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最底辺のクズですが、二度寝がしたいので「神の再来」を演じることにしました ~不純な動機で祈ったら全人類に号泣され、世界教皇への退路が物理的に断たれた件~  作者: 朝比奈ミナ
第2章 天界丸投げ・神々との勘違い対決編

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第15話:【最終回】石になりたいと願ったら、宇宙の法則が「永遠の休日」になりました

天界が夜になった。

 最古の邪神ヴォルデウスが「至高の遮光カーテン」として私の部屋の窓を覆い、魔神アステリオスが「最強の冷房」として室温を完璧な24度に保っている。

 もはやここは、宇宙で最も「仕事」から遠い聖域だ。


(……勝った。ついに私は、神をも恐れぬ完璧な二度寝環境を手に入れたわ!)


 私は歓喜に震えながら、天界製の最高級羽毛布団(雲を圧縮したもの)に潜り込んだ。

 だが、意識がまどろみ始めたその時。

 部屋の空気が、まるでガラスが割れるような音を立てて弾けた。


「――待ちなさい! 過去の私! そんな自堕落な生活、未来の私が許さないわ!!」


 光の裂け目から現れたのは、眩いばかりの神装束を纏い、背後に一万本の「決裁用羽ペン」を浮かせた、絶世の美女。

 ……というか、数年後の私――『未来の聖女リリアーヌ』だった。


(……え、何? あのキラキラした暑苦しいのは、私? 嘘でしょ、あんなに働いてるの!?)


 未来の私は、眉を吊り上げて私を指差した。


「聴きなさい! 私は百年後の未来から来た貴女よ! 貴女が今、ここで寝てしまったせいで、未来の私は『全宇宙の苦情処理係』として一秒も休めない生活を送っているの! さあ起きて! 今すぐ宇宙の管理業務(ブラック労働)に戻りなさい!!」


(……嫌。絶対に嫌。未来の私が社畜になってるなら、今の私がもっと寝ることで歴史を修正してやるわ!!)


 私は未来の自分から目を逸らし、さらに深く布団に潜り込んだ。

 あまりの説教のうるささに、私は半ば意識を飛ばしながら、脳内で「究極の言い訳」を呟いた。


「……あー。……うるさい。……そんなに働きたいなら、その『一万本のペン』で、自分の運命を全部『休暇』って書き換えちゃえばいいじゃない。……私に構うな。……私は、石になりたいの。……動かない、ただの、石に……。……あと、全人類も、……休めばいいじゃない。……勝手に……」


 本音である。

 「お前が勝手に働いてるのはお前の勝手だ。私の分まで全部『休み』にして書類を捏造しろ。そして私に話しかけるな、私は石のように動かず寝るんだから! ついでに他のみんなも勝手に休んで私に関わるな!」という意味だ。


 しかし。

 未来の私は、雷に打たれたように硬直した。


「…………ッ!! な、……なんてこと……!!」


 未来の私の背後で浮かんでいた一万本のペンが、一斉にバラバラと床に落ちた。

 部屋の外で覗き見していた騎士団長カイルが、床を拳で叩いて号泣する。


「……おおお!! 『石になりたい』……! それは、移ろいゆく宇宙の中で、唯一不変の『真理の核』に到達したいという究極の悟り! そして『人類も勝手に休め』……! つまり、救済とは与えるものではなく、各々が自らの内なる平穏ニートを見出すことだと仰るのか!!」


「流石ですわ、リリアーヌ様!!」


 セレナが凄まじい筆致で「宇宙の新法」を書き殴る。


「『一万本のペンで休暇と書け』! それは、全宇宙の『労働の因果律』を破壊せよという神託! これで、宇宙の全ての存在から『義務』という名の呪いが消え去りますわ!!」


