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絶海の無人島に転移したけど、ステータスが「通販」スキルしかなかった件 ~女に貢ぐより魔石を稼いでレベルを上げろ~  作者: ナマ


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第八話 ビルド構築(システム・インテグレーション)と水平線の予兆

砂浜での発見から数日。

 俺――高木賢治(35歳)の日常は、かつての深夜警備のルーティンワークを遥かに凌ぐ、冷徹な「自己強化のサイクル」へと塗り替えられていた。

 拠点としている大樹の周辺は、もはや「無人島のキャンプ地」ではない。

 通販で買い揃えた防刃ネットやセンサーライト、そして要所に配置された殺傷力の高い罠が幾重にも重なる、難攻不落の「要塞」へと変貌していた。

 俺は拠点の中央で、愛用する「8インチタブレット」のようなステータス画面をスワイプする。


「……よし、残高は120魔石。これでようやく『先行投資』ができる」


 ターゲットは、通販レベル5で解禁された黄金のタブ。そのリストの最上段にある、もっとも基礎的かつ重要なオーブだ。

ステップ1:気配察知

 俺は迷わず、**『気配察知のオーブ(初級)』**をタップした。価格は80魔石。

 購入を確定した瞬間、虚空から淡く輝く琥珀色の宝玉が手の中に落ちてくる。

 

「……これが、異世界のスキルか」


 説明書によれば、これを強く握りしめて「使用インストール」を念じるだけでいい。

 実行した刹那、俺の脳内に熱い奔流が流れ込んだ。

 

 視覚、聴覚、嗅覚。それら既存の五感とは別の「第六のレイヤー」が、脳内のマップに上書きされる感覚。

 目を閉じても、周囲の草木が揺れる気配、茂みに潜む小動物の心音、そして風に乗って漂う魔物の「悪意」が、まるでレーダーのドットのように鮮明に把握できる。


「……っ、凄いな。警備員時代の『勘』が、デジタルデータになったような感覚だ」


 これで「死角」という概念は消滅した。

 俺は次に、効率的なデータ分析を行うために**『鑑定眼のオーブ』**の購入を目指し、再び森の奥へと「集金」に向かった。


ステップ2:狩猟の最適化アクティブ・ハント

 『気配察知』を手に入れた俺の狩りは、もはや作業だった。

 魔物の背後を突き、反応される前にメイスを叩き込む。

 

 レベルも順調に上がり、**【グローバルレベル:15】に到達。

 筋肉の隆起は、かつての「オッサンの体」を完全に置き換え、鋼のようなしなやかさを得ていた。

 

 数時間後。俺は合計150魔石を稼ぎ出し、『鑑定眼のオーブ』**を手に入れた。

 これによって、俺の「視界」はさらなる進化を遂げる。

 魔物を見れば、その名前、弱点、そして体内に秘めた「魔石の期待値」が数値として表示されるようになったのだ。


【対象:フォレスト・バイパー】

【ランク:C】

【弱点:頭部後方の神経節】

【ドロップ期待値:大魔石(30〜40魔石相当)】


「……期待値40。効率がいいな、こいつを狙うか」


 MOSマイクロソフト・オフィス・スペシャリストで培ったデータ分析能力が、異世界の戦場で唸りを上げる。

 俺は無駄な戦闘を一切省き、もっとも投資対効果(ROI)の高い魔物だけをピンポイントで狩り続けた。


ステップ3:純粋な暴力(物理強化)

 情報の次は、出力パワーだ。

 俺は稼いだ魔石を、**『身体強化のオーブ(中級)』と『短剣術のオーブ』**に全振りした。

 

 魔法も魅力的だったが、今の俺には基礎体力を活かした近接戦闘の方が馴染む。

 身体強化スキルを発動させると、全身を淡い光の膜が覆い、踏み込んだ地面が爆ぜるほどの瞬発力が生まれた。

 もはや、この島の森に俺の敵はいなかった。

 一日に数百の魔石を稼ぎ出し、それをレベルアップと通販の品揃え拡充に注ぎ込む。

 

 拠点にはソーラーパネルが並び、浄水器からは清潔な水が溢れ、俺の食事は通販で買った「最高級の岩塩」と「スパイス」で彩られていた。

 かつて俺を馬鹿にしていた女たちに見せてやりたい。

 俺は誰にも頼らず、自分の力(と通販)だけで、この不毛な島を「王国」へと作り変えたのだ。

決算:十四日目の静寂

 転移から二週間。

 俺のステータスは、当初とは比較にならない次元へと到達していた。


【名前】 高木 賢治(35)

【グローバルレベル】 22

【通販スキルレベル】 6

【所持スキル】

・気配察知(中級)

・鑑定眼(上級)

・身体強化(中級)

・短剣術(中級)

・隠密(初級)

【装備】

・特注タクティカル・スーツ(防刃・耐火仕様)

・高炭素鋼製タクティカル・メイス & ナイフ


 かつて新宿の駅ビルで立っていた冴えない警備員は、そこにはいなかった。

 鋭い眼光、無駄のない挙動、そして圧倒的な自信を纏った一人の「狩人」が、そこには立っていた。

「……そろそろ、頃合いか」


 俺は十分な物資と、外界の脅威に対抗できるだけのスキル構成ビルドを整えた。

 

 今なら、外界の人間がどんな魔法や技術を持っていようと、一方的に搾取されることはない。

 むしろ、こちらが「取引」を主導できる。

 俺はかつての砂浜へ、最終確認のために向かった。


 波の音は相変わらず穏やかだった。

 俺は砂浜に立ち、レベルアップで強化された視力を使って、水平線の彼方を見つめる。

 

 かつて見つけた漂流物。

 あの時感じた「外界への不安」は、今の俺の力をもってすれば「計算可能なリスク」へと格下げされていた。

 

 俺は通販で買った「高倍率のデジタル望遠鏡」を構える。

 レンズを覗き込み、水平線の僅かな「揺らぎ」をズームした。


「…………っ!」


 心臓がドクリと跳ねる。

 

 青い海と空の境界線。

 そこには、これまで俺が見てきた魔物の気配とは決定的に異なる「人工物」の影があった。

 

 それは、複数の帆を張った、巨大な木造船だった。

 

 ファンタジー映画で見るような帆船だが、その船体には幾何学的な紋様が刻まれ、そこから微かな魔力の輝きが漏れているのが、強化された俺の目にははっきりと見えた。


「……来たか。探索船か、それとも――」


 俺は望遠鏡を下げ、ゆっくりと『気配察知』の感度を最大まで引き上げた。

 

 船は、確実にこの島へと向かっている。

 風に乗って、僅かだが「人間」のざわめきが届く。

 

 それは、俺が待ち望んでいた「脱出の鍵」であると同時に、俺の平穏な「無人島要塞」を脅かす不確定要素セキュリティホールでもあった。

 

「いいだろう。誰が乗っていようと、俺をATMにする余裕なんて与えないぜ」


 俺は腰のメイスの感触を確かめ、不敵な笑みを浮かべた。

 

 ポケットの中には、いざという時に買い物が可能な「魔石」の残高がたっぷりとある。

 

 水平線の彼方からやってくる未知の世界に対し、35歳のオッサンは、かつてない高揚感と共に、その「迎撃準備」を整え始めた。

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