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四十七個の宝玉  作者: 黒灰 賢二郎
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 その声がした途端、本間さん達と来た一人の兵士がこちらに銃をむけ、発砲した。

 その弾丸は、僕に向かって飛んで来るはずだった。


しかし、銃が向けられた時には、僕は後ろから突き飛ばされていた。


 慌てて突き飛ばした人物を見る。


 そこには、腹を手で押さえた剛志が立っていた。


 「剛志、お前何やってんだよ!」


 「大丈夫だ、大したことないよ」


 剛志は強がるが、とてもそうは見えない。


 僕は剛志に駆け寄ろうとした。


 しかし、僕と剛志の間に入り込む者がいた。加賀さんだった。


 加賀さんは、僕と剛志の腕をつかむと「こっちへ」と言って物影へと誘導した。


 僕らが物影に隠れる頃には、もう辺りは銃弾が飛び交っていた。


 やられた!


 ジョニー・カーラントは本間さん達の護衛の兵士に変装して、たった一人で紛れ込んでいたようだ。


 もうすでに他の護衛の兵士との間で、酷い銃撃戦が展開されている。


 僕達、転移者や本間さん達を避難させた為だろうか、護衛の兵士達の方が分が悪い。

 敵は一人だというのに、銃声の爆音がすごい。


 しかし突然、爆音がやむ。


 そしてジョニー・カーラントが大声で警告してきた。


 「お前らよく聞け!この塔に爆薬を仕掛けてある。

 これが起動スイッチだ」


 そう言うと、物影から顔を出し、手にスマホを持って現れた。


 「これだ、本物かどうか見せてやる」


 と言うと、スマホの画面をタップする。

 すると「ドン」という一番最初に聞いた爆発音と同じ音がして、グラッとした震動が伝わってくる。

 塔のどこかが壊されたのだろうか?


 ジョニー・カーラントは、スマホを掲げたまま言った。


 「仕掛けた爆薬は、この塔がコナゴナになるレベルの量を仕掛けてある。

 それと、このスイッチと俺の心臓はリンクしている」


 と言うと、服をめくって見せた。

 ちょうど心臓の所にパッドのような物が貼ってあり、そのパッドから電線が垂れている。


 「俺の心臓が止まれば、起動スイッチも入るという訳だ。

 だから絶対、俺に手を出すな!」


 そう言うと、今度は銃を掲げ、僕らの方を向いた。


 「オイ、異世界人共、お前らが持っている宝玉を渡せ!だが安心しろ、お前らが帰る分の宝玉は残してやる。

 一分やる、どうするか考えろ」


 それだけ言うと、後ろに下がった。


 自分自身を人質に交渉するなんて、どれだけいかれてるんだ!


 僕らは、すぐに集まった。その中に加賀さんもいる。


 ジョニー・カーラントは、宝玉を渡せと言った。だが、僕らは帰る分だけの宝玉しかない。


 どうすればいいか、悩んでいると、


 「スキさえあれば、私が仕留めるのですが!」


 と加賀さんが言った。僕は聞き返す。


 「え、どうやって仕留めるんですか?あいつの心臓を止められないということは、生け捕りですよ!

 武器を持っている相手にそんな事出来るんですか?」


 「実は、私は軍人ですが、人を殺した事はありません。

 人を殺す覚悟が無いものですから、戸田さんに頼んで麻酔弾しか入ってない銃を準備してもらったのです」


 と、大型拳銃を見せた。


 だからその大きさの銃なのか!


 「だったら僕が時間を稼ぐよ、加賀さんはその間に回り込んで!」


 と僕は言った。

 作戦は決まった。すぐに実行に移そうとする。


 すると浩幸が、心配そうに声を掛けてきた。


 「草太、お前、一人で行く気か?

