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四十七個の宝玉  作者: 黒灰 賢二郎
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 本間 光一 side



 俺達は、異世界転移者の真実を世間に伝える為に防人達を取材していた。


 「そんな・・・なんで・・・なんなんだこれは!」


 まだ成人してもいない十五歳の少年が泣き叫び、苦しんでいる。


 こんな結末、ないだろう!


 俺は、涙を止める事が出来なかった。ジャーナリストとして失格だ。


 だがそれは、悲しさだけではない、同情したからではない。


 悔しかったからだ。


 俺は戦場にも同行し、取材した事がある為、この程度の事で感情が揺さぶられる事など無いと思っていた。


 あどけない少年が、無辜の民に向かって銃を乱射する姿や、戦場では鬼のような形相で敵と戦う姿を見せる兵士が、妻や子供といった家族の前で見せる優しい表情に人間とは何なのかと、考えさせられたものだ。


 戦場で戦う者は、自分達の国や自分達の世界を守る為に戦っている。


 だがしかし、この国に召喚された防人達は違う。

 この国やこの世界など、何も関係無いのだ。


 それなのに彼らが犠牲になっている。


 この国の一人の国民として、この世界の一人の住人として、俺達は異世界転移者の犠牲の上で生かされているとしたら・・・・こんな悔しい事はない。


 それも、まだまだ未来のある少年が犠牲になったと思うと悔しかった。


 「間壁君、もう俺達は、これ以上見ていられない。

 君のようなまだ大人になっていない少年に、こんな苛酷な現実を押し付けた人間が許せない!

 必ず、この事は世界中の人々に伝える。二度とこんな事が起きないようにしてみせる!」

 

 俺はそのまま転移の間を感情を押さえきれず、勢いをつけて飛び出した。


 梶谷も後ろで彼らに何か言っているようだったが、よく聞こえなかった。



 


 そのまま玉制塔を出ようとした時、佐竹隊長の部隊と情報部の制服を着た数人の集団と出会った。


 俺は転移の間を出た時の勢いのまま、佐竹隊長に詰め寄った。


 「佐竹隊長、送還の儀は無事終わりましたよ、間壁 草太を除いてね!

 軍は、この国はこんな事をずっと繰り返していたのか?

 この事は、絶対に世界に報じる、絶対にね!」


 俺が怒鳴るように宣言すると、佐竹隊長ではなく、情報部の制服を着た男が声をあげて俺に詰め寄ろうとした。


 「貴様、佐竹隊長がどんな思いで妖魔討伐に赴いていたのか知らないくせに!」


 だが、佐竹隊長は「やめろ!」と言って詰め寄る男に制止をかけた。


 「我々、国防軍が誤った方向に進んだ事は理解している。

 だからこそ、あなた方の成果に期待している」


 佐竹隊長の以外な言葉に俺は次の言葉を発せられずにいた。


 後から思えば俺はこの時、佐竹隊長の持つ雰囲気に甘えていたんだと思う。


 佐竹隊長は軍人と言うより、何人もの教え子を巣立たさせた熟練の教師、のような雰囲気を持っている人物だった。


 その佐竹隊長が持つ雰囲気に感情的な言葉をぶつけても許されると、甘えていたのだとこの時は気づかなかった。


 「外は援軍が来て、テロリスト達をほぼ制圧したが、まだまだ危険がある。

 護衛の兵士をつけよう。

 必ず、あなた達の使命を全うしてくれ」


「・・・・・」


 俺は佐竹隊長の気遣いに何も言えなかった。


 佐竹隊長を見ると転移の間の方向を見ていた。

 その目は悲しさを湛えていた。







 その後、玉制塔を無事、脱出出来た俺達は、世界に向けて今回取材した内容を発表しようと編集作業に勤しんだが、ある決定的な証拠をつかめずに足踏みしていた。


 実は間壁 草太がカウンセラーの吉川を追い詰めた時聞いた、加賀 アスミの「防人様達に最後の宝玉を使わせた」と言う証言以外、過去の防人達から宝玉を不当に搾取していた証拠が無いのだ。


