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四十七個の宝玉  作者: 黒灰 賢二郎
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 それからの行動は早かった。


 一人一人、訓練場に連れて行き、本人が一番やりたいことやこだわっていること、大切なことを言って宝玉を形にさせるのだ。


 みんな面白いように洗脳が解けていった。

 でも中には、大切なこと等が分からず苦労した者もいた。


 「浩幸、植村さんがお前の宝玉を見たいそうだぞ!」・・・・・反応が無い。


 そこで剛志が


 「浩幸、俺とお前の宝玉が二個あれば、草太の心臓が治せるぞ!」


 と言って剛志が宝玉を出すと、浩幸は目の色を変えて宝玉を形にしていった。

 そして洗脳は解けた。


 後から浩幸に散々、文句を言われたが、僕は胸が熱くなった。


 浩幸、ありがとう!


 将は、西村さんの事を出すとすんなり解けた。


 だから、お前ら付き合ってるのバレバレだっつうの!


 こうして全員の洗脳が解けると、みんなで集まって対策を話し合った。

 みんな、かなり怒っている。


 「あの吉川って野郎、ふざけやがって!」


 「人を洗脳して、自分の思い通りにしようなんて卑劣だわ」


 「あいつ、みんなでボコろうぜ!」


 みんなが熱くなっているところに栗林さんが


 「まあ、まあ、みんな、気持ちは分かるけど落ち着いて、まず吉川の持って来た物には、私達は近づかない、見ないし、聞かない。

 そして専門家が来るまでは、吉川と接触しないようにしましょう」


 と、言って冷静になるように呼び掛けた。


 僕も栗林さんの意見には賛成だ。

 相手は、どんな手を使ってくるか分からない催眠術師だと思っていた方がいい。

 そんな相手には接触しないのが一番だ。


 みんなでそんな話しをしていると、加賀さんの電話が鳴った。

 加賀さんは、少し話しをすると電話を切って僕達に向き直った。


 「みなさん、やはりあの映像は、みなさんの自由を束縛する為のものだったようです。

 明日、私の知人が専門家を連れてきます。

 その場で吉川カウンセラーを糾弾しましょう」


 加賀さんの言葉にみんな、やる気を見せる。

 僕らは、明日に向けてさらに作戦を練った。


 

 そして翌日、吉川カウンセラーが出勤と同時に僕らと加賀さん、佐竹隊長の部隊が動く。


 吉川カウンセラーをその場で拘束した。


 「いったい、何のつもりですか?」


 吉川は、指揮を取っていた加賀さんに納得がいかないとばかりに問いただしてきた。


 「あなたの持ってきた映像の中から不正なサブリミナル効果のある部分が発見されました。

 あなたは、防人様に対し、洗脳、催眠のたぐいをかけようとした疑いがあります」


 「あれは、リラックス効果を高める為のものだ。素人が勝手に判断するんじゃない!」


 「ええ、ですから専門家に見ていただき、悪意のある映像だとわかりました」


 「いったい、誰が見たんだ。いつ映像を入手した?

 毎回、映像データは持って帰っている。それにそんな事、判断出来るはずがない。

 証拠を持ってこい」


 吉川と加賀さんが言い争うが、加賀さんは専門家ではないので分が悪い。


 と、そこへある人物が乱入してきた。


 「ごめん、ごめん、遅れた」


 乱入してきた人物は、技官の戸田 千秋だった。

 戸田さんの後ろに男性が二人、立っている。

 その男性が加賀さんに話しかけた。


 「遅れてすみません。私は、映像製作会社をやっている本間と申します」


 「同じく、梶谷と申します」


 二人は、名乗りながら名刺を差し出した。そして本間と名乗った方が、吉川の方を向いて加賀さんに尋ねた。


 「彼が、吉川ですか?」


 「ええ、そうです」


 すると梶谷と名乗った方が、吉川に言った。


 「あんた、とんでもない映像を作ったな!」


 「フン、何を素人が言っている。あれは、リラックス効果を「ふざけたことを言うな!俺は映像のプロだ。サブリミナルについてもよく知っている。お前の作った映像は、普通の人間が視れば一発で暗示にかかる危険な物だろうが!」」


