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何か反撃を、と思うが宝玉は吸収されて終わりだし、唯一の宝玉以外の攻撃手段である、加賀さんの銃は、加賀さん自体が敵の連続射撃で頭も上げられない状態だ。
仲間が次々と倒されていく中、僕は冷静さを失わないように努力しながら、何か出来ないか考える。
攻撃ではなく防御なら、あのキャッチフォースに向けなければ、宝玉は吸収されないだろう。
しかし、かつて宝玉を攻撃ではなく、防御に使ったという例は確か無かったはず。
しかし一か八かでやってみる価値はあるはずだ。
心の中で、やると決める!
目標は、僕らの周りを村田達の攻撃が当たらないように防護壁を造る事だ。
イメージは子供の頃、アニメで視たバリヤだ。
力を練り、宝玉の力を収縮していく。
それを見ていた剛志が驚いて、僕に忠告する。
「宝玉を使っても、奴らの道具に吸収されて終わりだぞ!」
「大丈夫!ちょっと見てて!」
剛志にもろくに説明せず、宝玉を造り出した。
出来た宝玉を僕らと村田達の間に投げた。
「ハハハハ、バカめ、しびれを切らして宝玉を使いおったわ。あれを吸収しろ!」
と村田が命令し、キャッチフォースを持っている男が前に出て宝玉に向ける。
しかし宝玉は、その手前、僕ら側の方で地面に落ちた。
そして光りの拡散、収縮が起こり、光りが収束した時、半透明の膜のような物が出来上がっていた。
「何だこれは、クソ、こんな物!」
村田は急に現れたバリヤの膜に腹を立て、自動小銃を連射して膜を壊そうとするが、バリヤの膜は傷すら付かない。
「これを狙ってたのか!」
剛志が聞いてきた。
「うん、子供の頃視た、アニメのバリヤだよ」
「すげえ、よく思い付いたな!でもよ、これで反撃とか出来ないか?
昔視たアニメの中であったよな!」
確かに、そんなアニメの映像を視た記憶がある。
でも一度、実行した宝玉の効果は変える事は出来ない。
しかし、重ねがけて宝玉を使えば、可能のような気がする。
僕達は今、攻撃の手段が無い。いずれ宝玉の効果は無くなる。
そうなれば、また村田達にいいように攻撃されてしまう。
だったら今の内に反撃して撃退した方がいい。
しかし、宝玉の数は有限だ。
元の世界に帰る為の分と、クラスメートの怪我を治す分を考えて使わなくてはならない。
「剛志、攻撃が出来るようにするには、また宝玉を使わないていけない!だけどみんなの怪我を治したり帰る分の宝玉の数も確保する方が先だろ?
必要な数を数えて使わないとダメだ」
「私も手伝います!」
剛志と話していると、後ろから加賀さんが声をかけてきた。
彼女は、擦り傷程度の負傷しか負っていなかった。
心の中で少し安心していたが、顔には出さず
「加賀さん、ありがとう、じゃあお願いしますね」
と言って近付き、加賀さんにだけ聞こえる小さな声で
「無事で良かった!」
と呟いた。
加賀さんは、一瞬嬉しそうな顔をしたが、すぐに真面目な顔になり早速、怪我人の状態を診ていった。
僕も剛志も手分けして、調べていく。
その時に、みんなに「必ず戻ろう」と声を掛け合いながら、励まし合った。
全ての必要な宝玉の数が、分かった。
僕が持っている帰還用以外の宝玉全てと、僕以外の複数の宝玉所持者の帰還用以外の宝玉の数の合計で、余裕が一個しか無かった。
しかし、僕は余裕が一個あるだけでも良かったと思う。
もし、足りなければ、と思うとゾッとする。
「先に反撃に使おう!バリヤがいつまでもつか分からないからね」
「おう、そうだな!」
「その方が良さそうです。防御に宝玉を使った例が無いので、いつまでもつか未知数です。
しかし、よくこんなことを思い付きますね」
三人共、反撃を先にする事に賛成だが、加賀さんにまた感心されてしまった。
少し、恥ずかしい!
