【01話】お母さんのタンスから出てきた「謎の写真」
「柳井港からフェリーに乗ったと思うんだよね。
これたぶん『防予フェリー』だよ!」
わたし、北野咲良は教室で、親友の川岡美和に、スマホの中の写真を見せた。
夏休みも目前に迫ったころ、中学2年生の教室の雰囲気にも慣れてきた、明るい日のさす気持ちよく晴れた放課後の教室に二人きり。
わたしは自分の席にふつうに座ってて、美和は前の座席に後ろ向きで、馬にまたがるように大股開きで座り、椅子の背もたれに肘を置いて、ほおづえをついて顔をこちらに向けている。
はしたない上に、お行儀が悪い。
またがるときなど、スカートの中が丸見えだった。
ハーパン履いてるから問題ない。と、美和は言うけど目のやり場に困るから……
……っていうか、ほかの誰にも見せたくないから、そのガサツさはちょっとなおして欲しい。
「防予フェリー?」
美和は知らないみたいだ。
物知りの美和が知らない事は珍しい。
なのでわたしは、これはチャンスとばかりに、鼻高々に得意満面で説明しだした。
「柳井港から松山まで行くフェリーだよ!
白いお船に赤とオレンジのラインが、かわいいの!!」
「それは知ってる。
山口県柳井市の『柳井港』と愛媛県松山市の『三津浜港』を2時間半で結ぶ、瀬戸内海の海運会社でしょ。
2010年設立、瀬戸内海汽船の子会社で、山口と四国を最短で結ぶ重要な交通手段、あと松山直行便以外にも周防大島経由の航路もあるわよ」
もうご存知でしたか……
て言うか、わたしより詳しいじゃん!!
得意満面で語った手前、ちょい恥ずい……
わたしが黙っちゃうと、
「私が意外だったのは、アンタ松山に縁がなさそうな顔してるのに、防予フェリーなんて単語が出てきたってトコ!」
美和が、助け舟を出すように、話を繋げてくれた。
『フェリーだけに、助け舟ってね♪』
と、言いかけたけど、やめておいた。
盛大にスベるところだった……
われながら好判断!セーフ!!
……あと、松山に縁がなさそうな顔ってナンダ?
ケンカうってんのか?
……と、いぶかしげな顔をしたわたしに、美和は言った。
「フェリーだけに、助け舟ってね♡」
「お前が自分で言うんかい!!」
ジト目で美和にツッコミつつ、親友と考えがシンクロしたことが、ちょっと嬉しかった。
帰宅部になれるほど、我が道を行かず。
真っ先に部室へ向かうほど、部活動に熱心ではない。
そんなわたし達だけが、この教室に残っていた。
ちなみにうちの学校は、部活動参加が強制なので、正確には帰宅部は存在しない。
ほぼ活動がない一部の文化部をそう呼んでいるのだ。
授業以外の活動を強制されるなんて、正直に言うと嫌だ。
だからと言って代わりに何がしたいって訳でも無いんだけどね。
美和に見せたスマホの画面には、プリントされた写真をスマホで撮った
「写真in写真」画像は粗い。
昨日、お母さんのタンスの引き出しの奥から見つけた写真を、スマホで撮影したものだ。
そこには、小学校に上がる前ぐらいの頃のわたしと、20代ぐらいに見える白のワンピースを着た上品な若い女の人が写っている。
白いワンピースの女の人は、片手で白い帽子を風で飛ばされないように抑えて、もう片手でわたしと手を繋いでいた。
わたしの方は能天気な感じの笑顔で、両手バンザイしていた。
片手は白いワンピースの女の人と繋がっていたが、身長差があるので、両手バンザイの邪魔にはなっていない。
大きなお船に乗ってるっぽい。背景に移ったオレンジの浮き輪に漢字4文字で何か書いてあるが、画質の関係で読めない。
「場所は船の上で間違いないわね、フェリーの外部デッキで、写真の中の季節は、青空と雲の感じと二人の服装から、おそらく夏頃……」
と、さっそく推理をしだす美和。
「青く晴れた空に白い雲、青い瀬戸内海に白の航跡波がとても綺麗だよね〜♪
オレンジの浮き輪の差し色がワンポイントでかわいい♪」
白いワンピースの女の人も、わたしもカメラ目線で笑顔で写っている。本当に楽しそうで親子のようだ。
「ところで、あんた、航跡波なんて難しい言葉、よく知ってるわね?」
言いつつ美和は私のスマホを操作して、美和自身のスマホに画像を転送させた。
「失礼な!こちとら3歳から海育ちなんです〜!!」
美和には全幅の信頼を置いているので、勝手に操作したことに文句は言わずに、わたしは文句を言った。
「んでも、この白ワンピの女の人、あんたのお母さんじゃないわよね?
あんたのお母さんって、あんたそっくりで、こんなお上品な感じじゃないし」
「わたしはおろか、お母さんにまで、失礼な!!」
わたしはスマホをしまいながら親友をにらみつける。
そして肯定する。
「まぁ、そうなんだけど……」
わたしもお母さんも、どちらかというと低身長ふっくら派だ、動物で例えるなら、たぬき。
母娘でそっくりとよく言われる。
それに比べて、写真の中の白ワンピースの女の人は、ほっそりした体型で、いかにもお嬢様って雰囲気。
うちの家系の系統と、あまりにも違いすぎて、親戚ですら無さそうだ。
いったい誰なんだろう……
どちらかと言うと、美和の方が似ている気がするんだけど……
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第6話まで一気に投稿。
次の更新(第7話〜第10話)は、本日【18:05頃】を予定しています。
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