48 プロの魔力!
「ありがとう。心強いわ」
ルシアさんは優しく微笑むと、杖の先端に光る結晶を、地面に向けて静かにかざした。
「固くなった土をやわらかくして、水の通り道を作ってあげるの。でも、力まかせに水を流し込むと、大樹の根を傷つけてしまうかもしれないでしょう? だから、私たちが魔力を合わせて、やさしく土をほぐしてあげる必要があるの」
「魔力を合わせて……」
「そう。アイちゃんのさっき感じ取った水の『鼓動』に合わせて、私が少しずつ魔力を流し込むわ。アイちゃんはその流れを大樹の深い根まで導いてあげて」
「カインちゃんは、土がやわらかくなった部分が崩れないように、魔法でやさしく抑えてくれる?」
「うん! 任せて!」
私は呼吸を整え、もう一度大樹の根元に両手を添える。
「いくわよ」
ルシアさんの声とともに、澄んだ魔力が、私の指先を通して土の中へと流れ込んできた。
(すごい……これがプロの魔法使いの魔力なんだ……!)
強すぎず、弱すぎず、まるで清らかな小川がすーっと広がっていくような温かい感覚。
私はその魔力の波を逃さないように意識を集中し、奥の固くなった土の隙間へと滑り込ませていく。
(もっと奥へ……大樹の、一番深い根っこまで!)
じわじわと、つっかえていた土が解きほぐされていく感触が手に伝わってくる。行き場を失っていた水が、解き放たれたようにスーッと奥へと流れていった。
「あ……届いた!」
一番深い根が、ぐんぐんと水分を吸い上げ始めていくのが分かった。
先ほどまでどこか元気がなさそうだった『憩いの大樹』の葉が、ざあっと風に揺れた。日の光が増したように感じられように、幹の表面がほんのりと温かい光を帯びている。
「二人とも、完璧だったわ。大樹が喜んでる」
ルシアさんが嬉しそうに目を細めた。カインも大樹を見上げていた。
「すごいよアイ! 木が元気をとりもどしてる!」
「うん……!」
後ろで見守っていたクララさんが、胸の前で手を組み、ほっとしたように微笑んでいた。
「ふふ、二人とも本当によく頑張りましたね。とても立派なお手伝いでしたよ」
「よかったぁ……」
緊張が一気にほぐれ、私はその場にぺたんと座り込んでしまった。
「お疲れ様、アイちゃん」
ルシアさんが優しくかがみ込み、私の頭をなでてくれた。柔らかい手に、思わず頬がゆるむ。
(凄い綺麗な手だな〜〜〜)
「あ、カインもすごかったよ! ちゃんと土を支えてくれてたから、魔力がぶれずに済んだんだと思う」
「へへ、ほんと? 役になてたならよかった!」
カインは鼻の下を指でこすりながら、照れくさそうに笑った。その顔には少しだけ泥がついていて、それを見たクララさんが微笑みながらハンカチを取り出す。
「カインさん、動かないでくださいね。……はい、きれいに整いました」
「ありがとう、クララさん!」
クララさんに顔を拭いてもらったカインが、嬉しそうにしていた。
「さて、これで『憩いの大樹』の緊急調査と処置は無事に完了ね」
ルシアさんは立ち上がると、杖をすっと胸元に引き寄せた。
「でも、今回の件で分かったわ。魔力的な原因ではなく、街の発展に伴って大樹の周りの土が踏み固められやすくなっているみたい。定期的なお手伝いが必要になるかもしれないから……その時はまた、頼ってもいいかしら?」
「はい! もちろんです!」
私とカインが声を揃えて答えると、ルシアさんは嬉しそうに目を細めた。
「ありがとう。……そうだ、一生懸命頑張ってくれた二人にお礼をしたいのだけれど、何か欲しいものはある? 魔法の道具でも、美味しいお菓子でもいいわよ」
お礼、と言われて私とカインは顔を見合わせた。
「ルシアさん! さっきの水の魔法……もっと近くで見たいです! あと、どうやって魔法を勉強したのか教えてほしいです!」
「ふふ、やっぱり魔法に興味があるのね。いいわよ、組合の資料室で少しお茶でも飲みながら、魔法の基礎についてお話ししましょうか」
「本当!? やったー!」
大はしゃぎする私を見て、クララさんは微笑んでいた。
「よかったですね、二人とも。素晴らしい魔法使いさんからお話を聞けるなんて、めったにない機会ですよ」
新作を出そうと思っているので、投稿が二日に一回などになることが多くなります。
できるだけ、毎日投稿を頑できるように張ります。
これは余談ですが、最近学童の子供たちが解いている勉強内容が、意外と難しいことに驚いているんですよね。
特に「これは難しいのでは?」と思ったのが社会の問題です。例えば「この市はどのように地形を利用していますか?」といった内容で、大人ならピンときますが、「小学三年生に解けるのかな?」と少し疑問に思っていました。
ところが、実際にやらせてみると案外解けている子がいてビックリ! 苦戦している子もいましたが、コツを教えるとすぐに理解して解けるようになっていました。
少し難しそうな問題でも、きちんと順を追って教えればしっかり理解できるんですねよね。子供たちの吸収力と可能性には本当に感心させられます。




