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EP 4

究極の錬金術(コンプライアンス違反)

翌日の昼下がり。

市場破壊マナ・キャベツ、インフラ破壊(巨大ゴーレム)、そして大自然の危機(山火事未遂)という、ルナが引き起こした『善意のテロ三部作』により、銀河の精神力(SAN値)はすでに限界を迎えていた。

「……あはは。今日もいい天気だなぁ」

ポポロ村の広場のベンチ(※昨日ゴーレムに破壊されなかった奇跡の生き残り)で、銀河は目の下に濃いクマを作り、死んだ魚のような目で空を見つめていた。

もう、同情を引こうとか、依存させようとか、そんな高尚な企みはミリも残っていない。ただ平穏に、スス汚れのない服で呼吸がしたいだけだった。

「銀河様!」

そこへ、今日も純白のフリルドレスをふわりと揺らし、ルナが満面の笑みでやってきた。銀河の肩がビクッと跳ねる。

「うふふっ、お待たせいたしました。実は昨日の夜、銀河様がお金に困っているというお話を伺ってから、私、一生懸命考えたんですの」

ルナは、嬉しそうにパチンと手を合わせた。

嫌な予感しかしない。昨日の「三日で消える偽金塊」の悪夢が脳裏をよぎる。

「……ル、ルナさん。もういいよ。お金のことは気にしないで。僕、ドカタのバイト(リーザとのデート)で稼ぐから……」

「いいえ、そんな辛い労働なんてさせられませんわ! 銀河様のように心優しく、ドジで可哀想な方には、もっと手っ取り早く、安全で、確実にお金を稼ぐ方法をご提案しますの!」

ルナの瞳が、無垢な善意でキラキラと輝いている。

「手っ取り早く……? まさか、また石を金に変えるとか……」

「そんなセコい魔法は使いませんわ! 銀河様、聞いて驚かないでくださいね?」

ルナは、もったいぶるように銀河に顔を近づけ、世界一素晴らしいアイデアを思いついた天使のような笑顔で、こう言い放った。

「銀河様の『腎臓』を、闇市場で売り払いましょう!」

「…………は?」

銀河の脳髄が、一瞬、完全にフリーズした。

「ルナミス帝国の裏社会なら、健康な人間の臓器は高値で取引されますの! 一つ売れば、一生遊んで暮らせるだけの大金が手に入りますわ!」

「いやいやいや!! 待って!? それ僕、死ぬか一生障害が残るやつだよね!?」

「ご安心くださいませ!」

ルナは、ドン引きする銀河の手をぎゅっと握りしめ、自信満々に胸を張った。

「私が誇る世界樹の回復魔法なら、失った臓器など数秒で『完全再生』できますの! つまり……」

ルナの目が、三日月のように細められる。

「腎臓を売る → 私が再生する → また売る → また再生する……これを繰り返せば、文字通り『無限にお金が湧き出る究極の錬金術』の完成ですわぁぁッ!!♡」

「〜〜〜〜ッ!!!」

銀河は、肺の中の空気をすべて吐き出し、立ち上がって絶叫した。

「狂ってる!! あんた完全に狂ってるよ!!」

「まぁっ、照れないでくださいな銀河様。私、銀河様のためなら何度でも臓器を再生させてご覧に入れますわ!」

「照れてるんじゃない!! コンプライアンス違反だ!! 倫理的アウトだ!! そんなことしたら、ルナミス帝国警察どころか、この世界(物語)の運営からBANされる対象だよ!! 世界が終わる!!」

神の申し子であり、冷酷な心理操作の達人だったはずの星月銀河は、頭を抱えて悲鳴を上げていた。

(勝てない。こんなの絶対に勝てるわけがない。僕のサイコパス設定なんて、このエルフの『倫理観ゼロの善意』の前では、ただのお遊戯じゃないか!!)

「さあ銀河様! 早速、麻酔なしでいきますわよ! えいっ♡」

ルナが、恐ろしいほど純粋な笑顔のまま、世界樹の杖の先端を鋭利なメスのように変形させ、銀河の脇腹へと迫ってきた。

「ヒィィィィッ!! 来るなぁぁぁッ!!」

銀河は、これまでの人生で最も素早い動き(マッハの速度)で踵を返し、ポポロ村の出口へ向かって全力疾走を開始した。

「あっ、お待ちになって銀河様! 遠慮なさらないで! 肝臓でも眼球でも、なんでも高く売れますわよぉぉぉ!!」

「助けてええええええっ!! キャルルさぁぁぁん!! ダイヤさぁぁぁん!! リーザちゃぁぁん!!」

ド底辺の泥にまみれたリーザの強欲さすら、今はひどく愛おしい。

愛の破壊者・星月銀河は、自らの臓器とコンプライアンスを守るため、誇りもプライドもかなぐり捨てて、半狂乱で逃亡を続けるのだった。

だが、この逃走劇の先で、彼を待ち受けているのは『さらなる地獄(ヤンデレの義母)』であることに、哀れな少年はまだ気づいていなかった。

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