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【23話】美和の推理ショーと、あつあつおでん

 綺麗に晴れた三津浜商店街を、三人で歩いている。

 夏休みの観光地とはいえ平日なので、程々の人混みの中を、三人で散歩のようなペースで歩く。


 こういう時、いつも思うのだが、これってどこに向かってるの?


 たまに誰も目的地を考えてなくて、全員が他の誰かが考えてるんだろうと思って歩き続けた結果、とんでもない所まで歩いて行ったことがあるんだよね……


 わたしは、お昼にそばやうどんの入ったお好み焼き、三津浜のソウルフード、三津浜焼きが食べたいのだが……


 はたして、我々はそこに向かってるのか……?


 いや、二人が真面目な雰囲気なので、空気読むけどさ〜


「私達の計画、お見通しだったんですね」

 美和が、白いワンピースの女の人、中村のおばちゃんに話しかける。


「うんそう、そして私を見て驚かないところを見ると、謎は全て解けたのかしら?」

 中村のおばちゃんが、美和の問いかけに応えた。


「わたしの方はさっぱりでした。」

 しばしの間、三津浜焼きは諦めて

 わたしはあっさり白旗を上げる。


 そして、わたしは船酔いから持ち直しつつある親友に目を向けた。


 美和は言った。


「あの写真に写ってるのは、中村のおばちゃんと、咲良のお母さんですね?」


「え?うちのお母さん!?」


「御名答」


「ええっ!!?」


 二人の間でキョドってるわたしを無視して、二人で話が進む。


「何で分かったのかしら?」


「決定的なのが、写真に写ってたオレンジの浮き輪の文字ですね。

 漢字四文字なので、『防予汽船ぼうよきせん』って書いてあるんだと思いました」


「防予汽船ってなに!?」

 思わず訊くわたし。


「防予汽船は昔のフェリーの運行会社の名前よ。


 2010年に防予汽船が倒産して、それまで防予汽船が使っていた、設備や航路の跡を継いだのが防予フェリー。私たちが生まれる前の話なの。


 いくら設備を引き継いだといっても、救命用の浮き輪を10年近く使い続けるのはありえない。

 咲良が5歳の時の写真と仮定したら、2019年の写真のハズですから……


 だから『防予汽船』って書いてある浮き輪が写っている、あの写真の中の小さな女の子は、咲良じゃないのかも?って思ったんです。

 そう考えたら、咲良にそっくりな2010年以前の人だと考えて、答えに辿り着きました」


「私にたどり着いたのは勘かしら?」


「ほぼ勘ですが、いくつか根拠があります。

 咲良も気づいてましたけど、そもそも写真の女の人は中村のおばちゃんに似てましたし、

 一緒に写ってた女の子が咲良のお母さんなら、年齢的にも中村のおばちゃんが最適です。

 何より、おばちゃん自身が松山が実家だと言ってましたので、防予フェリーに縁がありますから!」


「なるほど!さすが、学年トップの頭脳の持ち主ね!」


 美和はちょっとだけ苦い顔をした、イジメの原因の一つだからだ。


「理不尽はいつの世もあるわ、姿勢を正しなさい!胸を張りなさい!!

 いじけてしまったら世の中の理不尽の思う壺よ!!」


 中村のおばちゃんは凛とした声で励ました。


 親友はハッとして、中村のおばちゃんを見た。


「知ってるわよ、何年もあんた達の買い食いを見て来たんだから!

 美和ちゃんは何も悪くない、わたしが知ってる、咲良ちゃんも知ってるわ。

 だから姿勢正しく胸を張りなさい。

 それだけでいいのよ。無理に戦う必要もない。」


 最後の言葉は、わたしにも刺さった。


「それに、まじめに頑張っているだけで、他の誰かの人生では悪者になっているものよ?」

 中村のおばちゃんは変なことを言った。

 まじめにがんばるのが悪いことなの?


「それってどういう意味ですか?」

 真剣な面持ちで問う美和。


「頑張って1位を取り続けるってことは。他の誰かを延々と2位にしてしまうってこと

 ずっと2位が悔しいなら、もっと頑張れって言うのは正しいし簡単だけど、

 正しいからこそ、残酷でもあるわ。


 どんなに頑張っても敵わずに、妬んだりひがんだり、嫉妬にかられる人もいるでしょうね。


 そうなっちゃたら、美和ちゃんがなんとなく言った一言も、相手には嫌味に聞こえたり、ひどく傷つく人がいるかもしれない」


「私は特に、ズケズケ思ったこと言っちゃうしなぁ……」

 美和はちょっと思い当たる節がありそうだ。


「美和ちゃんはそのままでいいの!ちょっと考え方を変えるだけでいいのよ」


「もっと、相手を思いやりなさい……とか?」


「うんにゃ、悪役を楽しみなさい!……よ!」


「悪役を楽しむんですか!?」


「相手に思いやりの言葉をかけても、勝者の余裕からくる上から目線の言葉に取られちゃうからね。


 どう頑張っても悪役からは逃げられないのよ!

 だから、悪役になっちうの!心の中でだけね!!


 嫌な人間になれってことじゃないのよ!

 気高く誇りを持った

 卑怯な手なんかは使わない!

 かっこいい悪役になっちゃいなさい!!


 ぐちぐち言うだけの、クソダサい正義の味方より、ずっと素敵よ!!」


 それを聞いてわたしは、特撮物でよくある、セクシー系悪の女幹部姿の美和を思い浮かべて……


「ふははははっっ!!

 よく来たな万年2位ども!


 自分の努力不足を棚に上げて

 影に隠れて罵詈雑言とは片腹痛い!!


 貴様らのような卑怯者には

 真夏に熱々おでんを食らわせてやるわ!!」


「や……やめろーやめてくれーー!!」


「くっくっくっ……まずは、

 やはり、定番のたまごかな?

 それとも、灼熱のツユをふんだんに吸い込んだ、

 がんもどきかな?」


「やめろー!!いきなりがんもどきはジュネーヴ条約(捕虜の待遇に関する条約)違反だろう!!!」


理解わかってるわよ?やめろ、やめろは、やってヨシ!!の合図だと!!」


「マジヤメロー!!!(涙)」


「はい、アーン……」


 まで、思い浮かべて。


「ふふ……」

 つい吹き出してしまった。


「咲良、アンタ今何考えてた!?」


「咲良ちゃんだって他人事じゃないよ?

 アンタにだって誰にも負けない特技、あるんじゃない?

 それを引っ込めちゃうのは、もったいないよ!


 自分の強みを活かして、世の中に貢献できること考えてみて?

 自分が死んだ後、何をもって覚えてもらいたいかって考えてみてもいいわ。


 優しいと弱いは違うよ?

 だから、アンタは優しいままで、強くなりなさいな!」


「……はい!」


 これから進路を決めなければならない、今だからこその、

 わたし達二人へのアドバイスなんだなって、そう思った。


 そして、いつか美和にセクシー系悪の女幹部のコスプレしてもらおうと固く誓った。

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