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絶海の無人島に転移したけど、ステータスが「通販」スキルしかなかった件 ~女に貢ぐより魔石を稼いでレベルを上げろ~  作者: ナマ


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第二十話 新規事業参入(ギルド登録)と業務フローの確認

石造りの巨大な城門。そこでは数人の衛兵が、入城する旅人や商人のチェックを淡々とこなしていた。

 俺は列に並び、順番が来ると「紛失した」という体で、先ほど馬車から回収したばかりの王国銀貨を数枚、受付手数料として差し出した。

 

「……入れ。次は一ヶ月以内に正式な身分証を用意しろよ」


 賄賂に近い追加料金を含んでいたのか、衛兵は深追いすることなく俺を通した。

 門をくぐった先には、石畳の道に沿って立ち並ぶ商店、行き交う馬車、そして多様な種族が混ざり合う、圧倒的な熱量を帯びた「市場マーケット」が広がっていた。


「……まずはキャッシュフローの安定化か。それが最優先事項だな」


 アイテムボックスには当面の生活費以上の金がある。だが、資産を切り崩すだけの生活は、いつかシステムを破綻させる。

 安定した収入源を確保しつつ、この街の「ルール」を把握する。そのための「窓口」として、冒険者ギルドという選択肢は妥当だ。

 かつて警備の現場で「日報」や「巡回ログ」を欠かさず作成し、異常があれば即座に「事案」として報告してきた俺だ。クエストを「タスク」として処理し、報酬を受け取るという冒険者の業務フローは、本質的に馴染みがある。

事業所視察:冒険者ギルドへのアクセス

 街の中心部、ひときわ大きく頑強な建物に、剣と盾をあしらった看板が掲げられていた。

 扉を開けると、そこには期待通りの喧騒と、酒と汗、そして古い羊皮紙の匂いが混ざった「現場」があった。


「……典型的な労働環境だな」


 俺は周囲の視線を『隠密』で受け流しながら、真っ直ぐに受付カウンターへと向かった。

 カウンターの奥では、数人の職員が大量の書類を捌いている。その手際の良さを眺めながら、俺は脳内で勝手に彼らの「事務処理能力スペック」を分析していた。

(あの速さなら、Excelのショートカットを教えればさらに3割は効率化できるな。まあ、この世界にMOSマイクロソフト・オフィス・スペシャリストなんて概念はないだろうが……)

 俺の番が回ってきた。

 受付の女性が、事務的な笑みを浮かべて問いかけてくる。


「はい、次の方。本日はどのようなご用件でしょうか?」


「新規の登録を。身分証の代わりになるものが欲しい」


「承知いたしました。登録料として銀貨5枚を頂戴します。あと、こちらの書類に必要事項の記入をお願いします」


入力作業:情報の最小化ミニマライズ

 差し出されたのは、羊皮紙の登録申請書。

 名前、年齢、得意とする技能スキル

 俺は無造作に羽ペンを走らせた。

• 氏名: ケンジ

• 年齢: 35

• ランク: F(新規)

• 特記事項: 単独行動ソロを希望。

 余計な情報は一切書かない。

 かつて日本でデータ入力の効率化を突き詰め、都道府県名を一文字で変換する辞書を自作した時のように、俺は自分の情報を「最小構成」で登録した。

 

 受付の女性が書類を確認し、少しだけ眉を寄せた。


「特記事項の……『ソロ希望』。あ、あの、この街の周辺はCランク以上の魔物も多く、新規の方はパーティーを組むことを推奨していますが?」


「必要ない。他人の管理まで引き受ける余裕はないんでね」


 俺の冷淡な回答に、彼女はそれ以上踏み込んでこなかった。

 代わりに、指先ほどの小さな魔石が埋め込まれた金属製のプレート――ギルドカードが手渡された。


「……手続き完了です。これでケンジ様は、本日から正式な冒険者として活動いただけます」


業務開始:初回の「案件」選定

 手に入れたばかりの身分証をポケットに放り込み、俺は壁一面に貼られた「依頼書」の掲示板へと向かった。

 常設の雑用から、高額報酬の討伐まで、無数のタスクが並んでいる。

 俺が求めているのは「安定」だ。ギャンブルのような一攫千金ではなく、低リスクで確実に利益を出し、かつ「この街のルール」を学習できる案件。

 俺は掲示板の隅、誰も見向きもしないような「定型業務」に目を留めた。


• 【依頼:商業区・倉庫街の深夜巡回】

• 内容: 荷物の盗難防止、および小規模な魔物(ネズミ等)の駆除。

• 期間: 3日間(深夜帯)

• 報酬: 銀貨15枚

• 備考: 経験不問。一人での遂行可


「……警備員の仕事か」


 皮肉なものだ。異世界に来て、最強の力を手に入れても、最初に選ぶのが結局これか。

 だが、今の俺には『気配察知』がある。不審者の侵入も、小魔物の動向も、半径数百メートル単位で「視覚化」できる俺にとって、この仕事は「放置ゲーム」以下の難易度だ。

「これを。3日分のシフトとして受けておく」

 俺が依頼書を受付に持っていくと、彼女は驚いたような顔をした。

「えっ、あの……初仕事が倉庫番ですか? もっと、こう、薬草採取とかスライム討伐とか、冒険者らしいお仕事もありますが……」


「これが一番効率がいい。夜の静寂(ソロ環境)は、何物にも代えがたいからな」


 俺はそれだけ告げると、ギルドを後にした。

 

 まずはこの街の「夜」を監視し、情報のパケットを収集する。

 35歳のオッサンの、再就職第一弾。

 誰も見ていない場所で、最強のスキルを無駄遣いしながら、彼は着実に「異世界の地盤」を固め始めた。

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