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【供養版】嘘告を仕掛けた奴らを助けようとする度に大炎上。彼女は曇るし、俺はどうすればいいんだ?  作者: 歩く魚


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6/8

6.途中で革命でも起きたんですか?

 数日後の昼休み、俺が弁当箱を机に出すより先に、藤宮が前の席から椅子を引いてきた。


「今日はちょっと眠そうだったね」

「そう見えるだけですよ。特殊な訓練を積んでますんで」

「どこで使うのそれ……」

 

 彼女は慣れた様子で座ったかと思うと、自分の弁当を机に置く。

 

「そうだ。藤宮さん、これ」


 鞄から小さな紙袋を取り出して渡す。

 藤宮は受け取ったものの、すぐには開けずに袋と俺の顔を見比べた。


「なにこれ?」

「ほら、この前クッキー貰ったじゃないですか。そのお返しです。レモンが余ってたので、パウンドケーキにしてみました」

 

「本当に作ってきてくれたんだね。ありがと」

「約束したじゃないですか」

 

「そうだけどさ。言った私が忘れかけてたくらいなのに、ちゃんと覚えてるんだもん」


 藤宮は紙袋の中を覗いている。

 透明な袋に包んだケーキを取り出し、弁当箱の横へ置いた。


「先に食べたいところだけど、デザートに食べるね」

「楽しみは最後まで取っておく派ですか?」


「どっちかって言えばそうかも。それに、今食べたら絶対お弁当入らなくなるし」

「三切れしかないですよ」

 

「三切れって、食前に食べるには結構だから。円城くんって意外と食べるよね」


 腹が鳴っただけで笑われたし、食事量について信用されていないようだ。

 危機感を覚えながら弁当を食べ始めると、近くを通った女子たちが俺の机を見て足を止めた。


「あ、今日も一緒に食べてるね!」

「もう珍しくもなくなったよね。本当にお似合いだし」


「せっかく話題の人になったと思ったら、三日くらいで飽きられましたね」

「私は助かってるよ。毎回囲まれてたら落ち着いて食べられないもん」


「藤宮さん、最初すごかったもんね。今は普通に円城くんの席にいるけど」


 言われた藤宮は、箸を動かしたまま「そうだね」と返した。

 否定も言い訳もしなかったことで、女子の方が少し意外そうな顔をしている。


「慣れた?」

「慣れたっていうか、毎日一緒に食べてたらこうなるでしょ。円城くんも椅子、用意してくれるし」


「最近は自分で持ってきてません?」

「そこは気分」


 女子たちは笑いながら自分たちの席へ戻っていった。


 藤宮は何事もなかったように食事を続けている。

 数日前までは、クラスメイトから声を掛けられるたびに困っていたのに、今は俺より受け流すのが上手いかもしれない。


「円城くん、食べ終わった?」

「はい」

「私も。ケーキもらうね」


 わざわざ俺が食べ終わるのを待っていたらしい。

 藤宮は包みを開き、ケーキを口に入れた。


「……おいしい」


 続けてもう一切れを食べる。


「レモン、結構入ってるよね。甘いけど酸味もしっかりしてるし、いくらでも食べられそう」

「それなら良かったです。皮も少し入れてるんですよ」


「へぇ! 私、お菓子作る時ってレシピから外れるの怖くて、書いてある通りにしかやらないんだよね。円城くんはアレンジするの?」

 

「最初はそのまま作りますよ。何回か作って、少しずつ変えていきます」


 その方が、どのように味が変わったのか分かりやすいからだ。


「料理になると、急に頼もしいなぁ」

「それほどでもないですよ」


「あ、調子乗ってる」

「何か言いましたか? そのケーキ、いらないなら返してください」

「いる。これはもう私のだから」

 

 口に運ばれてしまった。


「次に作るなら、もう少し酸っぱいのも食べてみたいかも。今日のも美味しいけど、もっとレモンが強い方が、多分好き」

「じゃあ次は、少し増やしてみますね」


「円城くんは、本当に作ってきてくれそうだよね。食べ物の話するの、ちょっと危ないかも。言ったもの全部出てきそう」


「材料費が高すぎなければ」

「じゃあ高級食材は駄目かあ」


 残念そうな声を出しているが、高級食材で何を作らせるつもりだったんだ。


「私もまた、何か作ってこようかな。貰ってばっかりになるの嫌だし」

「この前は藤宮さんの番だったじゃないですか」

 

「じゃあ交代でいいんじゃない? 円城くん、私、円城くん、私、円城くん、円城くん、円城くん」


「途中で革命でも起きたんですか? 制度が崩壊しましたけど」

「怖い話だよね……」


 怖いのは藤宮さんですよ。

 その後、藤宮は三切れ目には手を付けず、丁寧に包み直して紙袋へ戻した。


「これは帰ってから食べる。一気に全部食べちゃうの、勿体ないし」

「気に入ってもらえたなら作った甲斐がありました」

「うん。かなり好き」


 食べ物の話だと分かっているから、普通に頷くことができる。


「そうそう、英語もちゃんとやりましたよ」


 食べ終わった弁当を片付けてから、鞄の中のノートを取り出す。

 教えてもらったところを家でもう一度やり直していたのだ。


「ふーん? 見せて」


 藤宮が手を伸ばしてページを捲っていき、俺が書き直した部分まで来ると、ゆっくり目を通す。


「……ちゃんとできてるじゃん。ここ、前間違えてたところだよね。自分で解けるようになったんだ」

「先生が良いですからね」

 

「偉い。最初は私がいないと何も進まないかと思ったけど、これなら点数上がりそう」

「藤宮さんからの評価も上がりましたね」

「上がったよ。教えたことやってくれると、私も嬉しいし」


 藤宮はもう一度ノートを見返してから、俺へ返してきた。

 口元にはまだ笑みが残っている。


「今日は放課後に用事あるから残れないんだけど、明後日なら空いてる。その日にまたやろ。予定あったら別の日にするけど」

「明後日で大丈夫です」

「じゃあ決まり。今度はこの続きからね」


 藤宮が教科書を開き、次にやるページを俺へ見せる。


「私が教えるからって、授業を聞き流すのはダメだからね?」

「もちろんです。俺の目標は、藤宮さんに教わる前に教えることになりました」

「遠い道のりになるかもね」


 予鈴が鳴り、藤宮は呆れたような顔でそう言うと、紙袋を持って立ち上がった。


「残りは晩御飯の後に食べるね」

「もちろん、お好きな時にどうぞ」

「ん。次は私の番だから、何にするか考えないと」

 

「交代制ですもんね」

「今のところはね」


 彼女は自分の席へ戻っていった。

 

 机の上には英語のノートが残っている。

 明後日までに、もう少し進めておこう。

ちょっとずつやり取りにも色が出てきましたね


評価ポイントをいただけるととても嬉しいので、お手数ですがよろしくお願いいたします!

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