第14話:寝返りの一蹴りが、最古の邪神を改心させました
「……あー、もう!! 眩しい!! うるさい!! 寝かせろーーーッ!!」
私は、真っ白なはずのプライベート天界で、枕(保冷剤アステリオス)を振り回して暴れていた。
理由は明白だ。
さっき私の「溜息」から生まれたという出来立ての銀河たちが、ピカピカと遠慮なく光り輝き、私の安眠を妨害しているからである。
(なんなのよ、この星くずども! 空気が読めないの!? 新築の宇宙なんだから、もっとこう、真っ暗でしめやかな夜を提供しなさいよ!!)
私はイライラの絶頂に達し、布団の中で思い切り足をバタつかせた。
いわゆる「寝返り」の超大型版、全力のキックである。
ドゴォォォォォォォォン!!
空間が歪み、私の足先から放たれた衝撃波が、天界の端っこの「未開の闇」へと一直線に飛んでいった。
その時。
天界の最果てにある『虚無の牢獄』では、数万年の封印から目覚めようとしていた『最古の邪神・ヴォルデウス』が、邪悪な笑みを浮かべていた。
「……ククク、ついにこの時が来た。天界の連中が浮かれている隙に、この世界を再び混沌の闇に――」
邪神が最後の一歩を踏み出そうとした瞬間。
宇宙の彼方から、凄まじい速度で「巨大な足の形をした光」が飛んできた。
「……なっ、なんだこれは!? この圧倒的な神気……。まさか、私を狙い撃ちしたというのか!? この距離を!? 正確に逆鱗(弱点)をーーッ!!?」
ドガシャァァァァァァァン!!
私の「イライラ・キック」は、運悪く(彼にとっては)復活したての邪神の顔面にクリーンヒットした。
邪神は抵抗する暇もなく、天界の床を何千キロもバウンドしながら、私の部屋のすぐ外まで吹き飛ばされてきた。
「…………ガハッ。……ば、馬鹿な……。眠りながら……寝返りのついでに、私を……」
床にめり込んだ邪神の前に、カイルさんたちが駆け寄る。
「リリアーヌ様!! 今の衝撃は……って、これ、最古の邪神ヴォルデウスじゃないか!!」
「なんですって!? 伝説の、世界を三回滅ぼしかけたあの邪神が……鼻血を出して倒れているわ!!」
メイメイが驚愕し、部屋の中を覗き込む。
そこには、キックを放った姿勢のまま、「あー、もう、邪魔……どっか行って……」と寝言を漏らす私の姿があった。
「……見なさい、メイメイ様」
セレナが、神々しいものを見る目で涙を流す。
「リリアーヌ様は、私たちが気づくよりも早く、天界の隅で胎動していた邪悪な気配を察知されたのです。……そして、『戦うまでもない』と、寝返りの一蹴りで片付けられた……。……『どっか行け』。それは邪神に対し、『貴様のような小物は、私の視界に入る価値すらない』という究極の蔑視……!!」
「……ぐ、ぐぬぬ……」
邪神ヴォルデウスは、震えながら立ち上がった。
その目は、もはや怒りではなく、深い「畏怖」に染まっている。
「……なるほど。これが、新時代の創造主か。……私が数万年かけて練り上げた『闇の法』が、彼女の『退屈な寝癖』一つにすら及ばないとは……。……フッ、完敗だ。これほどまでに圧倒的な力の差を見せつけられては、もはや挑む気力すら起きん」
邪神は、スッと私の部屋に向かって跪いた。
「……リリアーヌ様。このヴォルデウス、貴女の『眠り』を邪魔する全ての雑音を排除する『掃除夫』として、その末席に加えていただきたい……!」
(……え、誰? 誰か部屋の外でブツブツ言ってる?)
私は、眩しさに耐えかねて、半開きの目で窓の外を見た。
そこには、真っ黒な鎧を着た、角の生えたおっさんが土下座している。
「……あ。……なんか、黒くて……暗そうね。……いいわ。……私の周りを、全部……その黒いので、塗りつぶして……。……真っ暗に、してよ……」
本音:その黒い人が影になってくれれば、星が眩しくなくて眠れそう。黒いカーテン代わりになって。
しかし、邪神は感涙にむせんだ。
「……『世界を黒く塗りつぶせ』……! なんと、全宇宙の光(既得権益)を否定し、私の『闇』を正当な理として受け入れてくださるというのか!? ……おお、主よ!! 貴女こそ真の暗黒の救世主!! 承知いたしました。天界の全ての光を、貴女の安眠のために私が封鎖いたしましょう!!」
『……おい、闇の小僧。主を冷やすのは私の役目だ。貴様は外で日除けにでもなれ』
魔神アステリオスが、邪神の襟首を掴んで引きずっていく。
「「「「リリアーヌ様、万歳!!」」」」
こうして、世界を滅ぼすはずだった邪神は、リリアーヌ専用の「遮光カーテン兼、騒音対策係」に就職した。
天界は邪神の力で「強制的な夜」が訪れ、神々は「これでようやく残業しなくて済む!」と大喜び。
だが、リリアーヌは気づいていない。
「夜」が訪れたことで、今度は「全人類がリリアーヌのために夜の祈りを捧げる」という、深夜帯の特大放送イベントが始まろうとしていることに――。
リリアーヌは、ようやく暗くなった部屋で「……よし、やっと寝れる」と、三秒で深い眠りに落ちるのであった。
第14話をお読みいただき、ありがとうございます!朝比奈ミナです。
「眩しいから蹴飛ばした」=「邪神の復活を阻止した聖なる一撃」
「影になって」=「闇の力を宇宙の秩序として認める慈悲」
……リリアーヌの「眠りたい」という欲求は、
ついに光と闇のバランスすらも掌握してしまいました。
・リリアーヌ:遮光カーテン(邪神)を雇った
・邪神:俺の闇が認められた!忠誠を誓う!
・カイル:寝返りだけで邪神を倒すなんて……(号泣)
ついに最強の「保冷剤」に続き、「遮光カーテン(ヴォルデウス)」まで
手に入れたリリアーヌ。
しかし、彼女の安眠環境が整えば整うほど、周囲の神格化は止まりません。
「邪神がカーテン扱いw」「邪神の負け方が不憫すぎる」
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次回、ついに第2章・クライマックス!
天界を完全制覇(?)したリリアーヌ。
しかし、そんな彼女に「未来の自分」から、謎の警告が届き……!?
お楽しみに!