 俺達は追加取材をしたり、捕らえられている吉川に面談をしたりするが、政府関係者や軍の上層部は口が重く、吉川は何も喋らない。

 きちんとした証拠や証言が無いと責任が追及出来ない。

 俺達は暗礁に乗り上げて動けない状態が続いた。


 そんな時、俺達を訪ねる人物がいた。

 その人物は、玉制塔で俺に詰め寄った情報部の者だった。


 男は私服で、名前すら名乗らなかった。

 黙ったまま映像が記録されているらしき、媒体を差し出した。


 「これは何だ?」


 「視れば分かる」


 それ以上何も言わない。


 俺はそのデータをパソコンに繋げ、ウィルスが無いかチェックし、内容を開いた。


 その内容は驚きべき物だった。

 先代防人が最後の宝玉を使わされ、呆然とした表情で体を崩壊させてゆく映像だった。

 音声に吉川らしき笑い声が入り込んでいる。


 これは、この国が宝玉を不当に搾取していた証拠だ。


 何故、このような物をこの男はここに持ち込んだのか、疑問に思い、質問してみる。


 「あんた、何故こんな物を俺達に渡すんだ?」


 男は、ジロリと俺を睨み、静かに口を開いた。


 「俺達、国防軍の者がどんな思いで妖魔討伐の任務についていたかわかるか?」


 その後、男が語った内容はこうだ。


 元々、政府上層部も軍上層部も異世界転移者を召喚する事に消極的だったらしい。

 どちらかと言うと、宝玉の力を再現出来ないかを研究するために玉制塔を建設し、宝玉の力をこの国の恒久的な武力とする事が目的だったらしい。


 しかし、宝玉の力は再現出来ず、ただ防人を召喚し、研究用の宝玉を出させて元の世界に送り返すことが続いた。


 状況が変わったのは村田が妖魔対策局の局長に就任してからだ。

 村田は縁故のコネを使い、局長に就任すると宝玉を権力者達に献上した。


 そのせいで村田の発言が軍の中や政府に対して力を増した。


 そして防人達を洗脳紛いの技術を使って不当に扱い、自分の欲望のために宝玉を出させ続けた。


 そんな状況を変えたいと佐竹隊長の元部下達が集い、村田の弱みを探っていた。

 そして村田とジョニー・カーラントの繋がりに嗅ぎつく。


 しかし、村田は自分の危機を察したのか失踪してしまう。


 そして今回の事件だ。

 

 「俺は、まだ軍に入りたての頃、佐竹隊長の部隊に配属された。

 佐竹隊長には軍人のいろはを徹底的に教わったよ。

 そんな時に部隊全体が妖魔対策局に配属になった。

 しかしだ、軍から支給される武器が、自分達の努力してきた事が妖魔に対して何ら無意味だと、突き付けられた悔しさが、命の危険があると分かっているのにそれを命令する辛さがあんたにわかるか!

 俺はずっとそんな佐竹隊長を見てきたんだ。

 そんな俺達を救ってくれたのが防人様達だ。

 彼らは、無理矢理この世界に連れられて来たにもかかわらず俺達に協力してくれた。

 そんな彼らを使い捨ての道具みたいに扱った村田が許せなかった。

 今俺は、情報部に所属しているが、軍にいる以上、奴を糾弾出来ない。

 だから、あんたにこれを持って来た。

 俺達の後悔を、防人様達の無念をあんたがはらしてくれ!」


 男は捲し立てるように一方的に喋ると、その後は何も言わず帰っていった。


 考えてみれば分かる。


 俺達は今回取材しただけでも悔しくて堪らなかった。


 彼らは、佐竹隊長はどれほど悔しい思いをしてきたのか想像もつかない。


 俺達は、佐竹隊長やその部下達、今までの防人達の無念の思いをはらすべく編集作業に没頭した。


 そしてついに、この真実を全世界に公表した。






 世界の世論は一気に変わった。


 政府上層部や軍上層部は批判を受け、ほとんどの者が更迭された。


 だがしかし、いまだに権力者達は宝玉を求めて、隠れて召喚を行う者が後をたたない。


 そしていまだに村田 康弘の裁判は続けられている。

 奴はふてぶてしくも「すべて国のために行った事だ」と無罪を主張している。


 だが証拠も証言もすでにそろっている。有罪は確実だろう。


 ジョニー・カーラントは黙秘を続けた。しかしカーラントは、玉制塔で見せた覇気は全く無く、あの間壁 草太にやり込められてから、本当に負け犬になったかのようだ。 


 そして奴の部下の証言からカーラントは、某国の工作員である事がわかった。


 今、ヤマト政府はその国に抗議している。







 それにしても、あの間壁 草太を思い返すと、凄い人物だったと思う。

 でも考えてみれば、分かるような気もする。


 いつ、発作が起きてもおかしくない心臓を持ち、死の恐怖と戦い続けていたのだ。


 彼の人間性は、そこから生まれたものだろう。


 しかし、最後に見せたあの号泣は、十五歳の年相応のものだった。







 今俺達は、玉制塔のあった場所に来ている。


 そこには、慰霊碑が建ち、これまでの防人達の名前が刻まれている。


 俺達は、梶谷、千秋、俺、三人で来ている。


 千秋はあの後、大変だった。一時期一人で泣いていた。

 しかしその後、加賀 アスミが間壁 草太と一緒なら良かったと、泣き笑いをしていた。


 「ちょうど一年か、俺達は何が出来て、何が出来なかったのかな?」


 と、俺が問うと


 「それが分かるのは、数年先だろうな!」


 と梶谷が返した。


 そして千秋が言う


 「でも、あの子達のお陰で前に進んでいるのは確実よ。

 感謝しましょう」


 「そうだな!」


 こうして俺達は、あの子らがいない未来を思うのだった。



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