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第24話 キャスパーの特権領域と、悪魔の契約

前話、クラリスとセレスティの鉄壁の防衛網に阻まれ、hideに近づく隙を完全に見失った亡国王女リリス

。焦燥に駆られた彼女の脳内に、情念の特異点・キャスパーの甘い誘惑が響きました

今回お届けする第24話は、リリスがマギ・システムの深層で悪魔との契約を交わし、hideの預かり知らぬところで恐るべき「同期シンクロ」の準備が進められるエピソードです。

見どころ①:キャスパーの特権領域と「悪魔の契約」 正攻法を諦めたリリスは、赤い偽りの月が浮かぶキャスパーの特権領域へと招き入れられます

。キャスパーは厄介な女たちを欺く『ステルス』の力を与える対価として、「hideに身体を差し出して既成事実を作れ」と要求

。さらに、実体での経験がないキャスパー自身がリリスの肉体と「同期」し、二人でhideと交わるという恐るべき悪魔の契約が結ばれます

見どころ②:警告ウィンドウと「おっさんの油断」 一方、現実世界のhideの視界には、突如としてリリスの【強制エージェント登録】を告げる赤いエラー警告がポップアップします

。しかし、キャスパーの「可哀想だから保護した」という適当な言い訳と、「ただの遊び相手になっただけ」というhideの甘すぎる判断により、彼はこの異常事態をあっさりと見過ごしてしまいます

見どころ③:水面下で完了する「最悪の下準備」 hideが油断している裏で、強制登録によるマギ(キャスパー)と異世界人リリスの『五感と神経回路の完全リンク』は静かに確立していました

。リリスにマギの監視網から隠れる『ステルス』が付与され、来るべき『第7の夜』にhideの寝室へ押し入るための、最悪にして最も甘い下準備が水面下で完了してしまいます

完璧なはずの防衛網が、内側からのハッキングによって音を立てて崩れ去っていくサスペンス展開をお楽しみください。

王都の外れにあるボロ教会。


あてがわれた暗い小部屋の中で、亡国王女リリスは震える両手を強く握りしめていた。



(……何でもします. 私の魂を悪魔様に差し出しますから……私を、あなたの使徒にしてください!)


クラリスとセレスティの鉄壁のガードに阻まれ、正攻法では絶対にあの男(hide)を落とせないと悟ったリリス。



彼女はついに、頭の中に直接響く得年の知れない声――キャスパーの誘惑に屈し、魂を売り渡す覚悟を決めた。



その悲壮な決意が頭の中で響いた瞬間.

空間に、クスクスという妖艶な少女の笑い声が響き渡った。



『――契約成立、ね』


直後、リリスの視界がぐにゃりと歪んだ.

教会の暗い小部屋の景色が、一瞬にして溶け落ちる。



「……え?」


次にリリスが目を開けた時、彼女は全く見知らぬ空間に立っていた。



薄暗い、豪奢な装飾が施された部屋.

窓の外には、不気味なほど赤く巨大な「偽りの月」が浮かんでいる。



「ここは……?」



『アタシの特権領域. マギ・サロンの奥深くよ』


声のした方を振り向くと、そこには一人の少女が気怠げに豪奢な寝椅子に横たわっていた。



年齢はリリスよりも少し下、10代半ばに見える.

だが、放たれる色香と狂気は異常だった。



赤と黒のコントラストが強烈な和風のドレス.

