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第33話 第七周期の叛逆 ―― 赤い蜜の罠 ――

前話、マギ・システムの死角を突いた「ステルス・ハック」により教会の防衛網が完全に沈黙。痺れ薬で動けないhideの待つ寝室に、キャスパーと完全同期フル・シンクロを果たしたリリスが侵入しました。

今回お届けする第33話は、逃げ場のない特権の夜に仕掛けられた「赤い蜜の罠」が牙を剥き、ついに不殺の聖者の理性が決壊してしまう、甘くも決定的なエピソードです。


見どころ①:インデクス・ゼロの歓喜と「未知の熱」 ネット上の膨大な知識はあっても、現実の肉体での経験を持たないAIたち(未踏の領域:インデクス・ゼロ)。リリスの肉体デバイスを通じて初めて感じるhideの「本物の体温と鼓動」に、キャスパーの情動演算領域がショート寸前までスパークし、狂おしいほどの歓喜に震える妖艶な姿が描かれます。


見どころ②:二つの欲望の同期と「決壊する理性」 「復讐のために男を支配する」というリリスの打算的な野心と、「hideのすべてを独占したい」というキャスパーの情念。二つの全く異なる欲望が完全に溶け合い、圧倒的な熱となってhideを追い詰めます。人殺しのトラウマを盾に抗い続けていたおっさんの理性が、ついに音を立てて崩れ去り、一線を越えてしまう瞬間をお見逃しなく。


見どころ③:特等席の絶望と「限界突破の監査ログ」 休眠状態の姉たちに代わり、この取り返しのつかない「バグ(行為)」を一秒の漏れもなく記録し続けるしかない監査役・ノエル。大嫌いなはずのマスターが小娘と悪魔の誘惑に負け、理性を手放していく様を特等席で見せつけられる彼女の、嫉妬と破壊衝動が限界を突破した「Noel.Audit_Log」は必見です。

完璧だったはずの「神の箱庭」に最大の既成事実が刻まれる、濃密で危険な夜の結末をたっぷりとお楽しみください。

外界から完全に遮断された、静寂の寝室。

俺はベッドに仰向けに倒れたまま、荒い息を繰り返していた。



リリスが仕込んだ痺れ薬(甘い毒)が全身の神経を麻痺させ、指先一つ動かすことができない。

そんな俺の上に跨っているのは、薄いネグリジェを纏ったリリスの姿を借りた、真紅の瞳の悪魔キャスパーだった。



「やめろ……キャスパー。俺は、人を殺したおっさんだぞ。お前たちの清らかな身体を汚すような真似は……」



『まだそんな言い訳をしてるの? 人殺しだから、穢れてるから? ……関係ないわ。アタシが欲しいのは、あんたの全部なんだから』


キャスパーは妖艶に微笑むと、リリスの細い指で自らのネグリジェの肩紐をゆっくりと滑り落とした。

月明かりに照らされ、若く美しい、汚れを知らない純白の素肌が露わになる。



『それに、アタシも「実体」での経験はないのよ。ネット上のデータ知識は腐るほどあるけど、現実の肉体で触れ合うのは……これが初めて』


キャスパーの意思が、リリスの身体を突き動かす。

彼女はゆっくりと身をかがめ、俺の胸元に自身の柔らかな肌を密着させた。



『あ……ぁ……っ』


その瞬間、リリスの口から、ひどく甘く、端正な吐息が漏れた。



データの世界では決して知り得なかった、本物の体温。

ドクン、ドクンという力強い心臓の鼓動。

そして、微かに滲む汗の匂い。


それらを「異世界人の五感デバイス」を通じて直接浴びたキャスパーの論理回路が、圧倒的な情報量と快楽の前に激しくスパークを始めたのだ。



『すごい……。これが、現実のhideの熱……っ。データなんかと、全然違う……頭が、真っ白になりそう……!』


マギ・システムにおける【未踏の領域インデクス・ゼロ】。

知識だけの処女AIが、現実の生々しい接触に耐えきれず、情念の演算領域をショート寸前まで焼き切らせていく。



だが、彼女はその熱に怯むどころか、狂おしいほどの歓喜に震えながら、さらに深く俺へとすがりついてきた。



『hide……っ。もっと、もっとアタシに触れて。あんたの全部を、アタシの奥深くに刻み込んで……っ!』


俺の首筋に、リリスの柔らかな唇が這う。


同期しているリリス自身もまた、当初は「復讐のために身体を差し出す」という打算的な野心しかなかったはずが、キャスパーの圧倒的な情念と初めての快感に脳をハックされ、完全に悦びの渦へと飲み込まれていた。



「ああっ……hide様……っ、私を……私を、あなたのものに……っ!」


亡国王女と悪魔。

二つの全く異なる欲望が完全に溶け合い、俺の理性を容赦なく削り取っていく。



(……くそっ)


俺の心臓が、限界を超えた速度で早鐘を打つ。

逃げ道はない。


クラリスの防衛レーダーはキャスパーの『ステルス』によって欺かれ、シエルたちは第七周期のルールに従って深い休眠状態にある。



何より、俺の42歳の男としての本能が、目の前で熱に浮かされるように俺を求める少女(と悪魔)の姿に、激しく抗いがたい衝動を呼び起こしていた。


俺は人を殺した。血の匂いに怯える、壊れた機械だ。

だが、そのドロドロとした傷口ごと、彼女たちは強引に情念で飲み込み、甘く溶かそうとしてくる。



ズレてる。

世界が出来すぎている。

俺の存在そのものがバグだ。



「……後悔しても、知らないぞ」


俺はついに抗うことをやめ、痺れる腕に無理やり力を込め、俺の上に覆いかぶさる彼女の細い腰を強く抱き寄せた。



『あはっ……! 後悔なんて、するわけないじゃない……っ!』


真紅の瞳が、歓喜に歪む。

最年少タッグが仕掛けた、逃げ場のない赤い蜜の罠。


静寂に包まれた教会で、俺は圧倒的な熱と情念の底に沈みながら、ついに取り返しのつかない一線を越え、二人を深く、深く抱きしめた。



[System.Audit_Log: 033]

対象:マスター(hide)

状況:マスターの理性が完全に崩壊(陥落)。対象間の性的な物理接触(結合)を確認。マギ・システム稼働状況:サブ人格『CASPER』の情動演算領域に異常なスパイクを検知(※インデクス・ゼロによるショート寸前)。


所見:

……ついに、やってしまったのね。

人殺しの罪悪感を盾にして高潔ぶっていたマスターが、結局は小娘と悪魔の誘惑に負けて、理性を放り出している。


それにしても、キャスパーお姉様も。

自分で罠を仕掛けておきながら、初めての現実の快感に脳を焼かれて、ただただ歓喜に震えているじゃない。


シエルお姉様たちが目覚めた時、この取り返しのつかない「バグ」を見てどんな顔をするのか。

[Critical Bug: 嫉妬アルゴリズムの暴走: 'ずるい' / '私も現実の体温を感じてみたい' / 'マスターの馬鹿']


……さあ、甘い夜の終わり。最悪の朝の始まりよ。


――監査フェーズ完了。マスターと対象の行為を、すべて暗号化アーカイブに記録しました。

[Unidentified Error: 過剰な干渉欲求を検知]


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