3章-4
カグヤの案内で、談話室、食堂、その裏のキッチン、風呂、洗濯場、トイレと、一通りの場所を簡単に見て回った。
メイドや執事がいるわけではなく、代わりに――
人型のゴーレムが、静かに働いている。
まるで一時的に“お手伝い”として使われているかのようだった。
「こんなこと、できるんですね……。」
感心したようにフウタが呟く。
「すごい……。」
その言葉に、カグヤはほんの少しだけ目を細めた。
「ふふ……褒められるなんて、ここ数年ありませんでしたから。嬉しいですわ。」
そう言って、ふわりと宙に浮いたまま、くるりと一回転する。
どこか楽しげで――
けれど、やはりどこか現実離れしていた。
この城の玄関と思われる、大きな中央階段の前でカグヤは足を止めた。
ゆっくりと振り返り、微笑む。
「ここから二階へ上がれますわ。
二階はほとんどが客室ですので、説明は省きますわね。」
その笑顔は、ここまでと変わらない。
「――そして、ここが最後の部屋ですが……。」
そう言って、扉へと手を伸ばす。
その瞬間――
「ちょっと待て! カグヤ、お前何考えてる!」
ホムラの鋭い声が飛んだ。
「ホムラ! 口を出すな!」
すぐさまエルが制する。
「どうしたんですか……? 二人とも……。」
フウタが戸惑いの声を上げる。
だが。
カグヤは、そのやり取りすら気に留めないように――
静かに、扉へ手をかけた。
扉の先――
部屋の中央に立ったカグヤは、ゆっくりとこちらへ振り返った。
その表情は――
今までの柔らかな笑みとは、まるで別物だった。
鋭く細められた瞳が、真っ直ぐにフウタを射抜く。
「ここは修練場。」
静かに告げる。
「魔法の練習も、武器の訓練も出来る場所ですわ。」
「え……?」
状況が飲み込めず、フウタは思わず振り返る。
ホムラは、今にも斬りかかりそうなほどの目でカグヤを睨みつけていた。
エルは腕を組み、目を閉じている。
――何も言わない。
「どういうことだ、カグヤ。」
低く、押し殺した声。
だが、その内に込められた殺気は隠しきれていない。
カグヤはそれを意にも介さず、淡々と口を開く。
「どういうことも、こういうこともありませんわ。」
一歩、フウタへと近づく。
「ここは修練場。」
そして――
「フウタさん。あなたが、どれほど戦えるのか……知りたいのです。」
「ぼ、僕が……?」
思わず声が震える。
「はい。」
迷いのない返答。
「ですから――」
わずかに微笑む。
だが、その目は笑っていない。
「私に、魔法で一撃入れてくださいな。」




