ドラマでよくある、転校する時の涙のお別れが無かったのは、ありがたい。


 夏休み前に、教師主導の「お別れ会」はあったが、形だけのものだ。

 正直言って迷惑だったし、旧クラスメイト達も迷惑だったと思う、旧クラスメイトの皆、正直スマン。


 でも、そこはお互いに空気を読んで、そういう儀式だと思って段取り通りに乗り切った。


 そして夏休みに入ってから、引っ越した。


 引っ越しは楽しかった。

 非日常が楽しかったのだ。


 私は、台風の日に喜ぶタイプの子供だった。

 その頃からコロッケが大好きだった。


 新しいご近所の冒険も楽しかった。


 宿題がない夏休みは、至上の喜びだった!!


 新しい学校に通うのは二学期から。

 ……と思うと、少し、いやかなり憂鬱だった。


 夏休みのうちに、転校手続きと通学路の確認のために、母親と一緒に新しい学校に行くことになった。


 借りてるアパートの周りも充分田舎だが、さらに田舎に向かって走るバスの窓から景色を眺めてると、だんだん不安になってきた。


 建物が程よくある田舎町の景色から、山と田んぼと畑の中に時々建物の景色へ、さらに山と山と時々海でホントに時々ポツンと建物、そんな景色に変わっていく。


 南下をしながら、町から海沿いに寄った後、山の方に寄っていく道。


 この辺って、人が住んでるの?


 同級生……人間だよね……?

 くまさん とか たぬきさん じゃないよね?

 ちょっとだけファンシーな想像をしてしまったことは許して欲しい。

 その頃、当方まだ、小学4年生なので。


 今考えると、リアルに熊や狸がクラスメイトだったら、獣臭がすごくてヤダなそのクラス。

 私は『いきものがかり』になるのだろうか?


 まぁそのすぐ後に、一応人間だけど、たぬき顔の親友ができるんだけどねw


 現在、絶賛大ゲンカ中だけど……

 ぐぬぅ……


 5年の時空を超えてくらった、現代の私の精神的ダメージは置いておいて、


 1時間に1本しかないバスに揺られて20分程で、小学校のあるバス停に着く。


 バス停は小学校のすぐ前で、迷う心配は無さそうで安心した。


 田舎の道は怖い。


 ランドマークが皆無で、同じような景色が続き、交差点に名前がなく信号もないので、人に道を尋ねると、ほぼフィーリングで返ってくるのだ。


「まっすぐ行って、右だよ」

 って言われても、どのくらいまっすぐ進むかはその人の感覚次第。


「ちょっと行った先」に何度騙されたことか……

 田舎の人のちょっとは、人によってキロ単位で誤差があるんだよ……


 また、「最初の分かれ道を右に」だとしても、

「これって道?」という、道未満に見える小道がちょいちょいあったり正直カオス。


 土地勘は、何度も間違えながらの覚えゲーで、覚えた後、人に教えるのもまた難しい…


 なので、子供がひとりで外出するには、都会とはまた違った危険があるのだ。


 だから、母も私も少し心配してたのだが、バス停から小学校は目と鼻の先で、迷うことなく入っていけた。


 大きく立派な建物の小学校だが生徒は少ない、小規模特認校制度の学校で、簡単に言えば生徒が少ないから学区関係なく入学できて、生徒が少ないが故に、きめ細かい教育が受けられるのが、魅力なのだそうだ。


 私も学区的には別の小学校へ行くべきなのだが、親のすすめでこちらの小学校に通うこととなった。

 確かに、大阪にいた頃の学校と比べて生徒数が少なく、アットホームな感じの学校だった。


 その日はちょうど、学校の講堂で夏休みを利用した剣道大会が開催されていた。


 参加人数の関係で対戦が少ないからか、お昼前にも関わらず大会自体は終わっていた。


 今は小学生の部の優勝者が、大人の部の優勝者と、エキシビジョンマッチ的な対戦をこれから始めるところだった。


 後から聞いた話だが、大人の部の優勝者は、学校生徒のお父さんで警察官。

 剣道の腕前も五段で、警察官の中でも他の警察官に剣道を教える、武道指導員レベルの人らしい。


 対する、小学生の部の優勝者は、めっちゃ小さい子で小学2年生ぐらい。


 身体が面と胴衣ですっぽり覆われていて、その子の外見は全くわからない。

 掛け声と動きで、声の高めの男の子に見えた。


 こんな小さな子が優勝したんだ……

 感心した私は、自分のスマホで、この対戦を撮影し始めた。


 この動画が、私たちの運命を大きく変えることになるとは、この時は思いもしなかった。


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