【02話】瀬戸の花嫁連続誘拐事件!~完?~
「まぁ、実は血のつながった本当のお母さんは……みたいな、深刻な展開は無さそうなんで、気楽に相談できてるんだけどね〜」
……と、言いつつもわたしは正直、ちょっとがっかりしていた。
この写真を見た瞬間に、みにくいアヒルの子ではないが、将来はスラっとした、お嬢様系美人になれる可能性も、チラッと考えたからだ。
わたしは、目の前の美和がうらやましい。
親友の美和は、スラっとした高身長で、肩に余裕で掛かるぐらいの黒髪を、ポニーテールでまとめている。とても美人で、かつ可愛い。
ほんのすこしだけ、性格きつめな感じのする顔立ちだが、話してみると結構面白い。
見た目とのギャップのあるキャラだ。
まぁ、確かにズケズケと言う性格ではあるので、見た目と相まって、第一印象で誤解されやすい。
対してわたしは、低身長ふっくら派で、肩にギリかかるくらいの長さの髪を両脇に垂らす感じで束ねている。
見た目も性格も、全く正反対の凸凹コンビなのだ。
「親戚のおばさんとか?」
「分かんない……、心当たりはない……
謎なのよね、この白いワンピースの人、うっすらと記憶にはあるんだけど……」
お母さんのタンスの奥から偶然見つけた、不思議なシチュエーションの写真。
話のタネになればとスマホで撮ったけど、いつ誰と撮った写真なのか謎だった。
だけど、微かに覚えている。白いワンピースの優しげな女の人と、船に乗ってどこかに行った記憶。楽しかったと思う。
でも、それがいつで誰となのかが、すっぽり抜け落ちている。
この写真を見つけるまで、わたし自身も忘れていた記憶だった。
「解決方法簡単じゃん!この写真あんたのお母さんが持ってたんでしょ? あんたのお母さんに訊けば万事解決!!」
美和が最短かつ完璧な解決策を提示した。
こうして、謎の写真の秘密は、華麗かつ見事に解き明かされたのだった!!
瀬戸の花嫁 連続誘拐事件!
〜完〜
じゃなくて!!
「確かにそうなんだけどさ〜
なんかこう……、答えが出てきそうで出てこないのがもどかしくて……
自力で解き明かしたい!」
美和は、頭の回転が速く、目の付け所が鋭い。
最短距離で解決策を割り出し、無遠慮に提示してしまう。
寄り添えない彼氏。みたいな性格のお人なのだ。
何かを期待する目で、親友を見つめる。
伝われ!この想い!!
じっと見つめていると、美和は口元をへの字に曲げて、やれやれ、しょうがないなぁ、という勿体つけた風情で……
「……んじゃ、もうすぐ夏休みだから、その写真の謎解きに挑戦してみる?
あんたのお母さんに訊くのはその後で、答え合わせって事で!」
「うん!美和ならそう言ってくれると思ったよ!!」
中3の夏休みは、高校受験で楽しめないらしいので、今年の中2の夏休みには、親友と何かイベントがしたかったのだ。
自分が言うより先に、美和が言ってくれたのは、純粋に嬉しかった。同じ気持ちでいてくれた事に安心した。
そして続けて美和は言った。
「じゃあお小遣い、貯めとかないとね!」
「へっ!?」
「へっ!? ……、じゃないよ!
行くに決まってるでしょ!
その写真のフェリーに乗って、咲良の記憶を辿る旅に!!」
美和の目は本気だった。
わたしの大好きな、勝気な挑む目だ。
「……そこまで大事には、考えてなかった……」
わたしは、つい日和った事を言ってしまった。
「んもうっ!! 咲良は計画性なさすぎよ!
手分けして調べましょ、旅行の行程と、かかるお金!」
「泊まりはさすがに無理だから、日帰り行程で行こうね!」
あんまり大事にしたくない気持ちから、重ねてつい弱気な事を言ってしまった。
あと、宿泊費まで掛かるとなると、お金的にも大事だ。
「それは、謎解き旅行にかかる時間とお金次第ね。
ちゃんと計画して、調べてから、結論出しましょ!」
教室を出て、ソフトテニスの部活に二人で向かう。
部活はあまり楽しくはないが、運動系の部活に入るのは、田舎の中学ではほぼ義務だ、体育の先生に目をつけられてしまう。
中学に入学したての頃、部活を決めかねていると、体育の授業で、部活を決めていない生徒と、文化部選択の生徒達が、みんなの前に立たされて、一緒くたにつるし上げられた。
学校の先生が、率先して『こいつらを笑いものにしましょう』なんて、やるとは思ってなかったので、つい最近まで小学生だった当時のわたしは、かなりショックだった。
その日以来、学校の先生とは言わずに、教師と心の中で呼んでいる。
わたしが知っている『先生』たちと一緒にはしたくなかった。
でも、あくまで心の中でだけ、目立って反抗はしない。
あまり目立たずに、平々凡々に生きるのが一番楽だ。
世の中には理不尽や、嫌なこともあるけど、なるべくスルーして、穏便に過ごしたい。
怒ってしまい、我を忘れてしまうと、ろくな結果にならないと身に染みている。
だけど、穏便過ぎて退屈もつまらない。
だから、この写真の謎解きも大事にはせずに、夏休みのちょっとした刺激。
日々のスパイスになれば、という程度に思っていた。
この時は……




