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【13話】白馬の王子様と白百合の騎士たち

 校長から、あのスマホの動画を、北野さんと松井に私の解説付きで見せろと言われてしまった。

 あの子に変に思われるのやだし、恥ずかしいからヤなんだけど……


 校長は真面目な態度に切り替えて、改めてお願いをしてきた。


「必ず北野君のためになることだと思うから!」


「分かりました……」


 北野さんのためと言われたら仕方がない。

 私はスッとスマホを出すと。

 動画を再生しつつ……

 私は熱弁した!!


 あの子の、諦めない心を!

 あの子の、積み重ねた修練の結晶たる、美しく伸びやかな突きを!!

 あの子の、倍の背丈のある大人の男の人にも、挑みかかる勇気を!!!


 スマホの中の動画を観せて、コマ送りで解説した!

 ご本人の目の前で!!


 校長と松井は、揃って尊いモノを見るような目で、コッチを見ている。めっさキモい。


 おそるおそる、北野さんの方を見てみると……


 耳を真っ赤にして、顔を両掌で抑えて、プルプルと、真冬のチワワのように震えつつ、言った。

「ヤメテ…… ハズカシイ……」


 ナニコノかわいい生き物……っ!!!

 連れて帰りたい!ずっと愛でたい!一生お世話したい!!


 北野さんは、顔を上げると、私の目を見ていった。


「それに……わたしはそんなに良い子じゃないよ……?

 あの時、松井さんと打ち合って、勝てない相手と分かってたのに、あたまに血が昇って、全力で勝ちに行ってた。

 松井さんは何も悪くないのに、私は怒った時のような気持ちになって、怒ったような気持ちのまま打ち込んでた。

 そして、勝てると思った瞬間に、身体が勝手に動いてた。


 突いあとのことなんて、何も考えずに……

 松井さんが怪我しちゃうかも?とか、痛い思いをさせちゃうかも?とか、小学生に負けて恥ずかしい思いをさせちゃうかも?とか、なにも考えてなかった。


 それが一番怖い

 また、誰かを同じ目に合わせちゃうかも……」


 北野さんの心の内、奥底にあったもに、直接触れたような気がした。

 だから私は、全肯定しようって思った!


「でも、それが勝負じゃん!つい身体が勝手に動いたのだって、動きが体に染み込むまで、それだけ真剣に練習に取り組んだ結果じゃん!

 良いことだよ?突きだって大人の試合では普通にある技なんだから!

 北野さんが気に病むことではないよ!!」


 私はしっかりと北野さんの目を見て言った。

 思い起こせば、これが彼女との最初の会話だった.


 少し間をおいて、


「僕も概ね川岡さんの意見に賛成だな」

 松井が北野さんに話しかける。


「北野さんの言う 怒ったような気持ち は、僕が闘争心と呼んでいるモノだと思う。

 格闘技に限らず、競い合う競技を行う人ならみんな持っている気持ちだ。

 何も悪いことじゃない。

 ただ、剣道みたいな格闘技は、闘争心だけで戦ってしまうと、遺恨が…… ああ、つまり試合が終わった後もネガティブな感情が残ってしまう事があるんだ。


 だから剣道では『それ』を防ぐために、礼を大事にする。


 だから、剣道は礼に始まり、礼に終わるんだ」

 


「うむ、そう言えば、あの日の試合の終わりの礼がまだじゃったな!

 川岡君とワシが立会人になり、

 今日ここで、お互いの健闘を讃え、礼を交わしてあの日の試合を終いとしたい!

 どうかな?ご両人」


「はい、依存ありません」

 松井がまず応え、

「はい!」

 北野さんも同意した。


 全員が立ち上がり。


「では、お互いの健闘を讃え、礼!!」


「ありがとうございました」


 二人はお互いに深々と礼をすると。

 笑顔で握手をした。


 そして北野さんは私の方に向き直ると。

 全力で頭を下げた!!


「ごめん!許して欲しい!!

 わたしが意固地になってた!!


 あだ名の件も、今回の件も!


 川岡さんみたいに、心配してくれる人がいるのに、わたしのことなのに、わたし以上に頑張ってくれてる人がいるのに、ずっと塞ぎ込んで、自分のことしか考えてなかった!


 ホントにありがとう!

 んで、わたしの友達になってくれる?

 わたし!川岡さんと友達になりたいんだ!!」


 後から、咲良に聞いた話なんだけど、この時私は、さっきの咲良みたいに、両手で口元を押さえてプルプルしつつ、耳が真っ赤になっていたらしい。

 なぜか校長と松井も同じ状態だったらしい……キモッ!!


 かくして、私たちは親友になり、

 あの二人はなぜか「白百合しらゆり騎士ないと」と名乗る変態になった……


 私は余計なことはズケズケと言ってしまうが、本当に大事なことは勇気が無くて言えない。

 中学2年生になった今でも相変わらず私はダメな奴だ。


 咲良は逆で、優しいから穏やかな事しか口にしないが、本当に大事なことはいつだって咲良から口火を切るのだ。


 今度のことも、ホントは私から謝りたいのに。

 つい待ってしまう。咲良から話しかけてくれることを……


 まるで白馬の王子様を待つお姫様みたいだなって、自虐的に思った。


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