表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
四十七個の宝玉  作者: 黒灰 賢二郎
13/25

13

 草太 side



 ムーンチャイルドの話しを聞いて、僕はショックを受けた。


 この世界の人は、人の命を随分と軽く見ているのではないかと思った。

 それとも僕らの世界の権力者達も同じようなもので、僕らが知らないだけかもしれないが。


 そして加賀さんの存在は、僕にとって衝撃となった。


 もう成長しない体、あと数年しかない寿命、そして親、兄弟はいたと言うが一人ぼっちで人質までとられて戦っている。


 見ていてとても苦しそうだ。


 それなのに加賀さんは、僕の事が可哀想だと涙を流し、手を握り締めてくれた。


 なんて優しい人なのだろうかと思った。


 僕は彼女の為に何も出来ない。ただ手を握り返す事しか出来なかった。


 それでも、僕らはなんとなくつながったような気がした。






 それからしばらくして、国民への御披露目パレードと首相との会見があった。


 その前に僕らの要求は全面的に認められた。


 しかし、要求の三つ目の国際機関の監視は、そのような事をする組織が無い為、難しいとの事。

 ただ国連には打診してあると言う事だった。

 それとマスコミについては今後、調整して実績のあるジャーナリストを考えていると言う話しだった。


 今僕らは、一人一人にスマートフォンを持たされている。

 こちらでもスマートフォンはスマートフォンと言うらしい。


 検閲はあるかもしれないが、僕らが情報を入手する分には問題はない。


 パレードと会見は呆気なく終わった。

 首相は人の良さそうな爺さんだった。


 国民の人気取りの為の偶像的な人物かもしれないと感じた。



 そして訓練をしながら妖魔討伐を行う生活が始まった。






 妖魔討伐は、国防軍が最初に出向き、妖魔の出現箇所の廻りを封鎖してから僕らが出向き、対処する。


 妖魔の討伐自体は楽なものだった。


 むしろ現地に向かう時の方がきつかった。

 何時間もヘリに乗せられて現地に着くと、大概ロープで降下となる。


 僕らは三人一組、十班で行動している。

 僕の班は、僕と剛志と宮本さんだ。

 これは女子だけの班があると少し心配だからと男子、女子が交ざるように班分けしたからだ。


 剛志と宮本さんは、訓練のお陰でロープを使っての降下は難なく出来るようになっている。

 でも僕は腕力がない為、毎回佐竹隊長に背負われて降下している。


 かなり恥ずかしい。


 そして、妖魔を討伐するとまたヘリで研修施設へ帰る。

 妖魔が出ない時は、訓練所で訓練だ。宝玉の力を収縮する練習をするのだ。


 妖魔が出る時は、立て続けに出る事が多い。


 僕らは、二十四時間体制で交替しながら事にあたった。遠方に急行する事もある。


 今年の妖魔の出没は、かなり多いらしい。すでに昨年の出没件数を大きく超えているそうだ。


 結構ハードな生活となった。


 その為か、心臓に結構な負担がいっていたみたいだ。僕はダウンしてしまった。


 剛志に血相を変えて飛んでこさせたのは申し訳なかった。結局、数日間僕は寝込む事になった。


 剛志も研修施設に残る、と言い出した時は慌てた。

 僕と宮本さんと加賀さんで説得してやっとヘリに乗った。


 ホント、疲れるよ!


 ベッドに寝転びながら、自分だけサボっているような気がして僕は自分が出来る事を考えた。


 しかし、何も思い付かず何かないかと加賀さんに今までの妖魔戦の映像を見せてもらった。


 ベッドに横になりながらタブレットで映像を見ていると、妖魔に対し国防軍の兵士が銃を撃って牽制している場面があった。僕も現地で何度も目にした場面だ。


 銃の弾丸が、何発も当たっているのに妖魔はケロッとしている。そして今度は別の兵士が弓矢で牽制しだした。


 榊の武器だ。


 これが面白いように効果があるのだ。


 銃の弾丸は、妖魔の表皮で止められて、その場でポロポロと落ちていたのに、榊の矢はブスブスと妖魔の皮膚を貫いて傷を負わせる。


 しかし、致命傷には到らず最後は宝玉の力で討伐された。


 何故、榊の武器は効果があるのだろう?


