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加賀 アスミ side
「悪いが今の俺達は、あんたの為に何も出来ない。
でもさっき剛志がやってみせたような事が、俺達も出来るんだろう?その力があれば、あんたの為に何かできるか?」
私は、嬉しくて泣き崩れそうになりました。
ただ「ありがとうございます、ありがとうございます」としか繰り返し話すことしか出来ません。
しかし、この言葉に甘えるわけにはいきません。
防人様には、この世界の民衆の為と防人様が無事帰還出来る事を願ってお断りしました。
そして訓練が始まりました。
訓練は順調で、次々と宝玉の力を制御出来るようになっていきました。
私は、その間に局長から呼び出しを受けました。
呼び出しの場所に行くと、いつかのごとく国防軍の幹部達に局長と国防大臣も来ていました。
局長は私が、軍を裏切った不届き者で人間の風上にもおけない奴だとさんざん私の事を罵ります。
しかし、幹部達は冷静で防人様達の出した要求は事実かと確認してきました。
私は事実だと答えました。そして防人様達は独自の目標をかかげ、その目標を達成する為に必要な要求だと答えました。
その目標の中身を聞き、幹部達は一応の理解を示しました。
そして一人の幹部が口を開きます。
「正直、宝玉の力に頼りすぎの面があるのは事実だ。
彼らが宝玉以外の妖魔への対抗策に協力してくれるなら良いではないか?」
すると別の幹部も
「うむ、同盟軍の風当たりも強いしな、ここらで方向転換するのもわるくない」
それでも局長がそれに食い下がります。
「しかしこのまま防人達の我儘を許せば、組織として管理出来ませんぞ」
「彼らの要求は、我儘と言われるほどの要求ではないだろう?」
と幹部の一人が言い返します。
さらに
「あまり締め付け過ぎて、逃亡、亡命などとなればそれこそ問題だ。
実際、過去にもそんな事件があっただろう?」
そうなのです。
過去にも国の方針と防人様の考え方が合わず、防人様が亡命すると言う事件があったのです。
「ならば、このまま宝玉を見逃すのですか?三十個もの宝玉を!」
私は、局長が何を言っているのかわかりませんでした。
まるで防人様達の最後の宝玉を自分達で、自由に出来るような口振りだったからです。
「今回は仕方あるまい。と言うより、これ以上は国際社会の目をごまかすのは困難だ」
国防大臣が難色を示しました。
「それでは、この裏切り者をどうしますか?」
局長は、防人様をどうする事も出来ないと諦めて、こんどは私の処分を訴えてきました。
「彼女は、別に誓約に違反した訳ではなかろう。
それに彼女を担当に、と言うのは防人達の要求の一つなのだろう?」
と、一人の幹部が私を擁護すると別の幹部が
「情報を防人に公開すれば、その誓約も意味をなさんだろう、彼女は引き続き防人の世話をしてくれた方が良い」
と、私の立場を後押ししてくれる発言まで出ました。
局長は、悔しそうに私を睨んできましたが、どうする事も出来ません。
防人様達の要求は、思ったよりすんなりと通りそうだと実感しました。
そしてその後、研究施設へ戻った私は防人様の個人面談を行いました。
女性の防人様と面談した時でした。
何故、こんなに小さく若いのにすでに働いているのか?
歳は幾つなのか?
恋人はいるのか?
等々、逆に私の方が質問攻めされて、私はすごく戸惑いました。
私は現在、十七歳で防人様より歳上なのですが、その事を言うとみんなびっくりしていました。
だだ成長しない病気なのだと言うとすごく同情されました。
恋人はいないと言いました。実際いないですし。
この歳でもう仕事をしているのは、家庭の事情とだけ言いました。
私の寿命の事は黙っていました。
女性の防人様は、女子会しようとか、恋ばなしようとか言って散々誘われました。
私はすごく嬉しかった。
しかし、あまり私情を挟むと良くないので丁重にお断りしました。
男性の防人様は、みんな子供ぽかったです。
十五歳です、世間ではまだまだ子供です。
しかしみんな一生懸命、背伸びしているところが可愛らしかったです。
そして男性も女性も、間壁様に一目置いていると感じました。
特に室田様は、間壁様の信者ではないか、と思うくらい間壁様の事を絶賛しています。
しかし私は、信じたくない話しを耳にしてしまいます。
それは、間壁様の心臓が悪い事、そしてもうそんなに永くない事を聞かされました。
私と一緒だ。
ムーンチャイルドは、個人の特性が強ければ強いほど早く死ぬ傾向にあります。
私の場合だと早くて十七~十八歳、遅くとも十九~二十歳で寿命がくるでしょう。
私は、もしかしたら一年以上は生きられないかもしれません。
間壁様は、十歳まで生きられれば十分奇跡だと言われていたらしいです。
それが十五歳まで生きているのです。
いつ死んでもおかしくないだと、みんな顔を暗くしました。
間壁様は、私と同じように人生を悲観しただろうか?
