32、買い物?
「まあ、次からは自分の魔法でどうにかならないかを先に考えなさい。どうしてもできない時に、今回のようなやり方をとればいいのだからね。だが、無駄遣いだけはしないようにな」
「「はい!」」
(次からはちゃんと考えてから、行動しないとね)
「まぁ今日は組合に行ってから、シスターと市場に行きなさい。洗濯機?に必要な物が揃ったら、教会の庭で作ってみるといい。私も洗濯機というのに少しだけ興味があるからな」
神父様の言葉に、私とカインは顔を見合わせて頷いた。
「「はい!」」
「それじゃあ、組合に行ってきます!」
「気をつけて行ってきなさい」
神父様に見送られ、私たちはシスターさんと一緒に教会を出て、組合に向かった。
組合の中へ入ると、私たちは受付に向かって受付の人に話しかけた。
「おはようございます。今日は何か依頼がありますか?」
受付の人は私たちの顔を見ると、少し考えるような顔をした。
「お二人に受けていただきたい依頼があるのですが、非常に危険な内容です。受けるかどうかはご自身の判断にお任せしますが、私個人としてはお断りしていただきたいと思っております。それでも良いならありますよ...」
(危険な依頼?)
「危険な依頼、ですか?」
「はい」
受付の人は、一枚の依頼書を取り出した。
「街の外で魔獣が目撃されまして、その討伐依頼です」
「魔獣......」
私は依頼書を受け取り、書かれている内容に目を通した。
「どうして、この依頼が私たちに?」
私が尋ねると、受付の人は少し困ったような顔をした。
「現在、この辺りでは魔法使いの人がほとんど残っていないんです」
「ほとんど......?」
「ええ。戦争の影響です」
その言葉に、私は息を呑んだ。
「戦争?」
「最近、国境付近の警戒が厳しくなっていましてね。魔法を使える人たちは、戦力として国境近くへ集められているんです」
受付の人は周囲を気にするように声を少し落とした。
「そのため、この辺りに残っている魔法使いは少なくなっています」
「それで、私たちも候補になったんですか?」
「はい。お二人も一応魔法使いとされているので」
私は依頼書を見つめた。
私たちが選ばれたのは、強いからではない。ただ、魔法使いが少なくなっているからだ。
受付の人は険しい表情をしていた。
「ですが、私はお勧めしません」
「......どうしてですか?」
「魔獣の討伐は危険です。それに、お二人はまだ子供です」
受付の人は依頼書を机の上に戻した。
「魔法使いが少ないからといって、子供まで危険な仕事をする必要はありません。私個人としては、今回はお断りしていただきたいと思っています」
私は危険を冒してまで受ける必要はない、と思う。
「......やめておきます」
「私も、それがいいと思う」
カインも頷いた。
受付の人は、ほっとしたように息を吐いた。
「そうしていただけると助かります」
「すみません」
「いえ、謝る必要はありませんよ。無理をして怪我をするほうが困りますから」
私たちは依頼を受けず、そのまま受付を離れた。
魔法使いが国境に集められている。
それだけ戦争が近いということなのだろうか。
(怖いな……戦争)
組合を出ると、私たちはそのまま市場へ向かった。
「それじゃあ、洗濯機に必要な物を買いましょう」
「うん!」
「アイが考えた物を作るの楽しみ!」
カインが笑顔でそう言った。
(私が考えたか...そういう事にしとくか)
「そ、そう。私も楽しみだなーー」
私たちは市場につくと、シスターさんに手を引いてもらいながら、市場の中を歩いていく。
昨日と同じように、たくさんの店が並んでいる。
食べ物を扱っている店を抜けると、日用品を売っている店が多くなってきた。
「まずは、鉄の棒を買いに行きましょうか」
「うん!」
私たちは昨日行った、鉄の棒を売っている店に向かった。
「こんにちは!」
「おう、いらっしゃい。昨日の嬢ちゃんたちじゃねーか」
少しいかつい男性がこちらを見て返事をした。
「昨日見せてもらった鉄の棒ってありますか?」
「あれか、ちょっと待ってろよ」
いかつい男性は屈んで、自分の足元に手を伸ばした。
「これか」
手に持っているものを見ると、昨日見せてもらった物と同じ物だった。
「これです!あともう一本ありますか?」
「もう一本なら、あるぞ」
男性は近くに置いてあった、もう一本の鉄の棒を手に取った。
「これでいいか?大きさや長さは一緒だと思うが」
「はい!」
「それなら、銅貨六枚だ」
(六枚...カインにこれも払ってもらうわけには、いかないから、値下げ交渉をするしかない!)
