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格闘ゲーマー異世界で無双する  作者: 蒼崎しんのすけ


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第2話 武闘祭と蹴りの女王

「武闘祭?」


王国騎士団のガレス団長から話を聞いた俺は、腕を組んで考え込んでいた


異世界に転生して、まだ半日も経っていない


それなのに、いきなり魔物を倒して、騎士団長と手合わせして、今度は国を救うために武闘祭へ出場しろと言われている。


いや、待て


俺は元プロゲーマーだぞ


格闘ゲームの大会なら何度も出場してきたが、リアルの格闘大会なんて出たことがない


……まあ、さっき騎士団長を波動拳で吹っ飛ばしたけど


「ちなみに その武闘祭って優勝賞金とかあるのか?」


「もちろんだ 優勝者には王国から莫大な賞金が贈られる それに、望むなら騎士団への推薦もある」


「賞金!」


思わず声が出た。


異世界で生きていくには金が必要だ


宿代も食費もいる


そもそも今の俺、財布すら持っていない


「出る!」


即答だった


「おお! 参加していただけるか!」


ガレス団長が嬉しそうに笑う


「ただし 条件がある」


「条件?」


「俺 まだこの世界の常識を知らないんだ 大会までの間、いろいろ教えてくれ」


「それならば問題ない 王都までの道中 エレナに案内させよう」


隣にいた女騎士エレナが、胸に手を当てて頷いた。


「お任せください」


よし


これで異世界生活の第一歩は確保できた


……と思った、その時だった。


「待ちなさい」


凛とした女性の声が響いた


騎士たちが一斉に振り向く


広場の入口に、一人の女性が立っていた。


黒い髪を高い位置で結い上げ、動きやすそうな赤と黒の格闘着を身にまとっている


腰には長い帯


そして何より目を引くのは、その足だった。


鍛え抜かれた脚線


無駄のない筋肉


まるで一瞬で相手の懐に飛び込めそうな、鋭い立ち姿


女性は俺を真っ直ぐ見つめた


「あなたが ワイバーンキングを倒したという男?」


「ああ まあ、そうだけど」


「名前は?」


「リュウ」


女性は小さく頷く


「私はチュンスティン 格闘家よ」


彼女は一歩前へ出た


「あなたの力を確かめに来たわ」


……なるほど


異世界にもこういう人がいるのか


強い奴の噂を聞いたら、片っ端から勝負を挑むタイプ


俺の大好きなやつだ。


「いいぜ やろう」


「リュウ様!?」


エレナが慌てて声を上げる


「相手はチュンスティンです! 王国でも指折りの格闘家ですよ!」


「へえ」


俺はチュンスティンを見た


彼女は笑っている


「安心して 手加減はしないけれど 殺すつもりもないわ」


「こっちも同じだ」


その瞬間、俺の視界にステータス画面が開いた。


対戦相手を確認


チュンスティン


格闘家 Lv.55


戦闘スタイル:蹴撃連舞


HP 14,500


MP 1,800


力 720


スピード 1,240


魔力 320


固有スキル


蹴撃連舞


空中連撃


旋風脚


奥義・天翔百裂脚


「……スピード高っ!」


俺は思わず声を上げた


チュンスティンは眉を上げる


「何か見えたの?」


「いや なんでもない」


彼女は軽く足を鳴らした。


「それじゃあ、始めましょうか」


俺は構えた


目の前に赤い攻撃判定と青い食らい判定が浮かび上がる


相手の動きも、技の発生も、全部見える。


今度はどんな技が使えるんだ?


俺はスキル画面を開いた


そこに見慣れた技名が並ぶ


波動拳


昇竜拳


竜巻旋風脚


そして、新しく解放された技の数々


……よし


行くか


「始め!」


ガレス団長の声が響いた


そして、俺の異世界二度目の対戦が始まった。


「はっ!」


開始の合図と同時に、チュンスティンが地面を蹴った。


速い!