 そばにいる加賀さんに質問してみた。


 「加賀さん、何故榊の武器は効果があるの?」


 「榊には霊力がやどっているからだと言われています。ちなみに霊力は、榊の木を伐採してきて一週間程で抜けてしまう、と言われています。

 ですから榊の武器も状態を維持するのが大変なのです」


 「人類に宝玉の力が手に入る前は榊の武器だけで妖魔を倒していたんでしょ?どうやって倒してたの?」


 「記録では、弓矢で牽制して木刀、木槍でとどめを差していた、とあります。

 その頃は、かなりの被害を出しながら討伐していたようです」


 僕は、それを聞いて考え込む。


 榊の武器だけでも妖魔は倒す事が出来る。ただ被害がでるが。


 もし、榊の武器の威力を上げる事が出来たら?


 考え込みながら映像を見ていると、一人の兵士が散弾銃で牽制している場面があった。


 ふと、思った。


 「ねえ、加賀さん、散弾銃の弾って鉛の弾でしたよね?それを榊の木片とかに変えて撃つ事って出来ますかね?」


 「多分、可能だと思いますが、私は専門ではないので、専門家に相談してみましょうか?」


 「是非、お願いします」



 そして数日後、武器を開発している技官だと名乗る人物がやって来た。


 「技術開発局、技官の戸田 千秋です」


 と言って僕に握手を求めてきた。僕は、握手をしながら彼女を観察する。


 彼女は、中肉中背でメガネをかけ、あまり手入れしていない髪を後ろで一本にしばり、少し汚れた白衣を着ていた。


 まさに研究者という感じだ。


 「へぇ~、君が噂のアスミの彼氏?」


 「ちょっと、変な事、言わないで下さい!」


 加賀さんが慌てて声をあげる。


 僕は、何を言われたか分からずポカンとただ見ていた。


 「え~、あなた達、軍の中で噂になっているわよ、あのカタブツの加賀 アスミを落とした男がいるって!」


 「何ですかその噂は、だいたい間壁様には片想いの方がいらしゃって、私なんか・・・・」


 「ちょっと待って!加賀さん、それ、剛志が言ったの?」


 「いえ、ですけど、だいたいの男性の防人様は知っていましたが」


 「え、なんで? 僕、剛志にしか言ってないのに!」


 後で分かった事だが、剛志がポロッと浩幸に漏らしたらしい。そして浩幸が男子達に広げたらしい。


 浩幸め、後でオイタしてやる!


 幸い、女子達には広まってないので宮本さんはこの事を知らない。


 「か、加賀さん、絶対、その事広げないで、宮本さんが好きなのは、剛志なんだ。その事が広がれば宮本さんに迷惑をかけるだけだから・・・あと、加賀さんはすごくかわいいと思う」


 最後にとんでもない事を口走ってしまった。加賀さんが自分の事を「私なんか」なんて言うものだから。


 しまった、と思ったが、もう遅い。僕はただ顔を真っ赤にして下を向くしか出来なかった。


 加賀さんも同じように顔を赤くして下を向いている。


 「なあんだぁ~、二人とも両想いじゃん!そんなんだったら付き合っちゃいなさい!」


 「ちょっと戸田さん、今日はそんなこと話す為にここに来たわけじゃないでしょう?」


 「ごめんなさい、ついね!あの加賀 アスミについに春が来たかと思うとね」


 戸田さんが舌を出して謝る。

 とんでもない人だ。


 僕はただ、榊の武器の威力を上げられないかと考えて言っただけなのに、とんでもない人が来てしまった。


 「でも、さすが異世界転移者ね、私達とは全く違う発想をしているわ。私達は、宝玉の力を再現出来ないか、そればっかりだったから。

 そうよね、元からある武器の威力を上げる方が簡単よね」


 急に戸田さんが、僕の事を誉めてきた。


 少し、照れ臭い。


 「そうなんです、間壁様は防人様の皆様が一目置いている知恵者なんですよ」


 加賀さんまで誉めてきた。せっかく顔の赤さがとれたのに、また赤くなってしまった。

 

 もう、カンベンして!


 「そ、そんなことより榊の木片を使って散弾は出来るんですか?」


 僕の質問に対して戸田さんが答える。


 「フフフ、これを見なさい!すでに試作品を作ってきたわ。

 さっそく試し打ちしましょう」


 僕は「だったらそれを先に出せ」と言いたくなった。


 今までのやり取りは何だったんだ。


 そして僕達は、移動した。


 僕の心臓の調子もだいぶ良くなってきている。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