私は少し間を空けて、男性の顔色をうかがいながら尋ねた。
「あの~~今銅貨五枚しか持ってないので、安くしてもらえませんか?」
男性の視線が刺さり、ドキドキと胸が鳴る。けれど、男性はふっと眉の力を抜いた。
「五枚か......まあいいぞ。長らく買い手がつかなくて困っていたからな」
(やったー! 交渉成立!)
「ありがとうございます!」
私は安堵の息を吐きながら、袋に入っている銅貨五枚を取り出した。店主のゴツゴツとした手に銅貨を渡すと、冷たい鉄の棒が私の手に手渡される。
ずっしりとした重みが、なんだかとても誇らしかった。
(よしっ! 次は木のローラーと金具! 一気に買っちゃうのもアリだけど、失敗したら痛いし......まずはローラーを買ってサイズを確かめてから金具とかを買った方がいいよね。大きな買い物だし、慎重すぎるくらいで丁度いいよね)
「金具も買わないの?」
カインが私に尋ねてきた。
「一気に買うのもいいんだけど、木のローラーを買ってからの方が良くない?」
「ん~~確かに、そうだね。今買って、木のローラーと大きさが合わなかったら意味ないもんね」
「そうそう! だから次は木工職人のとこに行こ!」
「うん!」
私は鉄の棒をカインと一個ずつ持って、シスターさんと手を繋いでこの店を離れて、木工職人の店へ向かった。
「こんにちは!」
「こんにちは!」
私とカインは元気よく木工職人のおじさんに挨拶すると、おじさんはこちらに気づいた。
「嬢ちゃんたちか、木のローラーを買いにきたんだな」
「はい!それと、鉄の棒はこれです!」
さっき買った鉄の棒を職人に見せると、おじさんはそれを受け取り、棒の太さや長さを確認するように眺めた。
「これが昨日言ってた鉄の棒か」
「はい! 二本買ってきました!」
「ちゃんと二本揃えたんだな」
おじさんは二本の鉄の棒を並べて、長さを比べる。
「ほとんど同じだな。これなら使えそうだ」
「本当ですか?」
「ああ。ただ、木のローラーに、この鉄の棒を通すための穴を開ける必要があるな」
「はい。お願いします!」
「よし、それなら、この鉄の棒を二日間ぐらい預かっていいか?」
「はい!それじゃあ、二日後に取りに来ればいいですか?」
「ああ。二日あれば十分だ」
「分かりました!」
私は頷いた。
これで、鉄の棒と木のローラーを合わせる準備ができた。
「それと、金具はまだ買ってないんだな?」
「はい。ローラーができてから買おうと思っています」
「それでいい」
おじさんは頷いた。
「実際にローラーと棒を合わせてみてからのほうが、どんな金具が必要なのか分かりやすいからな」
「やっぱりそうですよね!」
「昨日の話を聞いたときから、そこは気になっていたんだ。金具を先に買って、あとから合わないなんてことになったら無駄だからな」
「はい!」
(よかった。考え方は間違ってなかったみたい!)
「じゃあ、ローラーと加工代を合わせて......」
「銅貨十七枚ってとこか?」
私はそれを聞いて、カインを見た。カインは私の視線に気づいてすぐに答えた。
「はい!それで大丈夫です!」
「よし、それなら支払いは、二日後に銅貨十七枚でいいな?」
「はい!」
「それじゃあ二日後に来ます!」
「おう、ちゃんと仕上げとくからな」
私たちはカインとおじさんの会話が終わると、店から離れた。