「……ククク、やはりね」


 賢者メイメイが、狂ったように時空の数式を書き換えた。


「未来のリリアーヌは、働きすぎたせいで『行動』という病に縛られていたのよ。でも、今のリリアーヌ様が放った『絶対不動の哲学(石になりたい)』が、未来の因果律を上書きしたわ! 『動かないことこそが、宇宙の完成形である』という新真理が誕生したのよ!!」


 未来の私は、呆然と自分の手を見つめ、ポロポロと涙を流した。


「……そうか。私は、頑張りすぎていたのね。……『石になる(=執着を捨てる)』……。私が必死にペンを動かしていたのは、ただの虚栄心だった。……ありがとう、過去の私。貴女の『寝言』が、百年後の私をブラック企業の地獄から救い出してくれたわ……」


 未来の私は、纏っていた重苦しい神装束を脱ぎ捨て、そこらへんにあった予備の布団にダイブした。


「……おやすみなさい。私、百年分、二度寝するわ……」


「「「「未来の聖女様までもが、安眠の境地へーーーッ!!」」」」


(……はぁぁ!? ちょっと、私の部屋で寝るな! 自分の時代に帰って寝なさいよ!!)


 しかし、未来の私と今の私が同時に「安眠」を選んだことで、宇宙の時空構造が「完全なる安定フリーズ」を引き起こした。

 天界も、人間界も、魔界も。

 全ての存在が「あ、聖女様が寝てるなら、俺たちも頑張らなくてよくね?」という空気に包まれ、大陸全土に『史上最大の永久連休』が訪れたのである。


 邪神は影となり、魔神は冷気となり、騎士たちはその寝顔を守る彫像となった。

 皮肉なことに、リリアーヌの「何もしない」という意志が、争いのない完璧な平和を実現してしまったのだ。


 リリアーヌは、自分の隣で幸せそうにヨダレを垂らす「未来の自分」を蹴っ飛ばそうとして――。

 あまりの眠気に、そのまま一緒に、深い、宇宙の裏側まで届くような眠りに落ちていった。


(……まあ、いいわ。世界が止まったなら、もう誰も私を起こせないはず。……おやすみなさい。……明日こそ、五世紀くらい、寝るんだから……)


 こうして、リリアーヌは「未来の自分」すらもニートに叩き落とし、全宇宙を巻き込んだ『永遠の二度寝』を完成させた。

 彼女の寝息は、今や宇宙の平和を奏でる「聖なるBGM」として、永遠に天界に鳴り響き続けるのである。


【完】

【完結記念あとがき】


最後までお付き合いいただき、本当に、本当にありがとうございました!朝比奈ミナです。


「ただ二度寝がしたい」という、全人類が抱くささやかな(?)欲望から始まったリリアーヌの物語ですが、気づけば国を救い、世界を統一し、ついには天界の法すらも「安眠」のために書き換えてしまいました。


未来の自分までニートに叩き落とし、全宇宙を「強制休日」に追い込んだ彼女は、今、銀河の裏側でようやく念願の「五世紀にわたる二度寝」に入ったことでしょう。


・リリアーヌ:ついに……ついに静かになったわ。おやすみなさい。

・カイル:聖女様が「永遠」になられた! 我らも彼女の夢を壊さぬよう、永遠に世界を平和に保ち続けよう!

・邪神&魔神:主が起きるまで、この宇宙を全力でガードするぞ。


……リリアーヌが望んだ「静寂」は、最強の信者たちによる「完璧な世界管理」によって守られることになりました。本人の意図とは180度違いますが、これもまた一つのハッピーエンド(?)ということで……。


本作はこれにて【完結】となります!


もし、「リリアーヌのゲス顔がまた見たい!」「勘違いの続きを妄想したい!」

と思っていただけたなら、最後にぜひ【ポイント評価】と【ブックマーク】で、

彼女に「退職金(金貨)」を授けてあげてください。

完結ブースト、お待ちしております(笑)!


また別の物語、別の「愛すべき駄目人間」の物語でお会いしましょう。

本当にありがとうございました!!

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