 ・・・・お前がいなくなったら俺・・・」


 「大丈夫!ただの時間稼ぎだから、上手くやるよ」


 クラスメートのみんなを見渡すと誰もが、僕に「行くな!」と言う視線をあびせるが、僕はそれを無視して足を踏み出す。


 僕は、びびったふりをして(実際もびびっているけど)カーラントの前に立つ。


 「ごめん、宝玉に余裕があるのは僕だけなんだ。僕の分だけで勘弁してくれないかな!」


 と、時間稼ぎの交渉のふりをする。


 「何故、お前しか持って無いんだ。他の奴はどうした?」


 「みんなもう、一個しか持ってないよ、僕は体が弱くて妖魔討伐にあまり参加できなかったんだ」


 と言って、ゴホゴホと嘘の咳をする。


 「お前、宝玉はいくつ持っているんだ?」


 「僕は十四個しか持ってないよ。あ、さっきあんたの部下って奴から一個奪われたから十三個だよ」


 「何、俺の部下?」


 「そうだよ、村田局長とやって来たよ」


 「あの野郎、人んとこの人間を勝手に動かしやがって!それで、野郎はどうなった?」


 「国防軍に捕まってたよ」


 「使えない野郎だ!キャッチフォースはどうなった?」


 「分からない、国防軍が回収したかも」


 本当は加賀さんが見えない所に隠したのだけれども、ジョニー・カーラントは僕のとぼけた答えに「チッ」と舌打ちして少し考え込んだ。


 とその時、僕の視界に加賀さんが映り込む。

 カーラントの左後ろだった。


 加賀さんが頷く。


 「あのさあ、やっぱりあんたには宝玉はやれないよ!実は一個しか持って無いんだ!」


 と言って射線にかぶらないように、カーラントの左側に倒れるように跳んだ。


 パン、パンと二発の銃声がして、目の前にカーラントが倒れ込んだ。


 加賀さんが素早くカーラントに近付き、スマホを蹴飛ばす。

 スマホは僕の方に飛んで来た。僕はそれをキャッチする。


 カーラントは、意識があった。


 「てめえ、俺が死んだら「安心して下さい、これは麻酔弾です」・・・何故そんな物が?」


 加賀さんが、ジョニー・カーラントの言葉にかぶせ、カーラントが聞き返す。


 「私、人を殺す度胸が無いもので!」


 「・・・・・・」


 加賀さんが言い返すとカーラントは、絶句していた。


 すぐに護衛の兵士達が駆け付け、ジョニー・カーラントを拘束する。


 カーラントはまだ意識があった。そして加賀さんに向かって


 「最初に気付いたのもお前だったな、完璧に変装していたはずだ。何故気付いた?」


 と質問してきた。


 「私は、ムーンチャイルドです。私の特性は記憶力、あなたの変装パターンを何種類も覚えました」


 と加賀さんが答えると


 「何が記憶力しか能が無いだよ!あの嘘つき野郎め!」


 と村田を罵っていた。


 そうこうしていると後ろで


 「剛志、しっかりしろ!」


 と言う声が聞こえた。浩幸の声だ。


 僕はすぐに剛志の下に向かった。


 剛志は脂汗をかき、目がウツロの状態だが意識はあった。

 でも、かなりの血が流れている。危ない状態だ。


 しかし、僕にはあてがあった。 

 すぐにカーラントの下に戻り、言った。


 「オイ、今すぐキャッチフォースの中の宝玉の取り出し方を教えろ!」


 「ヘッ、俺が撃ったガキが死にそうなんだろ?残念だったな、あの中にはもう宝玉はねえよ!

 あるのは、宝玉が変化した霊力の塊だ」


 「嘘だ!宝玉と霊力は違う力のはずだ!」


 僕は叫んだ。しかしそこに割って入る者がいた。


 「宝玉は突き詰めると霊力の塊なんです」


 と加賀さんが悔しそうに言った。


 「過去に宝玉を確保しようとした実験がありました。しかし、ことごとく失敗し、最後は宝玉が霊力に変化したと報告されています。

 あの機械も霊力に変化させて溜め込めるようにした物だと思われます」


 「嘘だ!そんなはず、そうじゃないと剛志は!」


 隠していたキャッチフォースを引っ張り出し、それを開けようとした。


 しかし・・・・


 「オイ、やめとけ、それを開けたらここら一帯が、何も残らなくなるぞ!

 俺は、それを使ってテロを起こしたから間違いねえ」


 と、カーラントが僕に警告する。

 僕は絶望のあまり、その場に座り込んでしまった。


 しかし、現実は容赦しない、浩幸の声が聞こえる。


 「剛志、オイ、目ぇ閉じるな!草太、こっちに来てくれ!」


 僕はすぐに立ち上がり、剛志の下に向かう。


 剛志の怪我の状態をみる。


 怪我の位置は腹部の右側、みぞおちの横だ。

 理科室の人体模型を思い出すと、そこは肝臓の位置だった。


 肝臓は、人間の重要器官の一つだ。

 そこを銃弾は、ぐちゃぐちゃに破壊していた。


 外は救急車とかこれるだろうか?

 僕らが剛志を担いで病院とか行けるだろうか?


 すぐに外の状態を見てきた本間さんに相談した。


 「無理だ、とても怪我人を連れて歩けないよ!」


 本間さんの答えは否だった。


 では、転移してから病院へ連れて行く?

 無理だ!転移する場所は来た時の場所、すなわちトンネルの中だ。

 病院までは、距離がある。とても間に合わない。


 剛志を助けられない。


 でも・・・・・、一つだけ方法がある。


 「剛志、目を開けてくれ、僕だ、草太だ」


 剛志はゆっくり目を開けて、僕に言った。


 「よう、草太、こんなの大した傷じゃないからさ、さっさと元の世界に帰ろうぜ!

