【06話】親友の誘惑
こんな秘境で、ひとりで過ごすことにもすっかり慣れた昼下がり。
土曜日の部活は午前中だけで終わるので、買い食いして自宅に帰って来ても13時半過ぎ。
自宅から美和の家は、山道を自転車で20分かかるので、休みの日でも、なかなか気軽に友達と遊びに行けない。
学校と部活、学校帰りの通学路が、友達と遊ぶ貴重な時間だった。
いつもなら、すぐに帰宅せず、そのまま、美和と一緒に本屋さんに行ったりもするのだが。
しかし今回は、お金を貯めるために、お互いまっすぐ帰宅した。(お肉屋さんのコロッケは別腹)
「いただきます」
台所に、わたしのお昼ご飯用の、ラップにかけられたおにぎり二つと、卵焼きのお皿があったので、チンして頂いた。
おにぎりの具は鮭だ。瓶入りの鮭フレークではなく、焼いた塩鮭をほぐして入れてくれていた。
もう一つは梅干し、はちみつ入りの甘いやつではなく超酸っぱいやつ!
部活帰りのほどほどに疲れた体にこれがめっちゃ効くのだ!
甘い卵焼きで酸っぱさを中和しつつ完食。
「ご馳走様でした」
今日のごはんもめちゃ美味しかった♪
それから間髪入れずに食べた食器の洗い物。
いっぷく入れると、動きたくなくなっちゃうからね~
買い食いも、外食も美味しいが、お母さんの作るものは、おにぎりとかのちょっとした物でもなんでも美味しい。
今度作り方を教えてもらいたい。
届いていた白百合の騎士さんのお手紙を読んで中身を確認して、明日からのトレーニングメニュを考えた。
そして現状の成果を便せんに書いて、いつもの住所に送る。
最近は白百合の騎士さんの体調が思わしくないようで、代わりに白百合の騎士2号さんからもお手紙が届くようになった。
ちなみに白百合の騎士1号さん・2号さんはLINEで連携しているので、どっちにお返事を郵送してもいいらしい。
なら、わたしにだけ郵便使わなくてもと思うのだが、この方が浪漫があるとかで聞いてもらえていない。
『あしながおじさんぶってる変態のこだわりなんてほっとけ!』って美和はいつも言ってるんだけど、二人ともいい人なので、わたしは付き合ってあげようと思っている。
お礼も含めて書いたお返事を封筒に入れて封をして、切手も貼ったので、明日ポストに放り込んでおこう。
夕方16時になったら、洗濯物を取り込んで、アイロンがけと畳んでタンスにしまうのが、わたしの家でのお仕事だ。
お母さんが帰ってくるのは18時ごろ、それまでに宿題を済ませて、あの話をどう切り出そうかと色々作戦を考えたが、それは無駄になってしまった。
「あんた写真の謎を解くために、美和ちゃんと一緒に中村のおばちゃんに、松山までフェリーで連れてって貰うんだって?」
お母さんと夕食を食べながら、いざ話を切り出そうとした時、
いきなり、ここまでのあらすじを、超分かり易くまとめた一言を聞いた。
「ええ!?」
本気でびっくりした。何もかもが漏れなく仔細に伝わってる事に!
写真の謎の話までって、あの時おばちゃんどこから聴いてたの!?
筒抜けすぎない?わたしたち!!
「いいわよ、お小遣い前貸ししてあげる。行ってらっしゃい!」
「いいの?」
あまりにも、あっさり承諾を得られて、お金の件も解決してしまって、拍子抜けもいいところだ。
「大丈夫よ、あんたには前に私が倒れちゃった時から、変に気を使わせちゃってたからね。
中村のおばちゃんが一緒なら心配ないし、楽しんでらっしゃい!
あと、白百合の騎士さんお元気そうだった?お手紙届いてたんでしょ?
あの人たちいつまでヘンテコな名前を名乗ってるのかしらね?」
「お母さん、白百合の騎士さん、じゃなくて、白百合の騎士さん、だよ?」
「そこ、こだわるポイントなんだぁ~」
「そうそう、白百合の騎士さんといえば、こないだ美和がね……」
家族二人して、わははと笑いながら食べる晩御飯は最高だ。
家族の笑顔が最高のおかずだと思う。
ちなみに、晩御飯のおかずは、チューリップ(鶏のから揚げ)、野菜サラダと、玉ねぎとジャガイモのお味噌汁と、コロッケだった。
買い食いのコロッケと、晩御飯のコロッケとジャガイモのお味噌汁で、ジャガイモがトリプッてしまったケド、我が家はじゃがいもは大好物なので問題ナッシング!
本日2度目のコロッケも、大変美味しゅうございました。(コロッケは別腹)
「トントン拍子すぎて、なんかやだ」
週明けの月曜日、中学校で再会したての親友は、ご機嫌斜めだ。
朝のホームルーム前の教室で、二人してダベっている。
どうやら美和の家でも、同じような感じで、話がスムーズに進んだらしい。
いや、まぁ、既に日曜日の美和とのスマホのやり取りで、知ってたんだけどね。
いまいち納得できないところも含めて……
「冒険感が足りない……」
どうやら親友はスタンドバイミーがやりたかったらしい。
頭の中で主題歌がかかる。
うぇんざ、な〜い♪
良いよね、ひと夏の友情と青春の冒険。別に死体は見たくないけど。
「謎を解き宝を手に入れる……」
おや?やりたかったのは、グーニーズだったのかな?
てん、てけ、てけけてんてん!ててて、てけてんてんてん♪
いいよね、シンディー・ローパー!可愛くて歌うまくて♪
ところであれって、当たり前のように、海賊船のお宝ゲットした体でエンディングだけど、あの財宝の所有権ってどうなの?
主人公たちがいただいちゃって良いものなの?
あの映画見るたびに、そこが気になってエンディングが頭に入ってこないんだけど……
「……って、うちらは謎を解いても一銭も入らないわよ!?」
珍しくわたしの方からツッコミを入れると、ニヤリと笑って美和は言った。
「大人達を出し抜かない?
私たち二人だけで、旅の計画を前倒しするの!!」
わたしの親友には、こういう所がある。
そんな親友の無茶を止めるのが、いつものわたしの役目なのだが……
「さんせい♡」
今回は乗ってやる事にした。
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