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四十七個の宝玉  作者: 黒灰 賢二郎
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 加賀 アスミ side



 懸念していた事が現実となりました。

 あの吉川カウンセラーが、サブリミナル効果のある映像を使って、防人様を洗脳しようとしたのです。


 しかし、間壁様の働きや戸田さんが紹介してくれた本間さんや梶谷さんのお陰で、吉川カウンセラーの洗脳計画を阻止する事が出来ました。


 吉川カウンセラーが連れて行かれる時、私は彼に尋ねました。


 「毎回、防人様の最後の宝玉を使わせた時、あなたも関わっていたのではないですか?」


 私は、どうしても確認したい事がありました。


 それは、映像で何度も視た防人様の最後のシーンでした。

 防人様が悲しそうな目を向けながら、体を崩壊させていく。


 私は、視る度に涙が溢れました。最後は直視する事が出来ず、顔をおおってしまいます。


 その時に流れ、聞こえてきた笑い声が、吉川カウンセラーの声にそっくりだったのです。


 ムーンチャイルドとして記憶力がいい私は、その笑い声を忘れようとしても忘れられないのです。


 「そうだよ、俺が最後の宝玉を使わせたんだ!

 局長の指示でな。あのひとは異世界人は、どうでもいいんだとよ!俺もいろいろと遊んでやった。

 やつらが最後の宝玉を使った後によぉ、洗脳を解いて本当の事を教えてやるんだ。

 やつらの絶望の顔、最高だったぜ。ハハハハ・・・・グハッ」


 「もういい、連れて行け」


 私は、吉川カウンセラーの言っている事を聞きながら、目の前が真っ暗になっていくのを感じていました。


 吉川カウンセラーの言葉が聞こえているのに、意味が理解出来ません。

 最後の方は全くわかりませんでした。


 暗闇の中に閉ざされてしまったような感覚でした。


 しかし、暗闇の中に声が聞こえました。


 「加賀さん、大丈夫ですか?」


 間壁様の声でした。

 その声で自分を思い出します。


 そして、吉川カウンセラーが言った事も思い出しました。


 「酷いです。あんまりです、みんなこの世界に、この国につくしてくれたのに。

 私が、私がちゃんと見ていれば助けられたかもしれない」


 私は、今までの防人様達の事を思い出していました。

 そして彼らの最後の映像を思い出し、自責の念が一気に吹き上がります。

 それと同時にまた暗闇が襲いかかってきました。

 私はまた、暗闇に閉ざされてしまいました。


 しかし私の体をがっちりと、でも優しくつかんで受け止める存在を感じました。


 そしてまた声が聞こえます。


 「加賀さんのせいじゃない、自分を責めないで!

 加賀さんのお陰で僕らは助かったじゃないか!

 加賀さんがいなきゃ、僕らはあの村田にいいようにされていたんだ。

 加賀さんは恩人だよ!」


 彼の言葉が、光りとなって私の中の闇を打ち払っていきます。


 そして間壁様の顔が見えました。

 私は、間壁様の胸を借りて泣きました。


 涙が流れる度に暗闇が流れていくような気がしました。

 そして暗闇が流れた分、間壁様の温もりが私の中に入ってくるのです。


 ひとしきり泣いた後、気付きました。


 私、間壁様に抱き締められている?みんなの前で!


 一気に顔が真っ赤になりました。


 「申し訳ありません、見苦しいところをお見せしました」


 私は、それだけ言うのが精一杯でした。


 ものすごく恥ずかしい!穴があったら入りたい!


 そんな私を戸田さんが、引っ張っていきます。


 そして


 「アスミ、グッドよ!その調子であの子を落としてしまいなさい」


 と、とんでもない事を言い出します。


 そこへ、女性の防人様達がやって来ました。

 私を取り囲みます。

 私に次々と質問と祝福の言葉がかけられます。


 「ねえねえ、いつから、間壁君と?」


 「私、二人はすごくお似合いだと思う」


 「ウワーッ、二人で幸せになってほしい!」


 「ねえ、だけど間壁君が元の世界に帰ったらどうなるの?」


 「あ、そっか、これはまた辛い選択だわ!」


 「間壁君が残る?室田君が許さないでしょ」


 「だったらアスミンが、ウチらの世界に来ちゃいなさい!」


 また、とんでもない意見が飛び出しました。


 私が世界を渡って、間壁様について行く?