気を引き締め直して、宝玉の力を収縮していく。
今度は、バリヤはバリヤでもトランポリンの膜のような、何かがぶつかってきたら、その力を吸収し、跳ね返すようなイメージを強くもった。
そして造り出した宝玉をバリヤにぶつけようとする。
村田は、僕が宝玉を造ったのを見て、バリヤを強化すると思ったようだ。
「クソ、この膜を強化されるぞ!強化される前に壊せ!」
と叫んで、さらに銃弾を浴びせ、手榴弾を投げつけた。
彼らが攻撃の数を増やしたのを見て、僕は黙ってほくそ笑み、宝玉をぶつけた。
すると、先程と同じように光りが拡散、収縮し収束する。
そしてバリヤの質が変わった。
バリヤの質が変わった途端、バリヤの膜がゴムのように伸び、銃弾の力を吸収した。そして伸びが戻り、弾丸や手榴弾をはじき返す。
弾丸や手榴弾は、正確にそれを発射した人物へ返って行く。
村田と来たテロリスト達は、軍事訓練受けている。
だから彼らは銃をちゃんと脇に挟み、狙いを付けて銃を撃っていた。
その撃った弾は、正確に返っていった。つまり、狙いを付けていた眼球か銃そのものへ。
その為、彼らは一発で即死か銃を破壊され、その衝撃でその場に倒れる。
さらに手榴弾まで降ってきて・・・・後は想像にまかせます。
しかし、運がいいやつはいるもので、村田は訓練など受けていない。だから銃の撃ち方も適当だ。
だから弾も適当に返っていく。
「ギャー、痛い、なんだこれは!」
「ギャー、何で、私まで!」
適当に返って来た弾は、適当に村田と西脇の手足を撃ち抜いた。
二人は手足を動かせなくなり、その場でのたうち回っている。
僕らは、テロリストの末路に一瞥だけして、仲間の怪我の回復にあたった。
テロリストの末路などより、クラスメートの方が大事だ。
一人一人に宝玉の力で怪我を回復していく。
その途中でもちろん、浩幸の回復もする。
「浩幸、お前、随分無茶したな!」
「まあね、少しは見直したか?」
「おう、すげえ、見直した!女子二人をかばうなんて、やるじゃん!」
「へへへ、これで少しはモテるかな?」
「どうかな?助けたのが一人だったら確実だったのにな!」
「バカヤロー!あの場でどっちか一人なんて、選べる訳ないだろう!」
「僕も同じ立場になったら選べないよ。だけど、そういう立場に立ってしまうのが、モテないやつの宿命かもな!
ということで諦めろ」
「グッ、草太ぁ、俺もうすうすは感じてたんだよ、モテないやつの宿命を!
頼む、助けてくれ」
「無理だな」
「そこをなんとか」
「ダメだ」
「オイ、ソーター・・・・」
無理矢理、腕を振り切り、その場を逃れた。
浩幸、ガンバ!
その後、全てのクラスメートの回復、治療が終わった。
僕の持っている宝玉は一つになった。これはクラスメート全員同じで、一つだけ持っている状態だ。
つまり、全員が帰還する為の宝玉しか持っていないということだ。
そして、僕の作ったバリヤが効力を失い消滅した。
僕らは、村田達の様子を確認しに行く。
テロリストの惨状にクラスのみんなは、顔色を悪くしている。
村田と西脇は、相変わらずのたうち回っている。
そして僕らの存在に気付くと
「お前ら、今すぐ、宝玉を使って俺を治せ!」
相変わらず、ふざけた事を口走っている。
「オイ、変な生き物が変な事を言っているぞ!」
浩幸が、さっきの鬱憤をはらすかのごとく、毒舌を披露している。
みんなで見下ろす。
そのなかに加賀さんもいた。
「村田元局長、あなたは、反逆罪、および背任罪、その他の罪も含めて容疑者となっています。
その罪を認めるのなら治療する事も出来ますが、どうしますか?」
これは、加賀さんなりの最後の優しさだった。
しかし、村田の返した言葉は
「ふざけるな!俺はまだ局長だ。お前は部下だ。
上官の命令は絶対だ!俺の命令を聞け!」
「そうですか、もうすぐ憲兵隊と、情報部の者達がやってきます。
弁明はそちらにお願いしますね」
加賀さんは、もう村田には目も向けなかった。
そして僕達の方を向いて
「防人の皆様、私の元上官の村田が大変迷惑をかけた事、村田に代わって深く謝罪します」
と言って、深々と頭を下げた。
加賀さんが頭を上げた時、塔の外から声が聞こえた。
「防人様、秘書官、無事ですか?」
声の主は佐竹隊長だった。
佐竹隊長は僕達の存在を確認すると、すぐ近くに駆け寄って来た。
その後ろには、制服違いの者達がたくさんいた。
この人達が多分、憲兵隊や情報部の人達だろう。
彼らは、村田達の姿を見付けると、口々に言った。
「第一級犯罪者、村田 康弘、西脇 梨香を確認しました」
「第一級犯罪者、村田、西脇両名を確保!」
憲兵隊の人達は、村田と西脇の銃で撃ち抜かれた腕を捻り上げ、手錠をかけた。
「なんだ貴様ら、俺を誰だか分かってやっているのか!