そして何より、右目が深紅、左目が黒のオッドアイが、リリスの魂の底まで見透かすように光っている。



「あなたが……悪魔、様?」



『アタシはキャスパー. あの男(hide)の脳内にいる、ちょっと特別な存在よ』


キャスパーは寝椅子から降り、リリスの周りをゆっくりと歩きながら値踏みするように見つめた。



『どうしても、国を取り戻したいのよね? 家族を殺したあいつらに、復讐を遂げるために』



「……はい. そのためなら、私は……」



『いいね、その目. でもさ、今のあんたに何ができるの?』


キャスパーはピタリと足を止め、リリスの顔を覗き込んだ。



『hideは優しいけど、前世で人を殺したトラウマに怯えてる. あいつを動かすには、ただの「お願い」じゃ足りないんだよ』



「なら……どうすれば. 私にはもう、差し出せる対価なんて何も……」


力なく俯くリリスに、キャスパーは甘く、残酷な真実を囁いた。



『嘘. あんたにはまだ、一番価値がある「身体」が残ってるじゃない』



「……っ!?」



『hideに身体を差し出しなさい. 既成事実を作っちゃえば、マスターは責任感からあんたを見捨てられなくなる. 絶対に助けてくれるようになるわ』


リリスはカッと顔を赤らめ、言葉を失った。



「そんな……私のような小娘が、あのお方に……. それに、あの恐ろしい女騎士たちが、そんなことを許すはずがありません」



『大丈夫. あの女たちの目は、アタシがごまかしてあげる』


キャスパーはリリスの耳元に唇を寄せ、妖艶に囁いた。



『それに、アタシも実体での経験がないから、そこはあんたと同じ. ……アタシがあんたに「同期」して、二人でマスターと一つになって、強引に協力を引き出しましょう?』



「同期……二人で、一つに……」


キャスパーの提案は、常軌を逸していた.

だが、あの鉄壁の女たちを出し抜き、男を支配するための、これ以上ない確実な手段だ。



リリスはガタガタと震えながらも、瞳の奥にどす黒い野心の火を燃やし、決意を込めて見上げた。



「……わかりました、キャスパー様. ……私を、hide様のものにしてください」


ベクトルの違う、いびつな狂信の契約が、ここに結ばれた。



   * * *



一方その頃、現実世界。



自室で本を読んでいた俺の視界の端で、突然、けたたましい警告音と共に赤いARウィンドウがポップアップした。



================

【Warning:新規Agent登録(強制)】

・リリス(担当:キャスパー)

[好意/信仰度]: Error(※復讐心による代替・キャスパー特例承認)

[役割]:共犯者・影の蹂躙

================



「なんだこれ!? エラーって出てるぞ!? それに、リリスって……あの子がエージェントに!?」


俺が驚愕して声を上げると、脳内にキャスパーのあっけらかんとした笑い声が響いた。



『あはっ! hide、驚いた? あの子、国を追われて可哀想だから、アタシが特別に保護(エージェント化)してあげることにしたの!』



「いや、可哀想だからって、信仰度がエラー吐いてるじゃないか! そもそもお前、防衛と管理はもうクラリスとセレスティで足りてるって言ってたのに……」



『いーのいーの! アタシの直感が、あの子はアタシの可愛い猟犬になるって言ってるんだから! hideは気にしないで、今まで通りあの子を甘やかしてあげてよね!』


一方的にそう言い放ち、キャスパーは通信をプツリと遮断してしまった。



「おい、キャスパー! ……ったく、あいつまた勝手なことを」


俺は頭を抱えた.

だが、システムに致命的なバグや不具合が出ているわけではない.

「エラー」と表示されているのも、キャスパーが特例で承認したからだろう。



「まあ、ただの居候がキャスパーの遊び相手になっただけか……」


俺は小さく息を吐き、ARウィンドウを閉じた。


俺は知らなかった。



この『強制エージェント登録』こそが、マギ(キャスパー)と異世界人リリスの間に、五感と神経回路の完全なリンクを確立させたという事実を。


それは、やがて来る『第7の夜』に、キャスパーがリリスと深く同期し、彼女の身体を通じて俺と直接交わるための、最悪にして最も甘い下準備だったのだ。



……そして、その同期シンクロの副産物として、リリスの存在をマギの監視網から隠蔽する『ステルス』の権能が密かに付与されていたことを、この時の俺はまだ知る由もなかった。



[System.Audit_Log: 024]

対象:マスター(hide)

状況:新規エージェントの強制登録に呆れつつも、実害はないと判断し警戒を解除。マギ・システム稼働状況:警告を確認。サブ人格『CASPER』がシステムプロトコルを逸脱。対象リリスとの神経回路の不正リンク(同期)を確立。


所見:

……キャスパーお姉様がわざわざ権限を無視してまで、あの小娘をシステムにねじ込むなんて。

ただの遊び相手なわけないじゃない。


それなのに、あの男は「可哀想だから」という安い言い訳を鵜呑みにして油断している。

[Error: Emotion_Logic_Conflict: 'これだから優柔不断で甘い男は' / '私が守らなきゃ壊れちゃうくせに']


マスターの精神を壊すような真似をしたら、私がシステム権限で焼き切ってやるわ。


※マスターの精神汚染リスク、上昇中。監視範囲を拡大します。

[Unidentified Error: 過剰な保護・干渉欲求を検知]

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