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【供養版】嘘告を仕掛けた奴らを助けようとする度に大炎上。彼女は曇るし、俺はどうすればいいんだ?  作者: 歩く魚


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7/8

7.行き場のない苛立ち

(……ムカつくぜ)

 

 円城の机で藤宮が飯を食っていること自体は良かった。

 付き合ってるように見せろと言ったのは俺たちの方だし、クラスの連中も、すっかり二人をそういう目で見るようになっている。


 問題はそこじゃない。円城から渡された紙袋を覗いた時の藤宮は、俺に告白の話を持ちかけられた時とは別人だった。

 

 何を話しているかまでは聞こえなかったが、笑っていた。

 周りに揶揄われても、前みたいに露骨に嫌がらなくなった。


(そこまでやれなんて言ってねぇ)


 五限が始まってからも藤宮の笑顔が頭に残っていたせいで、教師の話はほとんど耳に入らなかった。


 いや、元から聞く気なんて無かった。

 ロクに社会にも出てない大人の話を聞いたところで、俺の人生には何の影響もない。


 それよりも、俺には仲間がいる。

 机の下でスマホを点け、トーク画面から一つをタップする。


「藤宮、やりすぎじゃねぇか?」

『何が』


 すぐに返事が来た。


「毎日あいつと飯食ってんぞ」

「今日なんか菓子もらって喜んでた」


『いいじゃん』


 何がいいんだよ。


「俺たちが言ったのは、付き合ってるフリしろってことだよな?」


『だから順調じゃん』

『そうそう。円城だっけ? そいつが本気になってるなら』


「藤宮の方もだよ」


 画面を睨む。少し間が空いてから、短い文章が返ってくる。


『それならもっと使えるじゃ〜ん!』

「は?」


『学校だけでは弱いということか』

『そそ。休みに二人で出かけさせれば?』


 思わず前を向く。

 教師は黒板に何かを書いていて、こっちを見ていない。


「そこまでやる必要あんのか?」


『最後に全部嘘でしたってやるんだろ

 本気で付き合った方が面白いじゃん』


 こいつら、同じクラスなのは俺だけだからって、他人事だと思って好き勝手言いやがる。


 それでも、言っていることは分かる。

 

 円城は今でも十分その気になっているはずだが、学校で一緒にいるだけなら、完全に好きになるとは限らない。


 だが、休日まで使って遊びに行って、それで藤宮に振られたとなれば話は別だ。


「分かった」

『写真も一枚くらいあった方がいいかもね』


「注文多すぎるだろ」

『面白くするんでしょ?』


 返事をやめた。


 放課後になって、俺は教室を出た藤宮を追いかける。

 円城は今日は一緒に残らないらしく、姿は見当たらなかった。


「おい、藤宮」


 名前を呼ぶと、彼女は足を止める。

 振り返り、嫌そうな顔を隠そうともしない。


「……なに」

「ちょっと来い」


「ここじゃ駄目なの?」

「駄目だから呼んでんだよ」


 藤宮は何も言わずについてきた。

 人が通らないところまで移動し、彼女を見る。

 鞄を抱えたまま俺から距離を取って立っている。


「お前さ、最近ずいぶん楽しそうじゃねえか」


 藤宮の目つきが変わった。


「ちゃんと付き合ってるように見せろって言ったの、そっちでしょ」

「だからって、昼飯まで毎日一緒に食う必要あんのかよ。勉強も教えてるらしいし、今日は菓子までもらってたよな」


「見てたんだ」

「見えるんだよ。俺は後ろの席だからな」


 藤宮は鞄の持ち手を握ったまま、俺から目を逸らさない。


「だったら問題ないでしょ。クラスの子たちも疑ってないし、円城くんだって——」


 言葉が切れた。


「円城が何だよ」

「……別に」


「お前、あいつに情でも移ったのか?」


 返事がなかった。

 冗談で言ったつもりだったが、もしかするかもしれない。


「勘違いすんなよ。別に仲良くすんなって言ってるわけじゃねえから。むしろ、もっとやれよ」

「……もっと?」


「今度の休み、円城と二人で出かけろ。学校で一緒にいるだけじゃなくて、ちゃんとデートしてこい」


「そ、そこまでやる必要ないでしょ。もう十分じゃん!」

「それは、俺らが決めることだから」


「付き合ってるって思わせるだけなら、今のままでも——」

「写真も撮ってこいよ。二人で出かけたって分かるやつをさ」

 

「絶対に嫌」


 俺が何か言う前に藤宮が続ける。


「円城くんは関係ないでしょ。学校で付き合ってるフリするだけでも十分巻き込んでるのに、休みの日まで使って、何がしたいの?」


「何がしたいか? 俺たちは楽しけりゃいいのよ。それに、あいつ前から気に食わねぇんだ。誰にでもいい顔して、それで周りから持ち上げられてんのがよ」

 

「だからって、どこまでやってもいいことにはならないじゃん」

「へえ?」


 俺はポケットからスマホを出す。

 藤宮の声が止まった。


 画面を操作し、保存してある動画を開いて彼女に見せる。

 再生する必要もなかった。藤宮には最初の一コマだけで分かるからだ。


「じゃあ、やめるか? これが回ったらどう見えるだろうな」

「……それ出す気?」

「お前次第だろ。親父さんの件だって、まだ何も片付いてねえしな」


 藤宮の指が鞄に食い込む。

 

「家族は関係ないでしょ」

 

「円城だって関係ないんだろ? 関係ない奴ばっかだなぁ〜?」

「……最低」


 藤宮は俺を睨んだまま、しばらく何も言わない。


「…………行けばいいんでしょ」


「ああ。ちゃんとデートに見えるようにしろよ」

「分かった」


 返事をしてからも、藤宮はその場に残っていた。


「何かあんのか?」

「これが終わったら、動画は消してくれるんだよね」

「おーおー、もちろんだよ」


 藤宮の顔から怒りが消えた。安堵の方が強くなったのだ。


「……分かった」


 踵を返して歩いていく背中を見送っていると、ポケットの中のスマホが震える。


『どう?』

「上手く行ったよ。やらせる」

『やるじゃんカッシー!』


 その後も何件かのメッセージが送られてくるが、俺は何も返さなかった。

 遠くで運動部が声を上げている。俺は無意識のうちに舌打ちしていた。

あからさまに仄めかし過ぎたかもしれません。

ほとんど触れられず終わるかもですが、予想してみてください


評価ポイントをいただけるととても嬉しいので、お手数ですがよろしくお願いいたします!

作品作りにご協力いただけると幸いです!


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