めでたしめでたしで終わったお伽噺の先には何があるのだろう
遅筆を反省したように見せかけておいて、最近また間あけやがって!と、思ってる?思ってる?
じ・つ・はぁ~!(←ムカつきポイント)
以前のものを修正してました!
これからクライマックス→ラストへと一気に持っていきたい所存。
あまりにも時間を掛けすぎたため、もう忘れちまったよ!!という方は、頭から読み返していただけると嬉しいです。
誤字・脱字修正の他に、結構書き直しています。
そ・し・てぇ~、(←本日のムカつきポイントその2)
酔っぱらって書き直したので、誤字脱字がすべて修正されているとは限らないんだぞィッ!(←畳みかけるようにムカつきポイントその3)
朝、いつもより早く目が覚めた。
体はあちこち痛かったが、目覚めはスッキリとしていて、気分も良かった。
昨夜、どうやって帰ってきたのか記憶は無いが、櫻子に事の顛末をまだ報告していなかったはずだ。
部屋を見渡すが、櫻子の姿は無い。
琴子はベッドに寝ていて、横に敷いてあったはずの布団も片付けられていた。
「櫻子、どこ?」
痛む足を引きずってリビングに行くと、テーブルの上に書置きが2枚、置いてある。
1枚は和人母からで、朝食を作って冷蔵庫に入れてあるので、温めて食べてください、と。
本当にありがたい。
もう1枚は櫻子からで、琴子達への感謝の言葉がびっしりと綴られていた。
どうやら櫻子は、昨夜のうちに和人両親によって自宅へと送り届けられたようだ。
朝食を済ませてから、時間をかけてお風呂に入った。
最初は冷水を浴び、その後で粗塩を入れた湯船に浸かる。
穢れの一片も残さぬように。
頭の怪我があったので、洗髪は大変だった。
傷口に染みるかもしれない、と、ぬるま湯だけで髪を洗い、乾かすとキシキシと絡まる髪に、何か無いものかと慎二の大量のコスメを漁ってみる。
「育毛剤、育毛剤、……これも育毛剤。慎ちゃんってば、どれだけ毛を生やしたいんだろう」
やっとの事でココナッツオイルを見つけ出し、髪に擦り込んだ。
足首に湿布、指先に絆創膏、まではうまくできたが、頭に包帯をうまく巻くことができない。
傷口は乾いているが、できれば隠したいのが乙女心だ。
試しにポニーテールにしてみたが、元々髪の量が多く、硬い直毛で、しかも長いので、重さですぐに垂れ下がってくる。
タンスからニット帽を取り出して被り、ヘアピンとヘアゴムを鞄に入れる。
学校に行けば、きっと女子力の高い誰かが何とかしてくれるはずだ。
歩くのに時間がかかりそうだったので、早めに出発した。
エレベーターで1階に降りると、丁度和人がエントランスに入ってくる所だった。
「おはよう、カズ。どうしたの?」
琴子の問いに微笑んで、その後で、痛かったのか、少し顔を歪めながら、和人は答える。
「琴子さん、歩くの大変でしょ。迎えに来た」
和人のこういう所、本当に困る。心が揺れてしまう。
「琴子さんこそ、どうしたの? その帽子。あ、HIPHOP? YO☆YO☆おはYO☆KOTOKO! 君はエンジェル☆君は天使☆そんな君に僕はキュン死! HEY☆MEN!」
突然両手の人差し指を立てて、和人が歌いだす。
和人のこういう所、本当に困る。折れている鼻を跡形もなく粉砕したくなってしまう。
和人の肩を借りて、なんとか登校する事が出来たが、校門前にはマスコミが溢れていた。
見るからに怪我をしている和人と琴子は、あっという間に彼らに取り囲まれてしまう。
「君たち、タイの色からすると2年生だよね? もしかして、死んだ子達と同じクラスだったりする? その怪我はどうしたの? もしかして呪い? あ、彼女、指先に絆創膏貼ってるね。爪、はがれてたりする? 見せてもらっていいかな?」
「すみません、今回の雨ヶ丘高校の自殺、事故、その事故を撮影してSNSにUPした人達の死に関して、どう思いますか?」
「ちょっと、何か言ってくださいよ!」
和人がマスコミの人を掻き分けて前へ進むが、誰かが琴子の髪を掴んで引き戻した。
「痛っ! やめ、やめてっ!」
頭を押さえて叫ぶと、誰かが「大げさだな、ちょっと髪がひっかかっちゃっただけじゃないか。それよりさ、どうなの?」と捲し立てる。
和人が琴子を抱きかかえながら、少しずつ進むが、なかなかマスコミの包囲から脱出することはできない。
数名の教師が駆けつけて、マスコミを押しやり、琴子達に道を作ってくれた。