 帰ったら勉強しないとな、お前と同じ高校目指すの、大変なんだぜ!」


 と力無く笑った。


 僕は、剛志の笑った顔を見て覚悟を決めた。


 「剛志、悪いけど、僕は高校には行かないよ、行くのは剛志だけさ、剛志とはここでお別れだ」


 それだけ言うと、加賀さんに向かって言う。

 僕がやることを知ったら剛志は、反対するだろう。


 「加賀さん、剛志に麻酔弾を撃って!」


 「え、しかし・・・何をするつもりですか?」


 と、聞いてきたがろくに説明せずに、加賀さんを説得する。


 「何も聞かないで!早くしないと剛志が死んじゃう、急いで!」


 「ですが・・・・」


 と、まだ戸惑っている。


 僕は埒が明かないと、銃を取り上げようとしたら


 「分かりました、撃ちます」


 と、やっと剛志に銃を向ける。

 すると、浩幸が


 「オイ、草太、何やってんだよ!」


 と、僕に食って掛かるが僕は無視した。


 パン、という音と共に剛志の体が揺れる。太ももの辺りを撃ったようだ。


 剛志はまだ意識がある。


 「剛志、疲れたろ、もう休めよ、ほらいつも言ってる挨拶があるだろ、あれ言って早く寝ろよ」


 「お前、何言ってるんだ?さっきのお別れってどういう意味だ?」


 剛志は朦朧としながらも聞いてきた。

 でも僕はそれには答えない。


 「剛志、もういいんだ、ゆっくり休んでいいんだよ」


 「お前、起きたら説教だからな、分かったよ、おやすみ、そして、ありがとな(・・・・・)


 やっと言ってくれた。


 剛志は、ゆっくり目をつぶった。


 僕は、剛志の挨拶に答える。


 「うん、おやすみ、そしてありがと(・・・・)、ずっと一緒にいてくれてありがと(・・・・)、いつも声を掛けてくれてありがと(・・・・)、気遣ってくれてありがと(・・・・)、家族でいてくれてありがと(・・・・)


 言い出したらキリがない感謝の気持ちを途中で止める。


 そして立ち上がり、宝玉を収縮する。

 体が輝き始めた。







 浩幸が騒ぎ始める。


 「オイ、草太、まさか、やめろよ、将、お前も止めろよ!」


 でも、将は黙って動かない。じっとこっちを見ている。






 そして宝玉が出来上がる。


 浩幸が僕に詰め寄ろうとするが、将が押さえてくれた。


 僕は、ゆっくりと剛志の体に宝玉を向けた。


 剛志の体は宝玉を受け入れ、一瞬輝き、光りが治まる。そして銃弾で破壊された腹部は綺麗に治っていた。

 だが、剛志は麻酔弾の影響で目を覚まさない。


 クラスのみんなは、僕がやることを黙って見ていてくれた。




 それが、ありがたかった。








 僕は宝玉を失くした。


 普通なら体が崩壊するのだが、今は満月のお陰で保っていられる。


 僕は、みんなの方を向いて声を掛けた。


 「さあ、みんな、元の世界に帰ろう!」


 そしてにっこり微笑んだ。


 みんな、何も言わない。将や浩幸を見ると、唇を噛み締めている。


 他のみんなも似た表情だ。







 「へっ、お前は帰れないじゃないか!」


 そう言ったのはジョニー・カーラントだった。


 「お前、宝玉がもう無いんだろ!他人の為にバカな奴だぜ。

 俺なら苦しまねえように、トドメを刺すがな!」


 それは、カーラントの価値観だろう。


 しかし、僕は違う。


 「僕はあんたと違うよ、僕の命は、僕のものじゃない!僕を生かしてくれた人達のものだ!僕は、その人達に命を借りていたんだ。

 今、その命を返しただけさ」


「命を借りてる?バカな事を言う奴だ。

 自分の命は自分のもんだ、お前はただの犬死にだ!

 そして死んだ奴は負け犬だ、何も残せやしない」


 「違うね、僕は命を繋いだ。犬死にじゃない!

 僕が生きて繋いだ命の(あか)しがここにある」


 そう言って剛志を指差す。


 「僕は死んでも、繋いだ命は残る。

 あんたは、たくさんの命を奪っても何も残せない!」


 カーラントは、黙って僕を睨み付けてくる。

 しかし、さらに僕は続ける。


 「あんたは、麻酔でもう眠るだろ?そして起きた時は牢獄の中で、次は絞首台の前さ、さらに次は地獄だろ?

 勝ったのは僕で、負け犬はあんたさ!」



 カーラントは悔しそうに僕を見ていたが、二発も麻酔弾を受けているのだ、限界だったのだろう、意識を失うように眠りについた。


 僕は加賀さんの方を向いて言った。


 「加賀さん、【送還の儀】やろうよ!」

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