【04話】旅の計画
いやいや、遠い将来よりも次の夏休みだ!
わたし達の立てた行程を、二人で確認する。
午前7時30分に中学校近くの、美和のアパートの前で待ち合わせをして、9時までに柳生港まで自転車で移動。
柳井港を9時ちょうどに出航する防予フェリーで、松山の三津浜港まで移動。
移動中、フェリー内であの写真の場所を調査。
松山の三津浜港に、11時35分着。
三津浜港でお昼ご飯、甘めのソースと牛脂の旨味が特徴のお好み焼き。
名物「三津浜焼き」をいただく。
「三津の渡し」の無料乗船体験。
三津浜の古い町並みを散策。
国の登録有形文化財でもある喫茶店や、古い病院跡をおしゃれに改装したリノベスポットで、ノスタルジックな雰囲気に浸りつつ、お茶やスイーツを楽しむ。
伊予鉄三津駅から伊予鉄高浜線で、ひと駅移動
移動先の駅前で、愛媛のキャラクターグッズとかのお土産をウィンドウショッピング。
海沿いのカフェから瀬戸内海を一望しながら、
愛媛の定番みかんを使ったソフトクリームやジュースを楽しむ。
三津浜港に戻り、17時35分発のフェリーで帰る。
柳井港に20時10分着。
自転車でそれぞれの家に帰る。
21時すぎごろ帰宅予定。
夏休みのちょっとした冒険だ。
「……って言うか、ほぼ日帰り観光旅行だよね~」
「いいのよ、あの写真も子供連れである以上、多分観光だろうし、行った先で咲良の記憶に引っかかるものがあれば、その都度調査の予定で行きましょう」
「了解!ただ……」
ただ、お金以外にも帰りが遅くなることがネックだった。
21時過ぎの帰宅は、完全に門限破りだ。
「黙って行くか……」
親友が物騒なことをいう。
「門限破りは、確実に夏休みの後半外出禁止令だよ!?」
夏休みを余すことなく満喫したいわたしは、当然の主張をした。
「でも、事前に許可取ろうとして反対されたら?
それこそ、夏休み全部外出禁止令かもよ?
なら、この謎解き旅行だけは確実に通る、黙って行くのがベストじゃない?」
「うん、だけど……」
お母さんには心配をかけたくない。
「だよね、咲良はお母さんが心配だもんね……」
美和はわたしの意見を無理に曲げようとはしてこない。
できた人なのだ。長く付き合っていきたい。
でも、
かかる費用は、何とかする。
門限破りは、黙って行く。
子供の計画にありがちな「企画倒れ」の匂いがただよってきましたよ?
う~ん……
悩んでいると、中村のおばちゃんが助け舟を出してくれた。
「どっちにしろ中学生二人だけで旅行なんて反対されるでしょ?私が一緒に行ってあげるわよ」
「え!?いいんですか!?」
わたしは思いもよらない助け舟に驚くばかりだった。
「でも、お店とか大丈夫ですか?私たちは、夏休みだから大丈夫だけど……」
美和は、まずおばちゃんの都合の心配をしている。さすがだよ親友。
「だから、日程は私の都合のほうに合わせてくれる?その代わり、アンタ達のお母さんの許可は、おばちゃんに任せて!」
それなら、何とかなりそう!
このおばちゃんは、お母さんが今のわたしぐらいの頃から、ここでお店をやっていたのだ。信頼も厚い。
小さい頃に、お母さんに連れられて来たAコープの買い物帰りに、うちのお母さんと中村のおばちゃん、よく立ち話をしていたっけ。
「でも、お金もかかる話ですので、申し訳ないです」
美和は遠慮がちに言った。
「私の実家は松山市だから、どのみち夏に1回は行くつもりだったんだよ。だから大丈夫。
自分達のお金の事だけ、アンタ達の力でなんとかしなさいな!」
面倒は見てやるから、お金は自分で何とかしろ、面倒見の良い大人の折衷案だった。
「それとも、美和ちゃんは、咲良ちゃんと二人っきりで旅行がしたかったのかな?」
「……!?、あ、いや、その……」
とたんに、しどろもどろになる美和。
「へ~、そうなんだぁ~、わたしと二人っきりがいいからゴネてたんだ~」
わたしはドヤ顔で親友を見つめてやる。
「ぐぬぬ……」
わはは!今日は2連勝だわ!!
「私はそのまま松山の実家に泊まるから、帰りのフェリー乗り場まで連れてってあげる。
柳井港までどっちかのお母さんに迎えに来てもらえれば、誘拐される心配もないでしょ」
確かにそれならフェリーの中で、わたしのことが大好きすぎる親友に、さらわれる事はなさそうだ。
「はい!!」わたしは、ありがたかった。
「はい……」親友はまだちょっと思う所がありそうだ。
という感じで、コロッケの買い食い作戦会議は、無事にお開きとなったのでした。
ハズだったんだけど……
「いいんだけどさ~『はじめてのおつかい』になりそうなんだよね……」
親友はグチった。
自転車を並んで押しながらの帰り道、さっきの話が蒸し返されていた。
「はじめてのおつかい」は子供のお使い初挑戦を大人が見守る番組だ、当然子供の安全は保障されている。ヤラセとも言えなくもない。
そう言うところに、モヤるものを感じているのだろう。
「でも、確かに中学生二人だけだと、確実に反対されるよ?黙って行ってお母さんに心配させたくないし……」
「確かにそうだよね。1つ問題が解決して、前進したと前向きに思おうか!!
私たちの闘いはこれからだ!!」
右手を天に突き上げ。打ち切りマンガの最終回のようなことを叫びながら、美和は気持ちを、揚げたてのコロッケの衣のように、サクッと切り替えた。
この切り替えの速さは、彼女の美点だと思う。
川岡美和先生の次回作にご期待ください。
「じゃあお互いの家族に許可取って、お金はどうにかして工面して、夏休みの謎解き旅行目指して頑張りましょう!」
そう言うことになった。