何故自分が、と憤ったりしただろうか?
私は、自分と同じ境遇の義兄弟達がいました。
愛情を注いでくれた義父がいました。
しかし間壁様は、親からも見捨てられ、兄弟もいませんでした。
どれほど辛い思いをしてきたのでしょうか?
私は、間壁様と面談するのが楽しみであり、怖くもありました。
そして面談の時、顔を合わせた間壁様はにっこりと微笑むと私にお礼を言ってきました。
「初めて会った時は、大変迷惑かけました。
あなたがいなかったら僕は大切な仲間を失うところでした」
「いえ、私は自分の職務を全うしただけです」
「だけどそのお陰で僕は助けられた。あなたは恩人です」
と言ってまたにっこりと微笑みます。
その笑顔を見ていると私は不思議と心が軽くなってつい、余計な質問をしてしまいました。
「間壁様は今、大切な仲間を失うところだったとおっしゃいましたが、あなたの生きる希望はその仲間なのでしょうか?」
私は言ってしまってから、しまった、と思いましたがもう遅かったのです。
間壁様は、キョトンとした顔で見ていました。
私は焦ってまた余計な事を言ってしまいます。
「実は、間壁様の病気の事を耳にしまして。すみません」
「ああ、そうなんですね・・・僕はみんなに生かされているんです」
「え、生かされてる?」
「はい、僕は生かされてる、みんなから・・・もし此処が人間の社会じゃなかったら、弱肉強食の世界なら僕は真っ先に食い殺されているでしょう。
僕は人間の社会のお情けで生かしてもらっているんです」
「そんな!お情けで生かしてもらっているなんて」
「いえ、そうなんです。僕は親がいません、親からも見放され、施設で育ちました。
つまり税金で育てられたんです。
そして普通なら大人になって働いて育ててもらった分の税金を少しでも返す努力をしないいけない・・・でも僕は、大人にもなれない・・・永く生きれば生きるほど、税金がかかる社会の害悪なんです」
「それは違います!あなたが社会の害悪なんて誰が言ったんですか?弱い者を守れるから人間なんです。
人間の社会なんです。
その考えは間違っています」
私は、声を大きくして主張していました。
「別に誰も僕を害悪だなんて言わないけど、分かるんです。
社会の目が僕に迷惑だと言っている気がするんです。
だけど、このクラスメートは違う、みんな僕に生きろって、言ってくれるんです。
だから僕は生きていられる」
と言ってまたにっこりと笑いました。
私は、泣きたくなりました。
自分を害悪だと思うほど自暴自棄になり、仲間が生きていてほしいと願うから生きている。
そんなの悲しすぎます。
私は、間壁様が少しでも生きる希望を持ってほしくて、私自身の話しをする事にしました。
「今度は、私の話しをしていいですか?私達はムーンチャイルドと呼ばれています」
「ムーンチャイルド?」
「はい、私と私の義理の兄弟、姉妹達です」
そして私は、ムーンチャイルドの事を詳しく説明しました。
「遺伝子操作?」
「はい、私達は国の要望によって作られた人間です。
特殊な能力を持つ代わりに、成長が成人する前に止まり、寿命も二十年程しかありません」
「そんな!」
間壁様は、悲しそうな顔をしました。
「でも私達は、義理とはいえ父がいて兄弟、姉妹がいました。
私達は愛情をもって育てられたのです。
だから私は父の愛するこの国の為にと、それを生き甲斐に頑張ってこれたのです。
でも、もし私があなたのように親も兄弟もいなければ、私はとても生きて行けなかったでしょう。
あなたはどれほど辛い思いをされたのか想像もつきません」
私はいつの間にか涙を流し、間壁様の手を握り締めていました。
「そんなに言うけど、僕には仲間がいる、みんな僕を支えてくれるんだ。
だから辛いなんて思った事はないよ。
でもあなたは、今一人だ。
僕よりずっと苦しそうだよ」
そう言うと私の手を握り返してくれました。
私達は、お互いを慰めあっていました。
人から見れば私達は、傷の舐め合いに見えたでしょう。
しかし、そんれでも良かった。
お互いにほんの少しずつかもしれないけど、傷を癒し合えたのだから。




