新たな刺客
「朱鷺丸たちだけズルくない? ねぇ。」
「ごめんってば。」
二週間後、漸く茜は目を覚ました。
「ああ、めちゃ濃い味の物を食べたい……」
「まだ病み上がりだろ。」
「はぁ~あんぁ~。」
「変な溜め息を吐くな。」
茜はベッドの上で手を振り回すため、しょっちゅう頬に当たる。
「退院したら何か奢ってやる。旨いものでも、甘いものでも。」
「じゃあ、両方!」
「はいよ。」
すぐに機嫌を良くして、茜はニコニコし始めた。
扱いやすい……
「それよりも、だ。お前もヲルトガルフの刺客に襲われたんだろう。そいつの事を教えてくれ。」
「ああ、いいよ。代わりにそっちも襲われていたんだろう。そっちも教えてくれよ。」
「ああ、分かっている。」
俺は渚と闘った事、波動魔法の事などを全て洗いざらい話した。
「ほ~ん、つまり僕ほど運動は出来ないけど唯一の魔法が最強の成長途中の水色頭かぁ。」
「そうだピンク頭。」
「む……」
「次は茜だ。分かりやすく頼むぞ。」
「了解!」
茜は来栖 錬聖の事、凄い剣術使いと言う事、もしかしたら闘った時の傷の応急処置をされたかも、などを聞いた。
「闘ったときはヤバかったけど、最後は王羽とか忍みたいな感じだったかな?」
「ヲルトガルフの刺客は残り2人、しかも馬鹿強い。」
「うん、そうだよね。どうするぅ?」
「……戦うしかないだろうな。」
「む~。」
「今悩んでもどうしようも無い。茜は充分すぎるほど休んでいろ。」
「了解!」
茜は普通に元気だったな。
これで後二週間……
もう三日後でもいいんじゃないか?
廣丸は傷も安定し、静かに休んでいる。
あとは色々と退院準備と次に行く国でも探すとしよう。
「凛雪、ついでだから何か食べるとしよう。」
「分かりましたぞ、朱鷺丸殿。」
俺らはゆったりしながら宿に戻った。
ヲルトガルフの居城内……
「失敗したのですか? 剣聖殿。」
「ああ、失敗しちもうた……。って、前回と逆じゃないですか。」
「ちーす、シャボンお疲れ。」
「うん、疲れた。」
私とシャボンがヲルトガルフの居城に戻ってくると、王羽と忍が出迎えてきた。
「あんな大口叩いたのになぁ。」
「本当に破竹の勢いでした。」
「忍~、何かご飯くれない?」
「蝗モドキの佃煮でいいか?」
「それは嫌。」
そう四人で歩いていると、ある部屋に近づいた。
軽快な音楽が鳴り、空を切るような音がする。
「まじかいな、まだ練習しとるん!?」
「確か始めたのが朝だったよなー。」
この部屋はNo.2の部屋。
確か暗号名前は……
「”舞踊鬼神”…。本当にダンスすると満足するまで終わらないね。僕にはよく分からないけど……」
「No.1はどうしたんですか?」
「中庭で月光浴してますよ。」
「月光浴!?」
本当に刺客の上位はよく分からないな。
No.1変人(自称)、舞神No.2(自称)など。
なんでこんな人たちが呼ばれたんだろう……
「食事は何でもいいよな。」
「ああ。」
ヲルトガルフは俺たちを召喚したが、あとは別離棟の宮殿に放置したからな。
ここでの生活はだいたい自分達でやっている。
「あとはヲルトガルフに報告だが、どうせ聞かないだろうな。王羽たちと同じ様にな。」
「うん、僕もそう思う。」
前回も王羽たちが報告したが、「あっそ……ふ~ん。」だったからな。
でも報告しないと面倒だ。
「ふぅ~、おっ、剣聖とシャボンじゃないか。案外速かったんだな。」
「はい、負けたので……」
「強かったぞ。」
準備していると、舞踊鬼神がドアから顔を出してきた。
金髪の逆立てた髪と右目に一筋の傷、全身の鍛え上げられた筋肉が印象的だ。
「じゃあ、次は俺か。二人はさっさと報告しておけよ。」
「言われなくてもするつもりです。」
「はにゃ。」
舞踊鬼神は髪を逆立てた後、ニヤっと笑う。
「じゃあ、練習しておくぞ、俺は。天下の舞神はただ舞うのみ。」




