3章-3
よく見ると、その少女にはひとつ特徴があった。
左右で色の異なる瞳――虹彩異色。
思わず見入ってしまう。
「そんなに、まじまじと顔を見られると……恥ずかしいですわ。」
ころころとした、柔らかな声。
「あっ……す、すみません。」
フウタは慌てて視線を逸らし、足元へと落とした。
少女は、くすりと小さく笑う。
「エルも、ホムラも。お疲れ様でした。」
その声色が、ほんのわずかに変わる。
「どうぞ、ゆるりとお休みくださいな。」
「カグヤ様。一つ、ご報告がありまして。」
「あら、そうでしたの? 何かしら。」
「はい。あちら側から、彼に接触がありました。」
その言葉に――
カグヤと呼ばれた少女の瞳が、わずかに細められる。
ほんの一瞬。
だが、空気が変わった。
「……そう。」
小さく、息のように零す。
「分かりましたわ。では後ほど――妾の部屋で、詳しく聞かせてもらいましょう。」
「はい。」
エルは深く、頭を下げた。
フウタは所在なさげに、足元の水面へと視線を落としていた。
揺れるはずのない水面に、自分の姿だけが静かに映っている。
「フウタさん……と、お呼びすればよろしいでしょうか?」
不意に名を呼ばれ、フウタははっと顔を上げた。
「あ、はい!」
少し上ずった声で答える。
「ふふっ……慌てなくても、大丈夫ですわ。」
カグヤは口元に手を添え、くすくすと小さく笑った。
「では、まずこの城の部屋をご案内いたしますわ。
付いてきてくださいな。」
そう言うと、カグヤは着ている衣をふわりと翻し、扉の方へと向かって――
歩き出し……。
「……?」
(えっ――歩いてない。)
フウタは目を見開いた。
(この人……少し浮いてる。)
驚きに固まるフウタを見て、ホムラが肩に手を置く。
「まぁ、驚くよな。そのうち慣れるさ。」
軽く笑いながら続けた。
「だいたい、お前の婆さんの婆さんの、そのまた婆さんより年上なんだぞ。」
「……は?」
フウタが言葉を失う。
その時――
「ホムラ……何か、言いまして?」
カグヤは振り返らずに、静かに言った。
(出たな、地獄耳……。)
ホムラはぽそりと呟き、視線を逸らす。
「聞こえてますわよ、ホムラ。」
間髪入れず、カグヤの声が飛んだ。
「やべっ。」
舌を出して誤魔化すホムラ。
エルは額に手を当て、小さくため息をつく。
――いつものことらしい。
「はは……。」
その様子に、フウタも思わず苦笑した。




