【29話】み~な~み~せと~ない~かい~♪
昨日と逆の道順をたどって三津浜港に到着。
昨日のわたし達より1本早い9時30分着のフェリーで、お母さんはやってきました。
「み~な~み~せと~ない~かい~♪」
歌って踊りながらやってきた。
ノリノリだった。
「咲良のお母さんって、あんな感じの人だったっけ?
病弱なイメージあったんだけど!?
それにあの歌は防予フェリー時代のCMソング!!
作詞・作曲・誰が歌っているのかも!
全てが謎の隠れた名曲!!
いつか完全版が聴いてみたい!!」
「なんでそんなこと知ってんのよ?
なんでそんなこと知ってるんだい? コナン君? かよ!?
……美和はわたしのこと変態ってゆーけど、あんたもたいがいよ?」
「咲良〜! さくらおばちゃ〜ん! 美和ちゃ〜ん! お待たせ〜♪」
うちのお母さんが、元気にやってきた。
体調が悪い時もあるんだけど、今日は絶好調のようだ。
「お母さ~ん! 来た早々だけど、帰ろっか!! そのフェリー乗って♪」
と、提案するわたし。
「うちの娘!ひどっっ!!」
やっぱり親子だなぁ〜、という感じで見守る親友と、中村のおばちゃんの生暖かい眼差しを受けながら。
「んで、今日はどこにいくの?」
と、丸投げのわたし。
「一応私達の予定では、隣の駅でお茶しながら観光の予定だったんですけど、中村のおばちゃんのオススメってあります?」
美和は、手短に自分たちの立てていた予定を伝えた上で、地元の中村のおばちゃんの判断を仰いだ。
美和はできるヤツなんですよ! わたしも鼻が高いです。
「なんでアンタが偉そうなのよ?」
「ふふふ……そうだねぇ、二人とも初の松山観光だし、フェリーで海は散々見ただろうから、松山市内の方に行ってみようか?」
中村のおばちゃんが案を出して、
「じゃあ、定番の坊っちゃん列車だね!」
うちのお母さんが、楽しそうに賛成の意を表した。
三津浜港から、伊予鉄道を乗り継いでめざすは道後温泉駅!
昨日も思ったが、市街地を走る電車は新鮮な体験だった。
車窓から見える景色が、山と海しかない山口の田舎とは全然違って楽しくて、
美和と並んで流れる景色を眺めながらの1時間はあっという間だった。
そして到着!道後温泉駅!!
坊ちゃん列車は目の前だ!!!
……ですが。
「もうそろそろ、お昼前ですよね~」
「アンタ……朝あれだけ食っといて、まだ11時前よ?……」
「しってた」
「しってた」
「か、……観光地のお昼はどこも混むから! あなたのためだから! みんなのためだから!!」
必死に弁明するわたし、決して食いしん坊ではないんですよ?
「まぁ咲良ちゃんの言うことにも一理あるし、おいしい郷土料理のお店にいこっか!」
中村のおばちゃんが、イージス艦のような強くてでっかい助け舟を出してくれた。
四人で道後温泉駅から少し歩いた先の道後商店街(道後ハイカラ通り)にある郷土料理のお店に向かいます。
観光地を歩くのはとても楽しい。親友の美和と一緒ならなおさら!
大人たち二人を置いて、テンション高めに商店街のあちこちを見て回ってはしゃいで回った。
中村のおばちゃんに連れて行ってもらったお店は、海鮮料理がメインで和風な造りの、夜は居酒屋さんもやってる感じのお店でした。
「んじゃ、わたしは天丼御膳をいただきます!!」
先陣を切るわたし。
「私は海賊うどんで」
続く美和は手堅くうどんを選択した。
「ここは迷わず定番よね、鯛めしをお願いします。」
お母さんは名物の鯛めしを選んだけど……
「それ!今朝食べた!」
「美味しかったですよ」
「あんた達、朝から豪華ねぇ~」
「私も朝は鯛めしだったし、海賊うどんにしとこうかね」
中村のおばちゃんは美和と同じ海賊うどんを選択した。
海賊うどんが二人……
なんだろう、他人が選んだ方が正解に見えちゃうんだよね……
隣の芝は青いってヤツ?
隣の芝どころか、まだ影も形も見えてはないんだけど?
ちょいと待ちましたが、出てきた料理の量の多さと豪華さでそりゃ時間かかるわと思いましたよ!
待ちに待ってた、天丼御膳!!
全員分のお食事が次々に届いたところで、
「いただきます!!」
四人で合掌した。
「てんぷらは軽い衣で揚げられて、しっかりサクサクとした軽い食感が楽しい!
かけられたタレは甘すぎず、さりとてしっかりとしたコクがありながらも、後味はさっぱりとしていてしつこくないので、軽い衣のてんぷらと絶妙にマッチ!!
ボリュームも満点!!ぷりぷりの海老天2本や野菜天、ちくわ天などが丼からはみ出すほど豪快に盛られてて、ジェンガをプレイするがごとく食べる順序も超大切!
これはもはやハラハラドキドキのドラマティックホビー!!
そんなハラハラドキドキの展開も、珍しくもおいしい『卵の天ぷら』が優しくまろやかな味わいのアクセントに!!
天丼のほかに新鮮な鯛やカンパチなどのお刺身の舟盛り、茶わん蒸し、小鉢、お味噌汁、フルーツには当然愛媛のみかん!!
これは大満足のボリュームですよ!! さすがのわたしもおなかいっぱいです!!」
一気にまくし立てたわたしに、美和は冷静に、
「うどん一口食べる?」
「いただきます!」
「お腹いっぱいとは……?」
「美和から『あ~ん』してもらううどんは別腹だから!!」
「はい!あーん、」
「美和が……、あ~んを!? してくれるの?
あ、あ~ん……
あっ熱っっ!! そこ! はな!! 鼻だから!!」
美和は、わたしの熱々おでんの妄想を、かるく超えてきました。
鼻は盲点でした。
あっはっはっ!!
中村のおばちゃんと、お母さんの笑い声がにぎやかに響きました。




