2章-3
「待って!お兄——!」
「大丈夫!?フウタ!」
ガン!!
「っ〜〜……!!」
鈍い音が部屋に響いた。
「どうしたの!?」
「大丈夫か!?」
物音に驚き、リビングにいたエルとホムラが慌てて駆け込んでくる。
「フウタがうなされてたみたいで。
心配で覗き込もうとしたら——」
フェルトが苦笑しながら、自分の顎をさする。
どうやら勢いよく起き上がったフウタの頭が、思い切りぶつかったらしい。
「いったぁ……」
フウタは自分の額を押さえながら、ゆっくりと息を整える。
「僕は、お兄ちゃんがいたから」
その目には、うっすらと涙が滲んでいた。
「フウキが〜?どこにいたのよ〜。」
フェルトは顎をさすりながら、不満げに眉をひそめる。
「明日、青あざ確定なんだけど〜……」
「えっと、えっと……」
言葉がうまく出てこない。
——あれ?
「お姉ちゃん?そういえば怪我は?
切られたところは?血だらけで……」
自分の手を見る。
血は、ついていない。
「……あれ?」
ゆっくりと周囲を見渡す。
見慣れた天井。
見慣れた壁。
「ここ……僕の家?」
完全に状況が噛み合っていない。
その様子を見たエルが、小さく息を吐いた。
「とにかく落ち着け。まずは、二人とも、ぶつけたところを冷やすそう。」
淡々と、しかし迷いなく言う。
「それから——」
一歩、フウタに近づき
「少年は、まず食事だ」
「フウタのご飯は、私が作るわ。」
フェルトがそう言って、くるりと踵を返す。
「なら、私達は冷えたタオルを用意しよう。
ホムラ、少年を頼む」
エルが短く指示を出す。
「……ああ」
ホムラは小さく頷いた。
二人はそのまま、リビングへと向かっていく。
その途中——
「いった〜……ほんと最悪なんだけど〜……」
フェルトの文句が聞こえた。
ぱたん、と扉が閉まる。
部屋に残されたのは——
フウタと、ホムラだけだった。




