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【26話】ただいま!

「ただいま!兄さん!!」

 中村のおばちゃんは玄関ででっかい声で挨拶した。


 すごくデカくて立派な玄関です。


 お金持ちの家によくある、海辺に漂着した、わたしよりでっかい木の根っこを、ニスでテカテカにしたようなやつが飾ってありました。


 何もかもデカ過ぎました。

 わたしのような庶民には意味がわかりません。


 このでっかい根っこ、我が家においたら確実にじゃまですが、この家のでっかい玄関なら素敵なオブジェに早変わりです。


「迫力あるよね……」


 いつもならズケズケ言う親友も、迫力に気押されて控えめです。

 確かに迫力はあるよね。

 それがこのデカ玄関の目的なのかな?

 お客さんへの、うちはスケールでっかい家だよアピール。


「おかえり!さくら!!

 お嬢様方もようこそ!!」


 中村のおばちゃんのお兄さん?はすでに玄関に待ち構えていて、これまた元気に返事をした。


 ……って、おかえりさくら?


「えっ!?わたし!」

 衝撃!!実はわたしはこの家の子だった!?


「多分だけど、中村のおばちゃんも、

 さくらって名前なんじゃない?」


「御名答、さすがは名探偵!

 今日は全問正解!百点満点ね!!


 咲良ちゃんが生まれた時にゆいちゃんが私の名前を使わせて欲しいっていってきたのよ!

 だから私もさくら。

 平仮名だけどね」


「ちっこい方の咲良のお嬢さんの話も聞いておるよ!さぁさぁあがりんさい!」


 なるほど、そうか、ああ、びっくりした……

 あと、でっかい家のお嬢様になり損ねたわ。


 ギシギシと割と大きめの音がなる長い廊下を、案内していただく。


 足音を消す歩き方には結構自信があるんだけど、完全には消せない。


「ふる……歴史があるからかな?」


「音が鳴るのも、長い廊下も防犯対策だと思う

 逃げるにしても、迎え討つにしても、早く気づくほど、準備の時間も長いほどいいから

 確か鶯張り(うぐいすばり)って名前のはず

 まぁ、これは諸説あるみたいだけどね」


「なるほど……

 音のなる廊下で侵入者に早く気がついて

 長い廊下で時間をかせぐってわけね

 ここに入るドロボーさんは大変だ」


「なんであんたはドロボー目線なのよ!」


 通されたのはすっごく広い和室……


 教室の倍ぐらいの広さの宴会場のような和室に座布団と背の低い机が並んでいて、その上には豪華な料理。

 大体30人ぐらいの人がすでにワイワイと飲んだり食べたりしていた。


 おじいちゃん、おばあちゃん、と呼ばれるくらいのご高齢の方から、わたし達よりちっちゃい子供達まで、年齢性別見た目バラバラのみなさま。


 中村のおばちゃんが入ってくると、

「おお〜!」と歓声が上がり、


「おかえりさくらちゃん」

「いつ帰ってきたん?

 いつまでおられるん?」


「可愛らしいお客さん達もようこそ〜!」


 次々と話しかけられて超人気者だ。


「なんで帰ってくるたびに親戚みんな集まってこんな豪華な大騒ぎを……」

 笑顔で応えつつ、お兄さんに話す中村のおばちゃん。


「何いってんだ!これでも足らないぐらいだ!

 お前が一番大変な時に何もできなかったんだからな!!


 そして、俺たちのためにしてくれた事も……


 いつでも帰ってこい!

 部屋ならいくらでもあるぞ!!」


「ま、離婚したら考えるわ」


「おう!楽しみにしとるぞ!明日か?」


「んなわけあるかい!!」


「あっはっはっ!!」


 と、中村のおばちゃんと、お兄さんとの漫才のような掛け合いを眺めつつ、勘当されたっていうさっきまでの話とずいぶん違うなぁと思ってると……

 上座に座る、この広間でいちばんご高齢のおばあちゃんに手招きされた。


 招き猫みたいな、かわいいおばあちゃんだ。


 お兄さんと漫才を続ける中村のおばちゃんから離れて、わたしと美和が、おばあちゃんのそばに行くと、いろいろと教えてくれた。


 中村のおばちゃんのこと。


 その昔、中村のおばちゃんが勘当された時、親族の中でも意見が割れたらしい。勘当は厳しすぎるのではないか?…… と、


 中村のおばちゃんは、親族の中でも可愛がられていて、人気があったから、特に。


 親族間の諍いが拗れて対立が深まって、親族間の絆がバラバラになった時に、中村のおばちゃんが今の旦那さんを連れて、再婚の報告に帰ってきたんだそうだ。


 勘当した娘とその旦那さんは、親族の家によっては歓迎されたり、門前払いされたりしたらしいんだけど。

 毎年、丁寧に、暖かく迎えてくれる親族にも、冷たくしてくる親族にも、挨拶を欠かさなかったらしい。

 年に一回の、帰郷と挨拶を何十年も繰り返して。


 そして今がある。


 今でも絶縁状態の親族もいるけど、ほとんどの親族との交流が再開して、またみんなで集まれるようになった。

 さくらちゃんはえらい子なんだって、何度も何度も繰り返した。

 中村のおばちゃんが褒められて、なんだかわたしまで嬉しくなってしまった。


「名前も一緒だしね!」

 心を見透かしたように話しかけてくる親友。


「顔に出てた?」

「ううん、私も同じ気持ちだったから……」


 素敵な返事をいただきました。

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