【27話】北のさくらは遅咲きなのよ!
「お梅ばあちゃんはその話ばっかりなんだからぁ」
お兄さんから解放された中村のおばちゃんがやってきた。
「挨拶回りは当たり前のことだよ?
それに長い時間が過ぎて、時代が変わったことが一番大きかったと思う。
許せないと思う気持ちが風化して、時代が変わって、そもそもの怒る理由自体にそれほどの意味が無くなったからね」
「それはそれだけの長い時間さくらちゃんが諦めなかったからさ、当たり前の事を諦めずに続けることが一番難しくて、一番大切なんだよ」
おばあちゃんは、中村のおばちゃんに話す体で、わたし達にも助言を、人生のアドバイスをしてくれているんだと思った。
「……ところで、中村のおばちゃん、その両の手に持っているものは……」
中村のおばちゃんは、両手にたくさんのご馳走が乗っている大皿を持ってきてくれていた!!
「咲良ちゃん、食べるだろ?」
「いただきます!!」
「咲良……アンタ……」
親友はもはや言葉もないほどにドン引きしている。
……が、ご馳走が目の前にあれば、食べないのはむしろ失礼にあたる。
こちらも食わねば無作法というもの、全力でいかせていただく!!
色とりどりのお刺身が乗った大皿で、竜宮城に招待された浦島太郎の気分!!
「アコウ(キジハタ)白身のトロとも呼ばれる言わずと知れた夏の高級魚!
上品な中にもしっかりとした脂の旨味と、コリコリとした食感が楽しい!
カワハギは白く透き通った身と、フグにも劣らない歯ごたえで格別!!愛媛では「海のフォアグラ」とも呼ばれる濃厚な肝を醤油に溶いて食べるのが通!!
マナガツオはまさに瀬戸内海の夏の風物詩!
鮮度が落ちるのが早いため刺身でいただくのは産地ならではの特権!!
もっちりとしてクセがなく、脂の甘みがたまらない!!止まらない!!
タコも初夏から7月頃にかけては、栄養を蓄えて美味しくなる時期ですよ!奥さん!!
新鮮な生タコのお刺身は、吸盤のコリコリ感と身の甘みがたまりません!!」
「食いもんに関してのあんたの知識と語彙力は素晴らしいこと……
あと、全部食うな!!私の分は!?」
「大丈夫!まだまだあるよ!!
どうせみんな呑む方に夢中だから遠慮はいらないよ!」
わたしが食べている間に中村のおばちゃんがもう一皿持ってきて、わたしからガードするように美和に手渡した。
「信用ないなぁ……」
「大丈夫!信じてるわよ!!
咲良ちゃんの食欲は見境なく無限だって!」
いつの間にか、中村のおばちゃんの信用を勝ち取っていたようだ。
「大皿一皿なんて食べきれないから、半分あげるわよ」
と、女神美和、略してメガミワさまからの天の恵みが……
「さすが美和!!愛してる!!!」
「はいはい、私もアイシテルアイシテル」
「美和はツンデレなんだからぁ〜そんなところも好き!!」
「まったく!調子がいいんだから……
大皿のこっからここまでアンタのエリアで、こっちは私だからね!」
ひょいひょいとお刺身を振り分けながら、エリア分けを行う美和。
ちなみに今回の大皿にはお刺身だけではなくお寿司なんかも乗っているが、私のエリアはお刺身オンリーである。
「ちょっと美和!細かくない!?
もっと大らかに生きようよ!
それにお寿司もプリーズ!!」
「やかましい!フリーにしたらまたあんた見境なく食うでしょ!!四次元胃袋の青だぬきなんだから!
あと、今日は炭水化物多めだったからお寿司はダメ!こっから先はタンパク質のみ!!」
「美和っ!ひどっっ!!」
「食物繊維も必要だから刺身のツマなら食べていいわよ?」
わたしの健康を気遣ってくれる、とっても優しい女神美和、略してメガミワさまなのでした……
「いただきます……」
その日の宴会は遅くまで続いたようだが、わたし達含む子供たちと、その保護者たちは早めにお開きとなった。
「アンタ達一緒にお風呂入っといで!」
中村のおばちゃんに言われて、
「……」
無言で見つめ合う美和とわたし……
いっとく?
「こっちをじろじろ見ないこと!
許可なく私の身体に触れないこと!!」
「美和隊長!許可を求めます!!」
「却下します!」
二人で並んで湯船につかっても全然狭くない。
銭湯ほどではないけど、5、6人は入れる広さの浴槽だ。二人して並んで肩まで浸かってる。
それにすごくいい匂い!入浴剤なんかいらないくらいに素敵な香りが充満していた。
「それにしても、おっきな木のお風呂だね。初めてだよ〜」
「檜風呂ってやつね、私も初めてよ」
「全裸の美和の初めてをいただきました〜」
「こっち見んな!セクハラ咲良!!」
「大丈夫だよ〜全裸は逆にエロくないから!」
「逆にえろくないっ!?」
「隠されてこそのエロだよ〜」
「服着る時絶対こっち見ないでよ?
あんたのエロ境界線、未知数すぎるから!!」
「大丈夫!脱ぐ時にしっかり見てますから〜」
「手遅れだった!!」
「バスタオルで隠しながら服を脱ぐ美和は、エロくて最高でしたよ〜」
「感想なんぞ言わんでいい!!
忘れなさい!!
得意の忘却術で!!!」
「そんな特技ないし!それに美和との思い出は出会った日から全部覚えてるよ!
わたしの記憶の一番大事な思い出フォルダに永久保存してますとも!!」
と、言いながらわたしは美和に抱きついた。
そこには、セクシー系悪の女幹部のコスプレ美和もいることは絶対に秘密だ!
「まったく!変な記憶力ばっかりいいんだから……」
照れながら美和はわたしに抱きつかれながらぶくぶくと沈んでいった。
さっきまで触るなっていってたのに。美和はチョロくてかわいいなぁ〜
「うーん、でもやっぱ小学校の頃に比べたら美和は成長してるなぁ……」
「どこを触りながら、どこの話をいってんのよ!」
美和はわたしの手と身体を引っ剥がしつつ……
「あんたはまっすぐで絵に描きやすくて良いわね。
今度美術の時間にあんたの身体、定規を使って直線のみで描いたげる」
ふふん!とマウントをとりにくる親友。
「これからよ!これから!!
北のさくらは遅咲きなのよ!!!」
ざばぁ!!
決意を胸に、肩まで浸かった浴槽から、すっくと立ち上がるが、水滴が曲線を描かずに、真っ直ぐ落ちていくのを見て、なんとも言えない気持ちになる。
隣の美和が、これ見よがしに立ち上がると、身体のラインに沿って曲線的に水滴が流れていく。
「悔しい……けど見ちゃう!!
ビクンビクン!」
「ビクンビクンすな!!
さっさと体洗って上がるわよ!」
「分かった!美和、私が身体洗ったげる!」
「まて!咲良は湯船に浸かってて!!」
「なぜ?、どうして……?」
「理由なら自分の胸に聞いてみなさい!?
……ってごめん!無かったか!!」
「わっはっはっ!
こりゃー一本取られたなぁ!!
……って美和ぁ~!!」
その後は、全力のお湯のぶっかけ合いになって、
中村のおばちゃんに怒られてしまいました。




