↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
31/33

27、進む!

私たちは来た道を戻り始めた。


(よし、ちゃんと作れる方法を聞いておかないとな)


ローラーに穴を開けるのはかなり大変そう、実際にどうやって開けるのかも分からない。


前世なら電動ドリルを使えば一瞬かもしれないけど、この世界にそんな便利な道具があるとは思えない。


「おじさん、ただいま!」


先ほどの木工職人さんの店に戻ると、おじさんは作業台の前で木材を削っていた。


「おう、嬢ちゃん。もう戻ってきたのか?」


「はい!ちょっと聞きたいことがあって」


おじさんは苦笑いをしながら、膝に乗っている木くずを払い落として聞いてきた。

「なんだ?」


「このローラーに穴を開けたいんですけど、どうやって開ければいいですか?」


私は店先に置かれているローラーを指差した。


おじさんはローラーを手に取ると、端の部分を眺める。


「穴か。何のために開けるんだ?」


「鉄の棒を入れたいんです」


「鉄の棒...」


おじさんは少し考えると、作業台の近くに置かれていた道具を手に取った。


「これを使う」


「これは?」


「錐だ」


おじさんが見せてくれたのは、先端が尖った細い金属製の道具だった。

(この錐ってやつ見たことないけど、アイスピックに形が似てる)


「木に押し当てて、こうやって回す」


おじさんは木材に錐の先端を当て、手で柄を回した。

ギリギリと小さな音を立てながら、尖った先端が少しずつ木の中へ入っていく。


「こうやって少しずつ穴を深くしていくんだ」


「これで穴が開くんですか?」


「細い穴ならな」


おじさんは錐を抜き、できた穴を見せてくれた。


「もっと大きな穴を開けたいなら、別の道具を使う」


「別の道具?」


「ああ」


おじさんはそう言うと、棚から別の道具を取り出した。


先端に螺旋状の刃がついている。


「これは木工用の穴あけ道具だ。錐より大きな穴を開けられる」


「へぇ〜〜」


私は道具をじっと見つめた。


(これなら、鉄の棒を通す穴も開けられそう)


「これを使えば、ローラーの真ん中に穴を開けられますか?」


「できる。ただし、真っ直ぐ開けるのは簡単じゃないぞ」


「真っ直ぐ...」


「穴が斜めになれば、棒も斜めになる。そうなりゃローラーがうまく回らん」


「なるほど...」


私はローラーを見つめた。


(確かに。穴を適当に開けてしまえば、鉄の棒が斜めになってしまうかもしれない。そうなると、ローラーも綺麗には回らない...のか、思ったより難しいかも...)


「おじさんなら、真っ直ぐ穴を開けられますか?」


「まあ、これくらいならな」


おじさんは当然のように答えた。


(やってくれるなら、おじさんにお願いするしかないよね。ていうか、真っ直ぐ穴を開ける自信があるなんて凄すぎない? きっと木工一筋でやってきた職人さんなんだろうな)


「あぁそれと、鉄の棒を持ってきてくれ。それに合わせて穴を開けた方がいい。穴が大きすぎると棒がぐらつくからな」


「じゃあ、明日鉄の棒を持ってきたときに、一緒に穴も開けてもらえますか?」


「構わんぞ」


「本当ですか!」


私は思わず笑顔になった。


「じゃあ、お願いします!」


「おう」


おじさんはローラーを元の場所へ戻した。


「ところで、ローラーの両端に鉄の棒を通すんだったな?」


「はい」


「だったら、もう一つ考えた方がいい」


「何ですか?」


「鉄の棒をローラーにどうやって固定する?鉄の棒をローラーの穴にただ差し込んだだけだと、鉄の棒だけ回って、ローラーが回らない可能性がある」


「.......」


私は頭が真っ白になった。


「えっと...穴に入れるだけじゃダメですか?」


「それじゃ回しているうちに抜けるかもしれん」


「あっ....」


確かにその通りだ。

ローラーを回すための棒なのだから、棒とローラーが一緒に回らなければならない。

穴にただ差し込んだだけでは、棒だけが空回りする可能性がある。

(完全に見落としてた...)