そう思った瞬間、彼女の姿が目の前から消えた


「えっ!?」


次の瞬間


ドゴッ!!


「ぐっ!」


腹に強烈な蹴りが突き刺さった


HP 850 → 620


「いってぇぇぇ!!」


俺は後ろに吹っ飛ばされた。


何だ今の!?


攻撃が見えなかったわけじゃない


ヒットボックス表示には、ちゃんと彼女の足が赤く光っていた


だが、反応できなかった


「まだまだ!」


チュンスティンが踏み込む


右蹴り!


左蹴り!


回し蹴り!


そして、空中からの踵落とし!


「うおおおおっ!?」


俺は必死にガードする


ガガガガガガッ!!


自動ガードが作動し、攻撃を受け止める


しかし、画面の端に警告が表示された


『ガード耐久値:低下』


「ちょっ! ガード削りまであるのかよ!」


チュンスティンは笑った


「防御は上手ね でもいつまで持つかしら?」


彼女の蹴りがさらに速くなる


まるで足が何本もあるかのようだった


蹴りの連撃が俺のガードを揺さぶる


そして


「そこ!」


一瞬、彼女の足が止まった。


俺は反撃しようとした


「昇竜拳!」


だが、チュンスティンはすでに後ろへ跳んでいた。


俺の拳は空を切る


「隙あり!」


空中から鋭い蹴りが飛んでくる


「ぐはっ!」


HP 620 → 410


また食らった!


くそっ


この女、強い


ただ速いだけじゃない


俺の技の発動を見て、確実に反撃してくる


しかも、俺がゲームでよく使っていた戦法まで読んでいるようだ


「なるほど……」


チュンスティンが軽く息を吐く


「あなた、面白い技を使うわね だけど 動きが単調よ」


「……!」


「攻撃の前に 必ず隙ができる そこを狙えばいい」


彼女は腰を落とし、再び構えた。


「次で終わらせるわ」


俺の背筋に嫌な汗が流れた


チュンスティンの身体が低く沈む。


その瞬間、ステータス画面が反応した。


『奥義発動を検知』


『天翔百裂脚』


「奥義!?」


彼女が地面を蹴った


一瞬で距離を詰めてくる


そして、最初の蹴りが飛んできた


ドンッ!


ガード!


二発目!


ドンッ!


ガード!


三発目!


ドンッ!


「くっ……!」


俺のHPが削られていく


『HP:410 → 350』


『HP:350 → 290』


『HP:290 → 220』


やばい


このままじゃ持たない!


チュンスティンは止まらない


蹴りの連撃がさらに激しくなる


右、左、右、左。


身体が宙に浮き、回転しながら蹴りを叩き込んでくる


俺の視界が赤く染まった。


『HP:220 → 160』


『HP:160 → 110』


「レッツゴーチュンスティン-っ!!!」

ギャラリーが叫ぶ


「これで終わりよ!」


チュンスティンが叫ぶ


最後の一撃


彼女の全身が空中で大きく回転した


その脚に、凄まじい魔力が集まっていく


『最終段:天翔落脚』


「……来た!」


俺は画面の隅に表示された、あるスキルを見た


ジャストパリィ。


いや、違う


俺がやりたいのは、これじゃない


もっと正確に言えば


あの技だ


ストリートファイターⅢ 3rd STRIKE


あのゲームで、数え切れないほど練習した


相手の攻撃を、ギリギリで受け流す


そして、相手の連続攻撃をすべて捌ききる


あの感覚


あの一瞬の入力


俺はチュンスティンの足を見つめた


「……ブロッキングだ」


俺の身体が勝手に動く


彼女の最初の蹴りが、目の前に迫る


俺は前方向へ入力した


カンッ!


『BLOCKING!』


「なっ!?」


チュンスティンの目が見開かれる


続けて二発目


カンッ!