 少し想像するとドキドキします。そしてワクワクしました。


 過去、宝玉を使ってこちらの住人が世界を渡った、という記録は残っています。出来ないわけじゃありません。


 だけど、ダメです。私は永く生きられません。

 廻りの人に迷惑をかけるだけです。


 彼女達の言葉に頭がぐるぐる回ります。


 そんなこんなしていると、本間さん達がやって来ました。


 「加賀さん、ドキュメンタリー番組の制作、いけそうですか?」


 その言葉で思い出しました。

 戸田さんを通じてマスコミ関係者と接触しようとして、本間さんを紹介されたのでした。


 しかも戸田さんの彼氏だといいます。


 私は、本間さんの期待に応える為、防人様達に呼び掛け、協力してほしいと訴えました。


 マスコミを通じて防人様を国民に紹介していけば、防人様の立場も守られるようになります。


 防人様達は、すぐ話し合い、本間さん達を快く迎い入れてくれました。






 

 その後は、順調に防人様も私も国防軍の兵士達も、仕事をこなしていきました。


 それと同時に異世界転移の情報を集めました。


 防人様達も集めていますが、私も集めないといけません。


 特に私は、過去にこの国が行った【送還の儀】を詳しく調べました。


 そんな事をしている私に、憲兵隊と情報部の者達が尋ねて来ました。

 彼らから聞かされた内容にびっくりしました。


 なんと、村田局長が失踪した、と言うのです。

 しかも、西脇秘書官を連れて!


 吉川カウンセラーが白状した事で局長まで手が回りそうですが、局長ならのらりくらりとかわして逃げ延びるだろう、と思っていました。


 あの人は、そういったところは、しぶといのです。

 だから失踪するなんて考えられませんでした。


 しかし、情報部の者からさらに驚きの情報を聞かされたました。


 「村田 康弘はどうやら、テロリストのジョニー・カーラントと繋がっていたようだ」


 「そんな、まさか局長がそんな事を!」


 「君も知っているだろう。昨年の暮れに起きたテロを!」


 「しかしあれは、宝玉を使ったものではなかったはず」


 「いや、直接は使わなかったようだが、宝玉を何か別の物を経由して使った可能性がある、と現地の警察は考えているらしい」


 「まさかそんな、宝玉をテロに使うなんて!」


 昨年の暮れに起きたテロ、それは世界でも治安良いと言われるある国で起こりました。


 死傷者三百人以上という大惨事を引き起こし、世界中の人々を震撼させました。


 その為、世界中の警察、軍関係者がジョニー・カーラントを躍起になって追っています。


 「ジョニー・カーラントは、宝玉を狙っている可能性がある」


 「やっぱり、宝玉を狙ってこの国に現れた、という事ですか?」


 「その可能性が高い。十分警戒してほしい」


 情報部の者から強い警戒を求められました。


 「それと、村田 康弘だが、最初からジョニー・カーラントに防人を渡すつもりで三十人もの召喚を実行させたみたいだ」


 「え、三十人というのは、村田局長の判断なんですか?軍の上層部の判断ではなくて?」


 「研究班も上層部も村田が説得したらしい。

 それと、今回の防人が十五歳以下なのも村田の指示のようだ」


 「まさか、局長がそんな事まで、あれは西脇秘書官のミスではなくて、ですか?」


 「そのようだ、テロリストに引き渡すのに若年層の方が都合が良かったのだろう」


 私は、愕然としてしまいました。

 局長が、そこまで非道な人間だと思っていなかったのです。


 その後、憲兵隊や情報部も協力するので是非、防人様達を死守してほしい、と言われました。


 私は、最初からそのつもりです。

 今回だけは必ず、全員無事に元の世界へ送り還す。

 これは、私の最終目標です。


 私が、担当出来る防人様は、きっと今回が最後でしょうから。

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