39、巨角熊のあとは、教会の掃除!?
兵士やお父さんたちは、巨角熊を運ぶための作業をするので、その場に残った。私たちは先に馬車に向かい、馬車に乗り込んだ。
馬車に乗ると、さっきまでの戦いが嘘のように静かな時間が流れた。窓の外からは、兵士やお父さんたちが声を掛け合いながら、巨角熊を運ぶ音が聞こえてくる。
馬車の中では会話は無く、私は壁によしかかりいつの間にか、寝ていた。
馬車が止まったことで、目を覚ました。
「……着いた?」
壁に寄りかかっていた体を起こし、窓の外を見と、いつの間にか、街に戻ってきていたようだ。
「おはようございます、アイさん」
向かいの席に座っていたシスターさんが、優しく声をかけてくれた。
「おはようございます……」
私は眠たい目をこすり、ゆっくりと目を開けると、隣でカインもゆっくりと顔を上げて起きた。
「カインさんも、よく眠っていましたね」
「はい……」
カインは小さく返事をした。
「では、降りましょうか」
シスターさんが先に馬車を降り、私とカインも続いて降りた。
教会の前には、いつもと変わらない景色が広がっていた。さっきまで大きな魔物と戦っていたことが、まるで嘘のようだった。
「神父様、お帰りなさい」
教会の中から、初めて見るシスターさんが出てきた。
「ただいま戻りました。皆さん、変わりありませんでしたか?」
神父様が初めて見るシスターさんに話しかけた。
「はい。特に問題はありません」
そう言うと、そのシスターさんは微笑んでいた。
「それならよかったです」
私たちはそのまま教会の中へ入った。
そこで、私はふと洗濯機のことを思い出した。完成するまで、まだまだ時間がかかる。
その間、私は魔法で試してみたいと思っていたことがあった。
「神父様」
「はい?」
「教会の掃除を手伝ってもいいですか?」
神父様は少し驚いた顔をした。
「掃除ですか?」
「はい。私の魔法で掃除をしてみたいんです!」
最近は教会に通っているので、家で掃除を手伝う事は無くなったので、試す事ができなかったのだ。
「魔法で?今日はもう魔法は使わない方がいいですよ。掃除ならそこのシスターに聞きなさい」
「魔力はもう半分くらいは回復しました!それに、私は簡単な事しかしてないので、頭も痛くないです!」
神父様は私に勢いに圧倒されて、身を少し引いた。
「う、うむ。まぁシスターさんに掃除の事には聞いてください」
教会の中へ入ると、早速試したくて、シスターさんに掃除について聞いた。
まずは、廊下の掃除から始めるらしい。
「アイちゃん、そこはもう大丈夫ですよ」
「でも、まだ汚れているところがあります!」
床の隅には細かな砂が残っていて、ほうきだけでは、なかなか取り切れない厄介なヤツだ。
私は手を伸ばし、水魔法を使った。床に薄く水を広げる。砂や埃が水に混ざり、少しずつ集まっていく。
「……こんな感じかな」
私は水をゆっくり動かした。すると、床の隅にあった埃が、水と一緒にまとまっていく。
「まあ……」
シスターさんが驚いた声を上げた。
「水で掃除をしているのですか?」
「はい。水を使ったほうが、埃を集めやすいと思って」
私は答え、水を集めて、桶へ戻す。床には、さっきまで残っていた砂がなくなっていた。
「便利ですね」
シスターさんにそう言われて、少し嬉しくなった。
「はい!!」
「次は、別の場所も掃除してみたいです!」
私はそう言ったら、シスターさんは微笑んだ。
「あっそれと、シスターさんの名前はなんですか?」
(こんなにずっといるのに、名前すら分かってなかったし、知りたいんだよね)
私の近くにいた、カインも頷いて言った。
「あっ!私も少し気になる!」
「ふふふ、そうですね。まだ私の名前を言ってませんでしたね」
「私の名前は...」
ごくり
「クララです」
「「クララ!」」
「素敵な名前ですね!」
「ふふ、ありがとうございます。そう言っていただけると嬉しいです」
シスター・クララは目を細めて、聖母のように柔らかく微笑んだ。その優しげな佇まいと「クララ」という澄んだ響きの名前は、驚くほどぴったり合っている。
「これからは遠慮なくクララと呼んでください」
「「はい!」」
「「 クララさん!」」
名前を知っただけで、なんだかクララさんとの距離がぐっと縮まった気がした。カインもどこか嬉しそうな顔をしていた。
「それでは、次の掃除場に行きましょうか」
「「はーい!」」
「次の場所では、床を濡らしすぎないようにしてくださいね」
私たちは教会の食料を置いている部屋へ向かった。そこには、穀物や野菜が入った袋が置かれている。
シスターさんが扉を開けた瞬間、足元から小さな音が聞こえた。
「……あら?」
シスターさんが、床を見ると、袋の近くに、小さな穴が開いていた。
「またネズミでしょうか」
シスターさんが困ったように言った。
「ネズミ?」
私は尋ねた。
「はい。最近、食料をかじられることが多いのです」
シスターさんは、袋の端を見せてくれた。そこには、小さな歯形がついている。
「ネズミが入ってくるのは、困りますね」
私は床の隅を見ると、壁と床の間に小さな隙間があり、そこから入ってきているのかもしれない。
「カイン、土魔法で塞げる?」
「これくらいなら、余裕だよ!」
カインは壁の隙間に手を向けた。すると、土が少しずつ集まり、穴を塞いでいく。その土は見るからに硬そうだった、まさに石のように硬そうだった。
「これで、入れなくなったよ」
カインが言った。
「ありがとう!」
けれど、これだけでは十分ではない。ネズミは別の場所からも入ってくるかもしれない。
「他の隙間も探してみよう!」
私たちは部屋の中を見回した。すると、棚の後ろにもう一つ、小さな穴が見つかった。
カインがそこも土魔法で塞ぐ。これで、少しはネズミが入ってくるのを防げるはずだ。
「助かりました」
シスターさんが、嬉しそうに笑った。
「最近は、食料を守るのが大変でしたから」
私は袋の中身を見ると、少し減っていた。
食料が減ってしまえば、教会の生活にも影響が出てしまう、それなら、ネズミを防ぐための魔法も、もっと考えたほうがいいかもしれない。私の家にもたまに出てくるから...