「じゃあ、どうすればいいんですか?」


「方法はいくつかある」


おじさんはローラーの端を指で叩いた。


「棒をかなりきつく差し込む方法もあるし、別の部品を使って固定する方法もある」


「別の部品...」


「嬢ちゃんが作りたいものなら、棒を抜けにくくするだけじゃなく、回す力がしっかり伝わるようにした方がいいだろう」


「なるほど...」


私は考え込んだ。

ただ棒を差し込めばいいと思っていた。

でも、実際に作るとなると、細かいところまで考えなければならない。

(結構本格的になってきたな...)


「じゃあ、鉄の棒を買ってから、もう一度相談してもいいですか?」


「あぁ、その方がいい。棒を見ながら考えた方が早いからな」


「分かりました!」


これで、明日やることが決まった。


まず鉄の棒を買う。


それをここへ持ってきて、ローラーに合う穴を開けてもらう。


そして、棒とローラーをどうやって固定するかを考える。


「ありがとうございました!」


「おう。明日、忘れずに持ってこいよ」


「はい!」


私たちは店から離れた。


「次は何を探すの?」


カインが尋ねてくる。


「ローラーを支える枠に使う板かな」


「まだ買うものがあるんだね」


「うん。でも、だいぶ形は見えてきたよ」


私は両手を使って、頭の中にある洗濯機の形を表してみる。


二本のローラーを上下に並べる。

その両端から鉄の棒を伸ばす。

そして、その棒を金具で支える。

あとはローラーを回すためのハンドル。


「......うん」


頭の中で少しずつ形が繋がっていく。

まだ完成には遠い。

それでも、最初は何もなかったところから、少しずつ作るものの姿が見えてきていた。


「アイさんは凄いですね。最初は本当にどうなることかと思ったけれど、アイさんの頭の中にはもうしっかりと完成形が見えていますね。本当に大したものです」


「えっ、そんな事ないですよ」


自分から生み出したわけじゃなくて、ただ前世の世界にあった知識をそのまま思い出しているだけ。そう思うと、なんだかズルをしているみたいで少し心が少し痛む。


けれど、カインは身を乗り出すようにして、目を輝かせながら頷いた。


「そんなことあるよ! 私なんて言われたものを探すので精一杯なのに、アイはゼロから仕組みを考えてるんだもん。本当に尊敬しちゃうな」


「ええ、カインの言う通りです。こうして形にしていく発想力も、諦めずに一つひとつ課題をクリアしていく行動力も、アイさんの素晴らしい才能ですよ」


(なんかとんでもない天才みたいになっちゃってる..カイン、シスターさん、私はゼロから仕組みを考えているわけではないよ...前世の知識を使ってるだけなんだよね。でもそんな事を気にしていたら、この先何にも作れなくなるから、気にしないでおくけど、天才扱いはちょっといやだな)


「あはは、そんなに凄くないってば」


私は思わず苦笑いを浮かべながら、頭の後ろをかいた。二人からの視線がとても恥ずかしく感じてしまう。


「それに、実際に形にするにはおじさんたちの技術や、こうして手伝ってくれる二人のおかげなんだから。私一人じゃ何も作れないよ」


「またまた~、アイは照れ屋さんだなぁ! でも、そういう謙虚なところもすごいと思う!」


カインは悪戯っぽく笑うと、シスターさんも「ふふっ」と優しく微笑んでいる。


どうやら二人の中で、私の評価は「控えめな天才」ということで固まってしまったらしい。これ以上否定しても意味がなさそうだし、何より二人の温かい気持ちは本当なんだから、素直に受け取っておくことにしよう。


(よし、天才扱いに恥じないように......じゃなくて、みんなで便利な洗濯機を完成させるために、どんどん進むぞ!)




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。