【21話】究極のメニュー
わたし達の乗ったフェリー、おれんじぐれいす は無事に出港。
走り出してから揺れは少し収まったように感じます。
美和の船酔い騒動も、出航してから回復したので、
わたし達は、フェリーの中を探検がてら写真の場所を探すことにしました。
「せっかくの初フェリーなんだから、中の様子をしっかり見て回りたい!!」
「結果、時間が足らなくなるのが一番怖いから、
最初に一番可能性の高い3階の外部デッキから行くよ!」
勉強大好き美和先生は、当然お船の構造の予習もバッチリです。
「ええ〜!とっておきは、最後まで取っておくものだよ〜!いちごショートのいちごのように!」
「後から回っても一緒でしょうに!
とっておきを食べる前にお腹いっぱいになるより
お腹空いてるうちに、さっさと食べたほうが美味しいでしょ!」
「大丈夫! わたしの胃袋は四次元ポケットなんだよ!」
「つべこべ言わずに行くわよ!青だぬき!!」
「美和!ひどっ!!」
そんな訳で、いの一番に、あの写真の撮られた場所、最有力候補の3階外部デッキに来てみたのだが……
「青く晴れた空に白い雲、青い瀬戸内海に白の航跡波がとても綺麗だよね〜♪
おまけに写真では感じられなかった風が気持ちいい!!」
両手を広げてタイタニックのポーズをするわたしをスルーして。
「背景の景色を考えるとやっぱりこの辺のはずなんだけど、微妙に合致しないのよね……
時間もあるし結論出す前に、まずは一回りしてみましょうか?」
名探偵、美和は冷静に調査を進めます。
「だから最初に行ったのに〜!」
「結果は一緒でも、順番は大切よ!」
一度1階まで降りてから、順に調査をすることとした。
「……と思ったけど、1階は全フロア駐車場なので、航行中は1階へは入れませんでした!」
「残念、探検したかった~……」
「安全上のルールらしいから、昔から入れなかったハズ
操作の範囲が縮まったと思えばむしろラッキーね!」
「さすが!良かった探しの美和先生!!」
「アホなこと言ってないでさっさと2階へ行くわよ!」
「へ~い!」
「2階はお客さんがくつろぐスペースがメインね。
テレビ付きのお座敷席に、靴を脱いでゴロゴロできる広いカーペットスペース。
ゆったりとしたソファー・窓側に並んだシートやソファー席もあって、
瀬戸内の海をゆきかう船や景色を眺めて過ごすのにぴったりね!」
「美和は防予フェリーの回し者なのかな?」
学校は夏休みだが、社会的には平日だったので、お客さんの込み具合は、それほどでもない感じだった。
「咲良!ちょっとあっち見てみ!」
美和がわたしを呼んで指をさした。
わたしがその指先の方を見ると……
「あっちって……
おおっ!!カップラーメンの自販機じゃん!!
売店のない おれんじぐれいす だけれども、
どこでも手に入る日清のカップラーメンだけれども!
価格はちょいとお高めだけれども!!!」
わたしは間をためる……
心の叫びのためにっっ!!
「海のど真ん中で潮風を浴びながら食べるカップラーメンは至高の贅沢!
このシュチュエーションこそが究極のメニュー!!
これに比べたら山岡はんの鮎はカスや!!!
それが数百円で楽しめるのであれば買わない手はない!
いや!買うしかない!!
シーフードヌードルをいただこう!!」
ガコン!
叫びながらすでに購入していた。
叫んだので結構注目を浴びていた。
…………
美和は遠くで他人のふりをしていた。
「美和はひどいなぁ……」
自販機の給湯機能を使いつつ、グチるわたしなのでした。
「むいわふぁふぃどうわ」(美和はひどいなぁ)
シーフードヌードルを食べながら抗議を続けるわたしに。
「黙ってハヨくえ!」
美和先生は素敵なお言葉をかけてくださいました。
「ふぇ~い」
2階の窓際の席に座って外の景色と美和の横顔を眺めながらシーフードヌードルをすするわたし。
ずるずる。
2階の窓際の席に座って外の景色と美和の横顔を眺めながらシーフードヌードルを咀嚼するわたし。
もぐもぐ。
2階の窓際の席に座って外の景色と美和の横顔を眺めながらシーフードヌードルのスープを飲むわたし。
ごくごく。
2階の窓際の席に……
「ワンアクションごとに、いちいちこっちジロジロ見んな!ハヨくえ!!」
「美味しかったです!ごちそうさまでした!!
やっぱ、海と山と呪われた美和姫を眺めながら食べるシーフードヌードルは最高だなぁ!!」
「うろ覚えが過ぎる!それを言うなら『空と海と大地と呪われし姫君』でしょ!
あと、勝手に呪わすな!わたしゃ馬姫か!!
でも確かに海だけじゃなくて、結構島とか山も見えるわよねこのフェリーの航路」
さすが瀬戸内海は八百八島の海と島のワンダーランドだ。
湖のような静かな海に、大小さまざまな島々の浮かぶ景色は、とても素敵で美しかった。
「食べ終わったんなら、最後にもう一度3階の外部デッキに行きましょう!」
二人そろって階段を上がって3階の外部デッキについたとき
突然の強い風が吹いた。
「あっ!!」
美和の麦わら帽子が、風に煽られて飛んでしまった。
「待って!」
慌てて手を伸ばす美和だが、わずかに届かず。
その瞬間の美和の横顔が……
それを見た瞬間に、わたしはとっさに飛び出していた。




