3章-5
「カグヤさんに一撃?」
「そうですわ。」
にっこり笑いながら首を傾ける。
その笑みは柔らかく見えるはずなのに、どこか温度が無く見えた。
「あなたがどれくらい戦えるのか知る必要があるんですの。やっていただけますわね。」
笑っている様に見えるが、心からの笑顔とは程遠い。
「で、でも、女の人に怪我させるのは…。ちょっと…。」
手が、わずかに震えていた。
「少年。」
フウタはそう呼ばれ、エルを見る。
「私もカグヤ様も女だ。
だが——、戦いにおいては性差など関係ない。」
エルは、一歩踏み出し、
「君の義姉も、君を守るために戦ったのでは無いのか?」
フウタの目が揺れる。
「傷つくことなど承知の上だ。」
わずかに声が低くなる。
「それでも戦う覚悟を——君は踏み躙るのか?」
「……っ!!」
エルの言葉が、胸に突き刺さる。
——思い出す。
つい最近、フェルトが自分を庇ったあの瞬間。
守るための結界が、攻撃へと変わった光景。
本来なら、あんな戦い方はしないはずなのに。
それでも——
「姉さん……」
ぎゅっと目を閉じる。
大きく、息を吸う。
そして、吐いた。
ゆっくりと顔を上げる。
開いた瞳が、まっすぐカグヤを射抜く。
「エルさん。ありがとうございます」
視線は逸らさないまま、そう告げた。
「もう迷いはない様だな。」
「はい……!僕は……戦います!」
その言葉に呼応するように、フウタを中心に風が巻き起こる。
——だが、それは整った流れではない。
ぶつかり合うように、荒々しく、制御の効かない力が周囲を揺らした。