 梶谷さんの剣幕に吉川は黙りこんだ。


 「そんな危険な物だったんですか?」


 加賀さんが梶谷さんに質問すると、今度は本間さんが答えた。


 「あれは、相当危険な物らしい。私は、梶谷ほど詳しくはないけどね。

 映像関係にたずさわっている者ならまずやらないし、やってはいけない事だ」


 と言い、吉川を睨み付ける。


 すると吉川は、不貞腐れた態度で言い始めた。


 「全く、随分と気付くのが早かったな。まさか、映像の専門家まで準備するとは、恐れ入ったわ。

 だけど、後一歩、遅かったな!」


 と言った途端、拘束していた兵士の腕を振り切り、胸ポケットに手を入れると、何かの器具を取り出した。


 僕はそれを見た瞬間、叫んでいた。


 「みんな、伏せろ!」


 僕は最初、銃か何かの武器だと思っていた。


 しかし、それは武器ではなく、カメラのフラッシュのような強力な光りを発する道具だったみたいだ。


 僕の声に何人かのクラスメートが伏せたが、ほとんどのクラスメートが間に合わず、光りを見てしまった。


 「よし、光りを見たな!お前ら誰か一人、そうだお前だ。

 こいつら全員、宝玉で吹き飛ばせ!」


 と、吉川が叫んだ。


 しかし、誰一人として動こうする者はいない。


 「ん、何故、動かん?もういい。隣のお前だ、吹き飛ばせ!」


 と、また言う。


 しかしまた誰も動かない。


 そして僕は言った。


 「洗脳ならとっくの昔に解除したよ!」


 「まさか、素人が解除など出来るはずがない!」


 「ああ、僕はあんたの言うところの素人さ。でもね、僕は、あんたなんかより、ずっと、ずううっと、みんなの事を知っているんだ!」


 僕は、体の事でいつもみんなに迷惑をかけている。

 だから少しでもみんなの役に立ちたくて、一人一人をよく観察していたのだ。


 誰が何を好きで、何が苦手か、何を望んでいるか、常に見てきたのだ。

 だから自信を持って言える。


 「だから、みんなの本心に、本能に語り掛けたのさ!」


 宝玉を扱う時は、精神を集中して自分の願いや、思いを強く念ずる。

 だから本能に語りかけて宝玉を使わせると、洗脳が解けたのだ。


 元々、宝玉を使う者は洗脳をかけづらいようだ。

 だから吉川も強い洗脳をかけようとしたのだろう。

 実際、あと何回か映像を見ていたら解除出来るかどうか分からなかった。


 「まさか、そんな方法で俺の洗脳を解くなんて」


 吉川は、愕然と表情で肩を落とした。


 ここで僕らと吉川の対決は、僕らの勝利となった。


 「しかし何で、最初の奴は洗脳が解けたんだ」


 吉川は、納得のいかないという顔で聞いてきた。


 「それはね、僕があんたの映像を視なかったからさ。

 僕はね、剛志からいつも、無理はするな、って言われている。だから映像を視て頭が痛くなってすぐ視るのを止めて耳も塞いでいたんだよ!

 お陰で映像の影響は、ほとんどなかったんだ。

 ついでに後で視れるようにスマホで録画しながらね。

 まあ、そうだな、僕らの勝利っていうより、剛志おかんの勝利って事かな!」


 「おかんって言うな!」


 僕が、どや顔で吉川に説明してやったのに、最後は剛志にツッコまれてしまった。


 吉川は再度、拘束され、佐竹隊長の指示で連行されようとしていた。


 そこに加賀さんが声を掛ける。


 「あなたに質問があります」


 吉川は何も言わず、黙って加賀さんの方を見た。


 「毎回、防人様の最後の宝玉を使わせた時、あなたも関わっていたのではないですか?」


 「そうだよ、俺が最後の宝玉を使わせたんだ!