「おい、何するんだよ! 私たちは真実を伝えるために」
「報道の自由が」
「知る権利が」
「真実を」
「真実を!」
悪意と好奇心に満ちた言葉が、欺瞞が、感情が、押し寄せてくる。
和人に引きずられるようにして、やっと校門の中に入ることができた。
ここまではマスコミも追いかけて来ないようだ。
「琴子さん、大丈夫?」
和人の問いに、震えながら頷く。大丈夫では無いけれど。
怖い。本当に怖かった。
あの、好奇心に満ちた目。
それを満たすためならば、何をしてもかまわない、と、本気で思っているような、熱狂。
教室に入ると、皆が席に着いていて、無言でこちらを見て、目を逸らす。
いつもの雰囲気とは違うが、数日のうちに4人もの死者を出したクラスであれば、不思議とは思わなかった。
教室全体が、喪に服しているような、妙にしっくりとする空気だった。
「おはよう、愛。ねえ、ちょっと、髪なんとかして欲しいんだけど、お願いできる?」
小声で話しかけると、愛は「わりぃけどあたし、そういうのできねえから」と目を逸らす。
後ろから視線を感じて振り返ると、緑がチラチラとこちらを見ている。
「あ、ねえ、緑はできる?」
「拙者もそういうのはちょっと……で、ござるよ……」
やはり目を逸らす。
周りを見渡すと、誰もがこちらに注目していたのに、琴子と目が合わないように顔を下に向けた。
これは……喪に服しているとか、そんな事では無いだろう。
「ちょっと、あんたら、何なの?」
返事は無い。
「愛、緑、何だって言うの?」
二人に問いかけても、下を向いて唇を噛んでいるだけで、返答は無い。
「こ、琴子ちゃん、あたしがやってあげるにゃ! おトイレ行くにゃ!」
櫻子が琴子の手を引いて教室から出る。
「ちょっと待って、櫻子、足、痛いから、ゆっくり……」
廊下に出ても、見知らぬ生徒達がこちらを見て何かを囁いている。
『ほら、例の……』
『どっち?』
『ちょっとかわいいほう。HIPHOP系貞子じゃないほう』
「誰が貞子じゃボケェッ!」
思わず、声が聞こえた方に向かって叫んだ。
その方向にいた生徒が全員、目を逸らして散っていく。
『やだ、こっわぁ~い』
『バカ! あんた、呪われるわよ!』
――――その一言で、大体の事情は把握できた。
良からぬ噂が流れているようだ。
女子トイレで、同じように好奇心と恐怖に満ちた視線に囲まれながら、櫻子に髪を結ってもらう。
櫻子を安心させるように、鏡越しに笑顔で語りかける。
「とりあえず愛と緑に、もう大丈夫だって伝えなきゃ。他の人にも。どうやって、どこまで言えばいいかな……」
琴子の言葉に、櫻子は涙ぐみながら首を横に振る。
「放っておいても、人の噂も七十五日って言うにゃ。それに、あたしには琴子ちゃんがいるにゃ。……それに、工藤君も」
櫻子が涙を拭ったので、琴子の引きつった笑顔は見られずに済んだようだ。
「ねえ、櫻子って、もももももしかして、タカの事、しゅ、しゅき、好き、なの?」
櫻子は名前の通りに頬を桜色に染め、はにかみながら頷く。
「あのにゃ、今回、本当に、色々と工藤君に助けてもらって、命を懸けても守りたい、って、言ってもらえて、……好きになっちゃったにゃ。今日の放課後、あたしから告白しようと思うにゃ」
……両想い、か。
涙をこらえて、無理に笑顔を作る。
「そっか、頑張ってね。てか、頑張る必要無いか。もう既にラブラブだもんね」
「やだにゃ~、もう~、照れるにゃ。琴子ちゃんこそ、佐々木君とラブラブだにゃ」
誤解を解く気も起きない。
涙がこぼれ落ちそうになり、片足ケンケンで個室に駆け込んだ。
「琴子ちゃん、どうしたにゃ?」
扉の外からの櫻子の問いかけに、その場しのぎの言い訳をする。
「ごめん、突然うんこしたくなった! ぶりっぶりいうと思うから、先に教室帰ってて!」
「了解だにゃ! 琴子ちゃん、ファイト!」
便器の蓋を閉め、その上に座り込む。
涙を拭き、トイレットペーパーで思いっきりブビーっと鼻をかんだ。
『あら、さっきの人、本当にぶりっぶり言わせてるわね。みんな、リップを塗るのも髪をとかすのも、ここじゃなくてもできるでしょう? 彼女を一人にしてあげようよ』
『そうね。そうしましょう』
基本、お嬢様育ちでおっとりしてお上品な女の子が多い学校なのだ。
――――しかし、お嬢様というものは、鼻を思いっきりかんだりしないのだろうか。




