告白
しばらく期間が開いてしまいました。申し訳ない。
お気付きの事と思いますが、実は書いているうちにキャラが固まってきたってのがあってwそこらへんが説明不足な感じになってしまっています。
一度、そこらへん含めて誤字脱字の修正なども一気にしてしまおうかと思ったり思わなかったり。
次回作からは話を全部書き上げてからupにしなきゃダメね~
いや、そもそも最初からちゃんとキャラ固めとけって話ですねw
その夜、大人たちは色々と話し合っていたが、早目に床に就く事にした。
ベッドは櫻子に譲り、ベッドの隣に、和人母が布団乾燥機にかけてくれたらしいお客様用の布団を敷いて潜り込んだが、まだ熱が籠った暑苦しい布団ではなかなか寝付く事ができない。
掛け布団を蹴飛ばして、何度も寝返りを打つ。
「琴にゃん、やっぱそっち行っていい?」
しばらくして櫻子が口を開いた。
どちらで寝るか聞いた時に、櫻子がベッドがいいと言ったのだが、もしかして臭かったのだろうか。
「あ、うん、ごめん、じゃあ交代しよう」
あわてて上半身を起こした琴子を、櫻子が引き留める。
「ちが……ごめ……にゃ。一緒に、寝て欲しいにゃ」
襟首にしがみつかまれ、一瞬身の危険を感じたが、その姿勢のまま櫻子は動かない。
じんわりと熱いものが肩口に染みて、そしてすぐに冷たくなる。
櫻子の、涙だ。
そっと両手を上げて櫻子の頭を抱えて撫でる。
「わかった。一緒に寝ようか」
そのまま横になったが、その後、何時間もの間、櫻子は小刻みに震えながらしゃくりあげ、泣き続けていた。
その間ずっと琴子は何も言わずに櫻子の頭を撫で続けた。
腕枕している腕は痺れて感覚が無いし、肩から脇にかけてびしょびしょで冷たかった。
櫻子が泣き疲れて眠ってから、そっと腕を抜き、パジャマを着替えてからベッドに移動した。
布団で眠っている櫻子の顔を見つめる。
櫻子は何を想って泣いていたのだろう。
環奈の事か、長瀬の事か、それとも自分に降りかかった呪いの事で、恐怖に泣いていたのか。
その中に、一粒でも佐東の為の涙が混ざっていればいいな、と思った。
琴子は決して櫻子の事を嫌いではない。そのはずだ。
なのに時折感じるこの激しい憤りは、やはり佐東の感情なのだろか。
色々と考えているうちに、カーテンの隙間から朝日が差し込んできた。
今日は体調が悪いとか何とか言って学校をサボって、昼まで寝て居よう。
そして午後から、ひとりでもあの病院に行って、隠し部屋を見つけなければ。
そんな事を考えていると、キッチンから物音が聞こえる。
時計を確認すると、まだ5時だ。
櫻子を起こさないようにそっと部屋を出ると、キッチンで和人母が料理を始めていた。
振り返り、琴子の顔を見て笑顔を浮かべる。
「おはよう、琴子ちゃん。あ、シャワー? それともジョギング?」
「いえ、物音が聞こえたので」
琴子の母親と同じ仕草……、ため息をつき、エプロンの裾で手を拭いた後で、琴子に歩み寄り、抱きしめて背中を撫でる。
「眠れなかったのね。今晩からおばさんも一緒に寝てあげましょうか? 色々、辛い事が重なって大変よね。でも、大丈夫よ。人生そんなに辛い事ばかりじゃないからね。これを乗り切れば、幸せな事もいっぱいあるはずだから」
背中を摩る手から、和人母の優しさが染みてくる。
暖かくて、柔らかで、優しい。
「……おかあ、さん……」
思わず強く抱き着いてしまう。
和人母は優しく背中を撫でながら、早口で捲し立てた。
「琴子ちゃんがうちに嫁に来るのであれば、いくつか条件があるの。これを承諾してもらえなければ結婚は認められないわ。まずは私たちと同居すること。あ、大丈夫よ、二世帯住宅にするから、プライバシーは侵害しないわよ。和人はうちの人の跡を継いで税理士になってもらうから、琴子ちゃんも少なくとも簿記1級くらいは取ってもらいたいの。あと、昨日夕飯のお手伝いしてもらって思ったんだけど、琴子ちゃん、料理できないわよね? 料理教室に通って、いえ、いっそ栄養士の専門学校に行ったほうがいいかしら。国家資格まで取れとは言わないわよ。でもね、和人のためにもそういう知識って必要だと思うのよね。どうかしら? 決してそんな悪い条件じゃ無いと思うのよ。もちろん、資格は結婚した後に取ってもいいのよ。和人が18になったらすぐに籍を入れてもいいのよ」
わけがわからず、手を伸ばして和人母を引き剥がし、ジョギングに行くと言って家を出た。
玄関を開けると、目に刺さるような朝日と、和人母の「お義母さんって言ってくれたじゃない~!」という叫びが、周りのビルにこだまして琴子の脳を揺さぶった。
慌てて出てきたので、パジャマ代わりの袖口の擦り切れたスウェット姿のままだ。
外に出る訳にもいかず、階段を上り、屋上に行く。
朝日を浴びながら大きく深呼吸する。
慎二に習った事だ。
鼻から光をいっぱいに吸い込み、しばらく溜め、口から陰を吐き出す。
体中、そして自分を取り巻くオーラの全てを光で満たす。
屋上のドアが開く音が聞こえた。
「おう」
それだけ言って、貴史は琴子と同じ動作を繰り返す。
朝日に向かい両手を広げ、光を一身に受けて息を吸い込む。
しばらく溜めて。手をゆっくりと閉じ、腹の前でクロスさせ、全ての息を吐き出す。
ただ、それだけの時間。
心地いい時間。
ふと手を止めて、隣に立っている貴史の横顔を見つめる。
浅黒い肌。慎二や和人ほど彫りが深いわけではないが、少し奥目の、ぱっちりとした二重。上唇のちょっと厚めなところもセクシーに感じる。
そして、大きな、筋張った、でも触れば多分、温かい手。
「なんだよ、見てんじゃねえよ」
照れ隠しに発せられた低く甘い声。
ぶっきらぼうで愛想も無くて、おまけに中二病。
最初はこんなやつが私の運命の相手のはずがない、と思い、反発もしたが、間違いない。
貴史が、運命の相手だ。
その証拠に、何があったわけでもないのに、いつの間にか、こいつの事が好きになっている。
特に優しくされたわけでもないのに、気が付けばいつもこいつの事を目で追っていた。
「約束だ、琴子。ずっと待ってるから」
7年前、神隠しに遭っていた時、幼い琴子に貴史はそう言った。雨ヶ丘高校の制服を着て。
そう、私達は、出会うべくして出会ったのだ。
「ねえ、私達、付き合おうか」
そんな言葉が、自然に出ていた。
「何言ってんだよ、バカじゃねえの」
貴史は間髪入れずにそう言い、琴子を見向きもせずに「あ~、腹減った」と呟きながら屋内へと戻っていった。




