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2章-4

「——…まぁ、ぶつけたところは大丈夫か?」

リビングへ向かう二人の背を見送りながら、ホムラが口を開く。

「はい……多分、明日あたりタンコブになってそうです」

額を押さえながら、苦笑いを浮かべるフウタ。

「そうか」

短く返す。

それ以上は何も言わない。

けれど——

「……ところで」

一拍置いて、視線を向ける。

「さっき、“フウキ”がどうのと言いかけていたな」

その声は静かで、逃げ場を作らない。

「聞いてもいいか?」

「うぅぅ……」

フウタは小さくうめいた。

「はい、大丈夫ですよ。あれは、夢の中だったのかな。

僕、不思議なところにいたんです。そしたら、お兄ちゃんの声が聞こえて……。」

「……天国か?」

突飛な話に頭が追いつかず、ホムラはそれとなく言葉を選ぶ。

「あはは、それ最初に僕も思いましたよ」

少しだけ笑う。

「でも、もしかしたら——本当にそうだったのかも」

「——……。」

ホムラは何も言わなかった。

フウタは、遠くを見るような目で続けた。

「懐かしい声でした。

姿も、あの時のままで……」

小さく息を吐く。

「いっぱい、話したいことがあったんですけど——」

ふっと、力なく笑う。

「全部、飛んじゃいました」

苦笑い

その様子を見て、ホムラは何も言わず、先を促すように静かに待つ。

「でも……」

フウタは、ゆっくりと言葉を探す。

「無理矢理、魔脈を開いたから……

 2〜3日は動けないって」

そこまでは、比較的すんなり出てきた。

「それと……」

言葉が、引っかかる。

一瞬だけ、視線が揺れる。

それでも、何かに引き寄せられるように——

ホムラへと視線を合わせた。

「ツクヨミの……カグヤさんに、会うように言われました」

部屋の空気が、わずかに変わる。

「……」

ホムラの目が細くなる。

「今、その使者が来ているだろう、って」

カグヤの名を出した時、ホムラの目が細くなった。

「そうか……。」

短く、息を吐く。

フウタから視線を外し、ゆっくりと天井を仰ぐ。

「アイツは……本当によく分かっているな」

小さく呟くと、手を組み、そのまま額に当てた。

考えを巡らせるように、しばし沈黙する。

「この使者って……ホムラさんとエルさんのこと、ですよね?」

フウタが、不安げに問いかける。

「僕は……カグヤさんに、会わなければいけないんでしょうか」

その声は、さっきまでよりも少しだけ弱い。

迷いと、戸惑いが滲んでいる。

「——ああ」

ホムラは、静かに答えた。

「その通りだ」

間を置かず、続ける。

「正確には、“会うべきだ”な」

視線を戻し、フウタを見る。

「お前に選択肢が無いわけじゃない」

少しだけ、言葉を選ぶようにして——

「だが」

わずかに、目を細める。

「カグヤが名指しで呼ぶ以上、無視できる話じゃない」

その一言には、はっきりとした重みがあった。


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