いざ、マスカラ街へ!!
「本当!? すごいじゃんアイ! じゃあ、マスカラ街の大樹でもきっと同じように調べられるよ!」
カインは自分のことのように喜んで、顔を輝かせた。
「ありがとう! でも、やっぱりまだ役に立てるほどじゃないと思うなぁ」
私は笑いながら手を放し、土で少し汚れた手を払った。
(難しいなぁ)
「そっか。でも、まったく手がかりがないよりずっといいよ! 」
カインはそう言うと、満足そうに腰に手を当てた。
「うん、そうだね。水属性の魔法使いさんに会ったら、この感覚をどう広げればいいのか聞いてみよう」
「よし! じゃあ次は魔法の復習と……あ、明日の準備!」
「そうだった。神父様にも言われたし、持っていくものを確認しておかなくっちゃ」
私たちは教会の庭から戻り、いつもの部屋で、カインと何がいるのか話しあっていた。
しばらくすると、お父さんが迎えに来て、家に帰った。
家で、お母さんやお父さんに聞いたら、クララさんや信頼できる大人が近くにいるなら、いいよ。という事で、許可が降りた。
夜、藁のベッドに入ると、窓の外からは静かな風の音が聞こえてきた。
「マスカラ街か……」
(着替えはやっぱり、いるかな?カインは持ってくるって言ってたし、土とかで服が汚れるかもだしね)
天井を見つめながら呟く。
新しい街、新しい魔法使い、そして『憩いの大樹』。
翌日、私たちは準備を完璧に整え、クララさんや神父様に見られながら、魔法の復習を重ねて一日を過ごした。
そして——待ちに待った、出発の朝。
朝日が登る頃、私たちは教会の前に立っていた。
「アイ、準備はいい?」
カインが、こちらを見つめてくる。
どうやら、クララさんの故郷という事で、楽しみらしい。特に大樹がどんな物かが凄く気になるらしい。
「うん、バッチリ!」
「よし……いざ! マスカラ街へ!!」
──
ガタゴトと不規則に馬車が揺れる。
御者席のすぐ後ろ、幌馬車の荷台から身を乗り出すようにして、カインが目を輝かせていた。
「見てアイ! 」
風に揺れる髪を軽く押さえながら、カインは嬉しそうに外を見ていた。
(やっぱり天使みたいに可愛い〜)
「ちょっとカイン、落ちたら危険だから身を乗り出しすぎちゃダメだよ」
私はカインの服の裾をぎゅっと引っ張りながら笑って言った。
「うん!分かった!」
カインは私がそう言うと素直に言うことを聞いて、くるりと振り返った。
「そうだ、着替えちゃんと持ってきた? 泥だらけになっても困らないように!」
「うん、バッチリ持ってきたよ。カインこそ、忘れ物してない?」
「ふふん、完璧! 神父様にもクララさんにも『しっかり準備したね』って褒められたんだから!」
カインは誇らしげに胸を張ると、再び前方に視線を向けた。
街道の先には、どこまでも広がる青空と、これから私たちが目指す新しい街への道のりが伸びている。
「カイン今日は一段と元気だね」
「そう? 楽しみだからかな?」
と照れくさそうに笑うカインの頬が、朝日の照らされて少し赤くなっている。
胸の前で手を組んで目を細めるその横顔があまりにも可愛らしくて、私は胸の奥がキュッと締めつけられた。不意に見せるカインらしい仕草や柔らかい笑顔に、視線を奪われてしまう。
(……可愛いな、やっぱり)
私は少しだけ強くカインの手を握った。
「うん、カインが楽しそうだと、私もすごく嬉しいよ」
「本当?」
「うん!」
私がそう頷くと、街道の先から、目的地のマスカラ街の入口である大きな門が見えてきた。




