41、カインとお風呂!!!
巨角熊の討伐に参加し、教会で掃除をして、それから家に帰った。桶に少しだけお湯を張り、体を洗った。
「……あれ、すごく気持ちよかったな」
温かいお湯に触れた瞬間、疲れが少しずつ抜けていくようだった。
前の世界なら、それは特別なことではない。
前の世界では疲れたらお風呂に入るのが当たり前で特別なことではなかったけれど、この世界では入浴にいくつもの準備が必要で毎日続けるには大きな手間がかかる。
「……そうだ」
私は、ふと思った。
お風呂を、文化にしたい。
体を清潔にするだけではない。温かいお湯に浸かって疲れを癒やし、家族や友人と会話を楽しみ、一日の終わりに心と体を休める。
前の世界では生活の一部であり文化でもあったお風呂も、この世界ではごく一部の裕福な家庭や貴族しか入れない特別な存在だった。
それを変えたい。
誰もが気軽にお風呂に入り、温かいお湯で一日の疲れを癒やせるようにしたい。
お風呂を、この世界の文化にしたい。
「よし……!」
「お風呂を、文化にするぞーー!!」
私はベットから勢いよく起き上がった。まずは、自分だけで考えていても仕方がない。
実際に誰かに体験してもらおう。私は家の中から、お風呂代わりとして使っている桶を持ってきた。
お母さんに許可を貰って、カインにお風呂を体験させる事にした。私は桶の中に、熱くなりすぎないように気をつけながら、お湯をためていく。
「うん。これで大丈夫」
桶の中には、温かいお湯がたっぷりと入った。湯気がゆっくりと立ち上っている。
(カインは、どんな反応をするかな?)
私は家を出ると、カインを呼びに行った。まだ畑には行っていないだろう。
「アイ!どうしたの?」
「カイン、今日は私の家に来て」
「何するの?」
「お風呂に入るの」
「お風呂?」
カインは首を傾げた。
「うん。昨日や一昨日も入ったけど、すごく気持ちいよ」
「私も入ってみたい!」
カインは元気よく返事をした。
カインを連れて家へ戻る。
リビングにぽつんと置かれている桶を、カインは不思議そうに近づいていった。
「これ?」
「そう。これ!」
「お湯……?」
カインが桶を覗き込む。
白い湯気が、もくもくと立ち上っている。
「熱くない?」
「大丈夫だよ。ちゃんと調整したから」
カインは恐る恐る手を入れた。
「……あったかい」
「でしょ?」
「これに入るの?」
「そう」
カインは少し迷ったあと、ゆっくりと桶の中へ入った。
「…………」
しばらく無言になる。
「どう?」
「……気持ちいい」
カインの表情が、少しずつ緩んでいく。
「でしょ?」
「うん……」
私はその様子を見ながら、自然と笑っていた。まだ足しか浸かっていないのにこんなに気持ち良さそうだ。
やっぱり、これを広めたい。
「カイン」
「なに?」
「いつかね」
「うん」
「みんながお風呂に入るのが当たり前になるくらい、広めたいんだ」
カインは少し考えると、嬉しそうに笑った。
「私もお風呂好きだから、私も広めたい!」
「うん!一緒に広めよ!」
「うん!」
「カイン、一回全身浸かってみる?」
「うん!」
カインは返事をすると、いきなり服を全部脱いだ。
「服脱ぐの早っ!!」
「だって、お湯に入るんでしょ?」
「そうだけど! もう少し段階を踏むというか……まあいいか」
苦笑しながら、カインの体の大きさに合わせてお湯を張ったおかげか、カインの全身が入っても、溢れなかった。かなりギリギリだったが。
「私も入りたくなったーー!!」
私も勢い良く服を脱ぐと、明らかに二人も入らない桶の中に無理やり体を入れた。すると、お湯が少しだけ溢れた。
「アイ~~キツイよ~~~。それとお湯が溢れたよ」
「まぁ後で拭けばいいよ」
そんなことを話しながら、私たちは狭い桶の中でカインと体をくっつけるようにしてお風呂に浸かっていた。ほぼカインに抱きついているような感じだ。
だが、そんなささやかな至福の時間も長くは続かなかった。
なぜならリビング来た、お母さんに怒られた。
「ちゃんと水を拭いておきなさいよ」
「はーーい」
「カインも手伝って~~~」
私たちはお母さんが持ってきた布で体を拭いた後、ビチャビチャの床を拭いた。
後で気づいたが、私がお湯を魔法でだしたんだから、溢れそうだった水を操ればこんな事にならなかった。
第41話を一度投稿いたしましたが、内容を大幅に改稿いたしました。