 局長の指示でな。あのひとは異世界人は、どうでもいいんだとよ!俺もいろいろと遊んでやった。

 やつらが最後の宝玉を使った後によぉ、洗脳を解いて本当の事を教えてやるんだ。

 やつらの絶望の顔、最高だったぜ。ハハハハ・・・・グハッ」


 いきなり佐竹隊長が殴り付けた。


 「もういい、連れて行け」


 佐竹隊長の指示で吉川は連れて行かれた。


 ふと、加賀さんを見ると肩が震えている。

 僕は、心配になって声を掛けた。


 「加賀さん、大丈夫ですか?」


 「酷いです。あんまりです、みんなこの世界に、この国につくしてくれたのに。

 私が、私がちゃんと見ていれば助けられたかもしれない」

 

 加賀さんは、一気にまくし立てるように叫ぶと、今度は自分を責め、泣き始めた。


 この人は優しすぎる、そして自分を責めすぎている。


 僕は思わず、抱き締めていた。あまりに彼女が可哀想だったのだ。


 「加賀さんのせいじゃない、自分を責めないで!

 加賀さんのお陰で僕らは助かったじゃないか!

 加賀さんがいなきゃ、僕らはあの村田にいいようにされていたんだ。

 加賀さんは恩人だよ!」


 加賀さんは僕にしがみつき、しばらく泣き続けた。


 加賀さんが泣きやむと、その場はなんともいえない弛緩した空気が流れた。


 「申し訳ありません、見苦しいところをお見せしました」


 加賀さんは、顔を真っ赤にしてみんなに謝った。


 よくよく考えてみれば僕は、みんなの目の前で女の子を抱き締めてしまったのだ。


 ものすごく恥ずかしい。


 浩幸が僕の所へ寄って来て、言った。


 「お前やるな!いつの間にそんな関係になったんだ?」


 いや違うから、そんな事、聞いてくるな!


 「草太、お前、二股はダメだぞ、二股は!」


 剛志が僕に言ってきた。


 二股なんてしていない!

 宮本さんが好きなのは、剛志、お前だから!


 いい加減にしてくれ!


 僕は廻りに攻められ、謎の葛藤と闘った。


 加賀さんは加賀さんで、戸田さんに何やら攻められいた。


 そんな感じでわいわいやっていると、本間さんと梶谷さんがやって来た。


 本間さんと梶谷さんは、マスコミ関係者でもあるらしかった。

 彼らは、異世界転移者のドキュメント番組を作りたかったようだ。

 

 政府からも打診されていたらしい。

その為、今回協力してくれたわけだ。


 僕らは、初めて聞かされた話しだった。

 加賀さんいわく、この番組を通じて国民に防人達の事を理解してもらえれば、防人の立場を守る事に繋がる為、協力してほしいとの事だ。


 クラスメートみんなで話し合った結果、是非協力しようということになった。

 と、いうのも最初から政府への要求としてマスコミに接触しようとしていたのは、僕達なので、願ったりかなったりだった。


 僕らがこの世界にいる間、彼らが取材していれば、ヘタな権力者も近づきにくい。


 それに彼らは、村田局長のように信用出来ない人間じゃない。

 なんと、本間さんと戸田さんは付き合っているらしい。


 浩幸が本間さんに「こんな女を捨てたような人のどこがいいんですか?」と、戸田さんの前で聞いて蹴飛ばされていた。


 浩幸、お前勇気あるな!


 しかし、加賀さんの知人って戸田さんだったのか!


 彼女の人脈の少なさに心配になった。

 ムーンチャイルドの立場では、信用出来る仲間を作るのは、大変なのだろうとつくづく思った。


 この世界にいる間だけでも彼女の為に力になってあげたいと思う。






  

 その後、本間さん達の取材を受けながら妖魔討伐や不治の病の治療などをこなし、異世界転移の情報を集めていった。

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