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【07話】計画頓挫

「え!?いいのっ!! 誘っといてなんだけど、咲良が反対しなかったの意外だわっ!!」

 美和は珍しく、喜びを隠そうともせずに、小踊りしそうな勢いで、喜色満面で言った。

 訂正、実際ちょっと踊った。


「こ……今回はね?」

 美和のあまりの喜びっぷりに、ちょっぴり引きつつ、わたしは応えた。


 今回は、お母さんに事前に話を通して許可をもらえていたことと。

『一日前倒すだけだから心配しないで』とお母さんに置き手紙でもしておけば、それほど心配をかけないこと。


 そして、お母さんに「気を使わせて来た」と言わせてしまった事が、わたしの背中を後押しした。


 もうちょっとだけ、わがままでも、良いのかも知れない。


 今はそんな風に思っている。

 もちろん、あまり心配をかけない範囲でだけど……


「あんたを説得するために、百と八つの説得材料用意したのに無駄になったわ〜!!とんだ骨折り損だわ〜♪」

 愚痴ってるはずなのに上機嫌、という非常に珍しい状態の親友を微笑ましく見つつ、


「どんだけ必死なんだよ。さてはお主、わたしのことが大好きだな?」

 親友に優しく突っ込んでおいた。



 キーンコーンカーンコーン〜♪


 ホームルームの予鈴のチャイムがなって、二人の朝の作戦会議は、ここでお開きとなった。



 キーンコーンカーンコーン〜♪


 お昼休みとなって、給食の時間だ!


「いただきます!」

 本日のメニューは、きなこ揚げパンと、にんじんのポタージュ、フレンチサラダと牛乳。

 そしてデザートの、豆乳プリンタルト♪


 おなかにたまる、がっつりこってりとした揚げパンに、優しい甘さのにんじんのポタージュがベストマッチ!さっぱりとした酸味のフレンチサラダが、お口の中を爽やかにリセットしてくれて……


 またがっつりこってり、優しい甘さ~ の無限ループを完成させる!!


 その戦略は見事!あっぱれ!ほめてつかわす!!

 あっという間に平らげて、デザートの豆乳プリンタルト♪

 豆乳の、プリンの、タルト♪ おいしくない訳がないよね!!

 予想通りの控えめな甘さの美味しさで、こちらも瞬殺でいただいて……


 異論はあると思うが、わたしは牛乳は最後に一気飲み派だ!

 ごっくごっくとのどを鳴らして飲み干して……


 ぷっは~!!


 大変おいしかったです!!

 残念な点があるとしたら、きな粉揚げパンが1個しかないところです。

 2個あれば完璧でした!!


 「ご馳走様でした!」

 さぁ食器を片付けて、美和と一緒に作戦会議の続きだ。


 同じく手早く給食を片付けた美和が、席の主がさっさと遊びに行って空になったわたしの前の席にやってきて、椅子に跨ると、ウキウキと言った。


「じゃあ、謎解き旅行の内容、具体的に詰めていこうか♪あと、チラ見スンナ!」

 やはり、わたしの本籍地はあそこに移すべきだな。美和のふとももに家を建てよう。

 と思いつつ、わたしはこう応えた。


「ごめんね?ご期待に添えなくて、次回からはご期待どおりにガン見するわ!」

「ヤメロ!!」


 コホン!とわざとらしく咳払いしたあと、美和は、

「計画は簡単よ!中村のおばちゃんと行くと見せかけて旅行を一日前倒しするの!」

 と、朝言ったことを再確認した。


「計画変更が少ないのはありがたいけど、でもそれだと、結局はお金の問題が残っちゃわない?」


 わたしが残った課題を伝えたところで、二人の反応が割れた。


「えっ!?あんたマジ?」

「えぇ!?マジですが何か?美和もそうだよね?」


「私はもう前借りしちゃったよ?」


 さすがは美和、仕事が早い。


「じゃぁ、お金の問題は、わたしだけ?うわぁ、置いてけぼりを食らったよ!」


「でも、前借りする約束は出来てるんだから、早めに受け取っておけば、いいんじゃない?」


「それが、うちのお母さんの今までのパターンで言うと、こういう時、お金をくれるのって、だいたい直前なんだよね……多分、当日朝とか」

 別になにか悪いことをした訳ではないのだが、わたしはなんだか、美和に対して申し訳ない感じがしてきた……


「家のお手伝いでお小遣い稼ぐ手も、前借りの約束のせいで、逆に言い出しづらくなっちゃったね」

 美和が、しまったなぁという感じで話す。


「え?なんで??」


「怪しまれちゃうでしょ?お金に困ってる訳でもないのに、そんなことしだしたら」


「確かに……急いでお金が必要な理由があるの?って、お母さんに絶対訊かれちゃう」

 わたしは嘘が苦手だ、追及されたら確実にバレるだろう。

 行き詰まって、二人とも黙ってしまった。


 うーん、どう考えても、手詰まりだよなぁ……


 やっぱ、中村のおばちゃんに連れてって貰おうか。

 でも、美和の朝の喜びっぷりを考えると、言い出すのは、かなり気まずい……


 しばらく経って、なぜかわたしでは無く、美和の方が、とても言い出し辛そうに口を開いた。


「ひょっとしたら、咲良は怒るかも、しれないんだけどさ……」


「なに?」


「怒らない?」


「怒るかどうかは、聞いてから決める」


 覚悟を決めて美和は言った。


「……約束自体は出来てるんだから、前倒しで謎解き旅行で家を出る前に、

 お母さんの財布からコッソリお金を抜き取っちゃうってのは?」


 なに言ってんの!?この子!!


「さすがにそれは出来ないよ!?ドロボーじゃん!!」


「ばか!声がでかい!!」

 つい、大きな声で言ってしまった。

 そして、さらにデカい声で、ばかって言われた。


 二人して周りをうかがって、今の騒ぎで注意を引いていないことを確認すると。


 小声で美和は話の続きを進める。

「いやいや、約束自体は出来てるんだから、泥棒は言い過ぎじゃない?

 予定よりちょっと早めに、ちょうだいするってだけでさ……」


 美和の言っている意味は分かる。

 分かるんだけど……


「だけど、やっぱり無理だよ……」

 わたしは俯いて、絞り出すように言った。


 美和はわたしを説得しようと試みる。


「あんたのお母さんなら、後で謝ったら絶対許してくれるよ?私も一緒に謝るよ」


「だめだよ……むり……

 ……それに美和は関係ないじゃん……」


「なによ、それ?、二人で大人を出し抜くって、決めたじゃん」

 ムッとした感じで美和が詰めてくる。


「出し抜くと裏切るは違うよ……

 わたしはお母さんを裏切れない……余計な心配かけちゃう……」


「……咲良はいつも、いつも、お母さんが心配、お母さんが心配、お母さんがお母さんがってさ!!」


「何よ!家族が大切なのは、美和だって一緒でしょ!!」


「距離感の問題よ!自立しろってんのよ!!

 それじゃ、あんたのお母さん、あんたの人生の足枷じゃん!!!」


 美和は、しまった!といった顔をした。


 分かるよ、言っちゃった後、言い過ぎたって思ったんだよね……


 分かるよ、

 分かるけど……


 ごめん、それが分かる前に、心のシャッターが、下りてしまったんだ。


 …………



「もうなにもはなしたくない」


 わたしは事務的に言葉を絞り出して席を離れた。


 それ以来ずっと、

 美和と口を聞いていない。

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