黒鷲の過去①
これは”暗殺者”こと、黒河 王羽の昔の物語。
王羽の生い立ちから最期までを画いた番外編の短編集(1)
俺様が初めて見た顔は親でも看護師でも無かった。
初めて見た顔は師匠の顔だった。
生まれは分からない。
師匠が言うには日本の大阪で拾ったらしい。
そう、俺様は捨て子だった。
何を思ったのか、師匠は俺様をアメリカに連れていき、俺を育てた。
師匠の名前はナサニエル・フィリップス。
アメリカのデッドバークスと言う世界一治安の悪い街の裏社会に仕える暗殺者だった。
そして、俺様はプロの暗殺教育を受けて育っていった。
俺様の天性の腕は凄かったらしく、齢10歳で3km先の的、約175個を全て真ん中に当てていたらしい。
初めての殺しは11の時。
あの日の事は鮮明に覚えている。
狙撃銃で対象の頭蓋を撃ち抜き、その帰りに屋台のアイスを買って食べながら帰ったものだ。
圧倒的命中率、圧倒的強さはずっと俺様の体で眠っていた。
呼び起こされたその王者は俺様の血肉となって、この黒河 王羽を作り出したのだ。
数々の仕事は俺様をさらに強くさせるのに役立った。
それと一緒に俺様の美名と恐怖は裏社会中に轟いた。
15で殺し屋として独立し、さらにその名を轟かせた。
そりゃ、そうだ。
狙った対象の全員の頭に風穴を開けさせたからな。
姿を見せず、狙った者の頭蓋に風穴を開ける悪魔として”漆黒の死神”と言われた。
報酬としてもらえる額はウン百万が普通になり、殺した対象は100から先は数えていない。
しかしこれが普通の街・デッドバークス。
人の血を呑み、血飛沫上げる死体を喰らう街。
それがデッドバークス。
俺様はその血塗られた深紅の街で黒く輝いた……。
「次の獲物は何だ。」
「今回は敵対する組織のボス、ミシェル・フラッシュの司書を狙え。」
「ハイハイ。で、どこにいる?」
「それはハン……のビ……」
音波が悪くなったか?
そう思って周りを見ると覆面をした三人組の男達が俺様に襲いかかってきた。
通信障害をさせたのか……
俺様は腰に着けていたホルスターから二挺拳銃を取りだし、瞬時に二人の心の臓を撃ち抜いた。
もう一人には両肩を撃ち抜き、少しの間だけ生かしておいた。
「なぜ、襲った?」
俺様は襟首を掴み、脅迫する。
多少の犯罪はこの街では捕まらない。
「ガッ、ミシェルに頼まれて……。」
「そうか、死ね。」
俺様は頭蓋に一発撃って、楽にしてあげた。
俺様の名前と顔は裏社会では通じてしまっている。
だから、暗殺者に狙われるのも日常茶飯事。
休日中にも、訓練中にも、読書している時にも、睡眠中にも、挙げ句の果てにはトイレ中にも狙われた。
まぁ、全部撃退したけど。
トイレ中は流石にめんどくさかった。
壁に穴は開くし、便器は綺麗に縦に割れたし。
あの時は悲惨だったな……。
「流石ですね、オーバ。」
「誰だ? そして俺様は王羽だ。」
そう思っていると、誰かに話しかけられた。
黒髪の高級羽織を着た男、日本人か。
「初めまして、私は阿墨と言う者だ。ファング・カルテットの組長だ。」
ファング・カルテット、表の顔は不動産や銀行などの金融機関を手掛ける組織。
しかし裏の顔は密売や抗争によって利益を得る、デッドバークスで一、二を争う巨大なマフィアだ。
そんな、エリートマフィアが何の用だ?
「王羽さん、私たちの専属警備員にならないかい? 報酬は3億を用意する。」
いつもの報酬の100倍ほどか……。
いいだろう、入るか。
「いいぞ、報酬はしっかり払って貰うからな。」
「わかっています。」
俺様は阿墨との契約を取った。
それが、俺様の運命を変える出来事である。
「あ、そうそう。仕事を終わらせてからな。」
一時間後、すぐに終わってファング・カルテットの専属警備員になった。




