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12.月が美しい

「何度言えば分かる? 俺は、フィロサフィール家の娘なら誰でもいいわけじゃない」

「そうは言いましても、アンジェリカは……その……」

「くどい!」


 ルイは、普段なら絶対出さないような大声を出した。

 そのためか、公爵が一歩後退した。


「何故そんなに、お前は妹の方を勧めてくる!? もう明日には正式に婚約する今になっても!」

「ですが陛下! アリエルの方がアンジェリカよりも美しいかと」

「アンジェリカの方がずっと美しい」


 ルイは、アンジェリカのピーナツ色の髪が風に靡くのを美しいと思った。

 彼女が本を読んでいる時に分かる、まつ毛の長さには何度も見惚れた。

 他の貴族に娘ではあり得ないような、メイド達への気遣いには何度も驚かされた。既に城内にはアンジェリカに憧れる人間が数多くいることは、ルイも耳にしていた。


「もう、アンジェリカが俺の妃になることで物事が進んでいる。今更変更などできるわけもないだろう」


 変更できたとしても、する気もないルイではあった。


「ですが」

「ですがですがですが! お前は一国の王子である俺の言葉をこれ以上否定するのか!?」


 強い口調で公爵を一喝したルイの目には鋭い光が宿っていた。


「しっ、失礼しました……」

「分かったら、さっさと家へ戻れ」

「…………で…………」

「これ以上何か言いたいことがあるなら、他の者に言ってもらおうか」


 ルイがそう言うと、近くに控えていた大柄の衛兵が剣先をちらつかせながら公爵に近づいた。

 そんな衛兵の様子を見た公爵は、明らかに不服そうな表情を浮かべながらも


「何もありません。失礼いたしました」


 と、答えた。

 その言葉を聞いたルイは、手を叩いて侍従の1人を呼んだ。


「公爵がお帰りになる。お見送りをしろ」

「御意」

「お、お待ちください殿下!まだ話は」

「どうしても話がしたいと言うなら、アンジェリカと一緒に来い。それ以外は認めない」

 

 ルイは、公爵を迎えに来た侍従に後を任せ、そのままバルコニーに出た。


「月が、美しいな……」


(次、この月を見る時には、アンジェリカは側にいるだろうか)


 そんなことを考えながら、ふとルイは嫌な寒気を背中に感じた。

 だが、それはきっと気のせいだろうと考えたルイは、明日が早く来ることを月に祈った。

 その月を象徴とするルナ教が、明日自分からアンジェリカを奪い去ることなど、全く想像すらしていなかった。

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