第9話 盗難事件
都営地下鉄での攻防から1週間。今日も平和な1日だ・・・?
ー2125年10月10日(水) 11:50ー
都営地下鉄での攻防から1週間経った水曜日。結局あの2人組はバレットだったのだろうか。この1週間、琴音は射撃の訓練をJTAで本部長の指導の下行った。最初は構え方すら酷かったが、彼女なりに少しは上達しただろう。そんな中、副本部長はよく突っかかってきた。琴音が何をしたのかは分からないが…。そして、今日も訓練を行い、昼休憩をしていた所だ。しかし、訓練をしたからと言って、実戦で撃つということには抵抗があるだろうし、そもそも運転しながらだと発砲は難しいだろう。
「そう言えば、今日川瀬さんは居ないんですか?」本部長に聞いた。
「彼女なら、休み取って名古屋まで行ってるよ。何やら、自分の愛車をチューニング(改造)するとか言ってたな…」
「えっ聞いてないんですけど。」琴音は悔しい様な悲しい様な気持ちだった。
「朝っぱら新宿駅に飛んで行ったからな…まあ、夕方には帰ってくるよ。彼女の車両は速いからね。」
「どんな車両なんですか?」琴音の目にはとても輝きがあった。
「一言で言うなら、8両編成の0系なんだけど…」本部長の言葉に、琴音はとても興奮した。
「えっ0系⁉︎あの名作に乗ってるんですか⁉︎」
「ちょっと前に、老朽化してオークションに出された物を勝ち取ったとか言ってたな…高かっただろうに。」
「そう言えば、今のJRってどうなってるんですか?」琴音は営業運転をしていそうな車両を見たことが無かった。
「今のJRは、JRを前身とした技術系企業が独立して車両の販売をしている会社、JRC(Japan Railway Cars)として認知されてるね。昔のJRの車両は人気があるのでね。旧型の車両をリメイクして売ったりしているよ。でも、たまに当時営業運転を行なっていた車両もヴィンテージカーとして売っているんだよ。その車両は、とても高値がつくらしい。」詳しい解説だった。
「言って良いのかわからないが、そう言えば何故か0系に波動砲を搭載するという魔改造を施しているんだよ…」本部長が話をしながら思い出した様に続けて言った。
「え?」波動砲という言葉に琴音は驚いたが、とてもロマンあふれる物だと思った。
「0系なんて乗ってて、この時代やっていけるもんなんですか?」小春が聞いた。(しれっと訓練中に仲良くする様になった)
「彼女の0系は、時代の差を感じさせない様な様々な魔改造が施されている。その改造をした人にぜひ会いたいものだね。電車の改造には、いろんな資格と免許が必要だし…」本部長は興味深そうに言った。
しばらく雑談を続けていると、一件の通報が入った。JTAは、鉄道の警察の様な立場にあるので、この様に事件の通報が入ってくることもあるのだ。そして、琴音はバレットと関係の無い事件対応も任されている。(半強制的だった)事件対応といっても、本物の警察では無いので、逮捕権は無い。でも、警察が居るなら今までどうして通報しなかったのか。まあ、何かしら理由があったんだろう。
「神奈川で列車盗難事件ですって!3400系で出ます!」
「暇だし私も行こうかな。そっち方面に最近行ってないからな。」本部長が思わぬことを言った。
「えっちょっと大丈夫なんですか?本部を留守にして…」
「良いのよ良いのよ。頼りないけど副本部長も居るしな。」
「一応僕は副本部長なんですよ…?もっと頼ってくれたって良いんですからね?」副本部長だ。
「なんかあったら連絡くれ。じゃあ、行ってくる。」本部長はそう言うなり、琴音を引き摺る様にしてエレベーターへ向かった。何だかいつも引き摺られている気がする。
新宿駅に着くと、琴音は3400系を取り出し、S1215Bとして出発した。
「盗難された車両は、M(真鶴駅)1210Bとして東海道本線上を西に進んでるらしい!後ろから追いかけるぞ!車両は、JR373系だ!…えっ結構マニアックなの盗んだな。さっき言ってたヴィンテージカーか?」
「盗まれる側も悪い気がしますね…古いんですから、セキュリティには気を付けなきゃ。私の車両はセキュリティも何も無い気がしますけど。」
「多分、鍵付けたままホームに降りてたんだろう。その間に乗っちまえばすぐ盗めるから、車両のセキュリティは関係無い。JTAで防犯グッズでも作るか…」
JR373系は、1995年登場の、ワイドビュー伊那路やふじかわとして運用されている車両だ。流石に何かしらチューニングしないとこの時代では走れないだろう。
「何かチューニングしてありますよね…多分…」
「何とかなるさ。」
本部長の言葉を信じて、琴音は東海道本線上を進んだ。
警察に通報しなかったのは、危険な目に遭ったから警察に通報すると言う至って普通のことがアウト・オブ・眼中だったからです。何考えて生きてきたんでしょうかね。
次回は、東海道本線での攻防をお届け(?)します!