第一級犯罪者だと、ふざけるな!
あがっ、痛い、離せ!」
「何で私が犯罪者なのよ!手錠外しなさいよぉ!痛い、痛い!」
二人は、憲兵隊に抗議するが、耳を貸す者は誰一人としていない。
もし加賀さんの言う事に耳を傾けていれば、憲兵隊にも情報部の人達にも加賀さんが、取り直してくれただろうに。
こうして二人は、憲兵隊に連れて行かれた。
加賀さんは、連れて行かれる二人を黙って見ていた。
その目は、すごく悲しそうだった。
その加賀さんに佐竹隊長が声をかける。
「変わりますよ、秘書官!これから先は、妖魔対策局は変わります。
あなたのお陰です」
「そんな、私は何もしていません。防人様達のお陰です」
「全く、上官らしい口をきいて下さい、とお願いしているのに、直りませんね。
その防人様を導いたのが、あなたでしょうに」
そう言った佐竹隊長の目は、すごく優しかった。
何となく、親が子供を見る目のような気がした。
羨ましかった。
僕には、向けられた事の無い目だ。
いや、ある!あれは、剛志や将、浩幸にも!
最近は、クラス中のみんなから向けられたような気がする。
親愛の情がこもった目なんだ。
そうか、そうだったんだ!
みんな、ありがとう。
一人納得し、みんなに感謝していると、佐竹隊長が加賀さんに提案する。
「秘書官、敵の数がかなりいます。今は味方の増援があったお陰で盛り返していますが、それでも永く持ちません。
我々が外を押さえている間に【送還の儀】を行い、敵の目的を無くしてしまいましょう」
それだけ言うと、佐竹隊長は部下を引き連れ、外へ出て行った。
すでに七時三十分は過ぎ、満月は上がっている。
いつでも儀式は行える状態だ。
とそこへ、佐竹隊長達と入れ替わるように本間さんと梶谷さんが数人の警護の兵士と共にやって来た。
「みなさん無事でしたか?良かった!
中も酷いですね、ですけど外はもっと酷いですよ。
まるで地獄に来ているようだった」
本間さんが声をかけ、梶谷さんがカメラを回している。
「外は、そんなに酷いのですか?」
加賀さんが質問した。
「ええ、酷いもんです。
ジョニー・カーラントはいったい、どこからこんな部隊を準備したのか、疑問が残りますね」
「その当たりの情報も全くありませんでしたから国防軍が、後手に回るのも分かります」
「本間さん達は、大丈夫だったんですか?」
今度は、僕が質問した。
本間さん達は、ずっと取材を続けたかったらしいが、危険度がかなり高い、と一時期僕らから離れていたのだ。
「ああ、俺達は、国防軍の後方にいたからそこまでは。今は大分、こちらが優勢だよ。
情報部の人達が、ジョニー・カーラントをやっきになって追っているみたいだ」
「ジョニー・カーラントも来ているんですか?」
「目撃情報は、あったらしい」
ジョニー・カーラントも来ている!
僕は、何か嫌な予感がした。
みんなそろって転移の間に移動しようと、していた時だった。
「ジョニー・カーラント!」
それは、加賀さんの声だった。