『BLOCKING!』


三発目


カンッ!


『BLOCKING!』


俺の身体が、攻撃を受ける寸前にわずかに動く


一撃


二撃


三撃


四撃


五撃


すべての蹴りを、寸分違わず捌いていく


「何……!?」


チュンスティンの表情が変わった


彼女の奥義は、連続攻撃を当て続けることで威力を増す技


しかし、そのすべてが空を切っている


俺の視界には、攻撃判定が表示されていた。


赤い四角が迫る


それに合わせて、俺は入力する


前


前


前


前


前


カンッ!


カンッ!


カンッ!


カンッ!


カンッ!


「嘘でしょ……!」


彼女の蹴りが、ついに最後の一撃へと移る


天翔落脚


巨大な魔力をまとった足が、俺の頭上から落ちてきた。


俺は一歩も退かなかった


「これで……最後だ!」


前入力


カァンッ!!


『PERFECT BLOCKING!』


「今だ!」


俺の拳が、チュンスティンの腹へ突き刺さった


「ぐっ!?」


『COUNTER HIT!』



続けて、俺の身体が勝手に動く


アッパーからの昇竜


青白い闘気が彼女を包み込む。


だが、まだ終わらない。



俺の目の前に、見慣れたコマンドが表示された。


↓↘→↓↘→+P


「これ……!」


懐かしい。


何度も大会で決めた技。


俺は迷わず入力した。


「真・昇竜拳!!」


拳が光り輝いた。


凄まじい衝撃波が広場を包み込む。


ドゴォォォォォォン!!


チュンスティンは空中へ吹っ飛ぶ


土煙が舞い上がる。


広場にいた騎士たちは、誰一人として声を出せなかった。


そして。


土煙の中から、チュンスティンがゆっくりと立ち上がった。


「……はぁ……はぁ……」


彼女は息を切らしながら、俺を見つめる。


その頭上に表示されたHPは、残りわずかだった。


一方、俺のHPも残り110。


危なかった。


本当に危なかった。


「……今のは、何?」


チュンスティンが尋ねる。


「え?」


「私の奥義を……全部、受け流した。あんな技、見たことがない」


俺は苦笑した。


「いや、あれはブロッキングっていう技で……」


「ぶろっきんぐ?」


「簡単に言えば、攻撃が当たる瞬間に前へ入力して、攻撃を受け流す技だ」


チュンスティンは黙り込んだ。


「……それを、あの連撃の中で?」


「まあ、ゲームで何度も練習したからな」


「ゲーム?」


しまった。


また変なことを言った。


俺は慌てて誤魔化す。


「いや、俺の故郷にある修行法だよ」


「……そう」


チュンスティンはしばらく俺を見つめたあと、突然笑い出した。


「ふふっ……あはははは!」


「えっ?」


「面白い! あなた、本当に面白いわ!」


彼女は俺の前まで歩いてきた。


そして、右手を差し出した。


「私の負けよ。リュウ」


俺はその手を握った。


「いい勝負だった」


「次は負けないわ」


「ああ。楽しみにしてる」


その時。


広場にいた騎士たちから、ようやく歓声が上がった。


「うおおおおおお!!」


「リュウ殿が勝ったぞ!」


「チュンスティン様の奥義をすべて捌いた!」


「なんという技量だ……!」


エレナは口を開けたまま固まっていた。


「リュウ様……あなたは一体、どれだけの技を隠しているのですか……?」


俺は頭を掻いた。


「いや、まだまだあるぞ」


その言葉に、チュンスティンが目を輝かせた。


「まだあるの!?」


「ああ。格闘ゲームの技なら、いくらでもな」


彼女は嬉しそうに拳を握った。


「武闘祭、私も出るわ」


「え?」


「あなたと決勝で戦いたい!」


俺は笑った。


「いいぜ。待ってる」


こうして、俺の武闘祭への出場が決まった。

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