26、予想以上
カインはパッと表情を明るくした。
(やったー!ちょっと無理やりだったかもしれないけど、アイのやくにたてたかな?)
「話しは終わったか?」
私とカインの内緒話が終わると店主が話しかけてきたので、私は店主のおじさんに向き直った。
「あの、おじさん。この丸棒、明日まで取っておいてもらえますか?」
「明日までか?」
「はい。今日は必要なものと値段を確認して、明日お金を持って買いに来たいんです」
「なるほどな」
おじさんは丸棒を見て、顎の髭を撫でながら頷いた。
「まぁ、明日までなら取っておいてやるよ」
「本当ですか?ありがとうございます!」
「ただし、明日になって別の客がもっと高い値段を出してきたら、そっちに売るからな」
「えっ!?」
私が声を上げると、おじさんは豪快に笑った。
「ははは、冗談だ。明日買いに来るってんなら、ちゃんと取っておいてやるよ」
「もう、おじさん!」
私が頬を膨らませると、おじさんはますます楽しそうに笑った。
「ははは!それで、他には何が必要なんだ?」
「えっと......ローラーを支える枠と、ローラーを回すための棒。それから、棒につける取っ手も必要です」
「棒なら、この辺りにある細い丸棒が使えるだろう。枠にする板も必要だな」
おじさんは店の奥を指さした。
「ただ、板は大きさによって値段が変わる。寸法を決めてから選んだほうがいい」
「なるほど...」
私は頷きながら、必要な材料を頭の中で整理した。
(ローラーが二本。ローラーを支える板。それから、回すための細い棒...)
「アイ、全部でいくらくらいになるかな?」
カインが隣から尋ねてきた。
「うーーんどうだろう。予想だけど銀貨二枚とかかな?」
(こういう感じの買い物は経験したことがないから、あんまりわかんないけど、麺棒みたいなやつ一本で銅貨8枚ってことは、全部で銀貨二枚はいくかな?流石に木の板とかは安いだろうし)
「おじさん。明日また来ます!」
「おう。待ってるぞ」
私たちはおじさんに手を振って、お店を離れた
「次は何を探すの?」
カインがシスターさんを挟んで聞いてくる
「ローラーを回すための棒と、それを支えるものかな」
「ローラーを回す棒?」
「うん。ローラーの端に棒を取り付けて、その棒を回せばローラーも一緒に回るようにしたいの」
私は手を動かしながら、完成した洗濯機を想像してみる
二本のローラーを横に並べて、その間に服を入れる
そして、片方のローラーを回せば、もう片方も回るようにする
(でも、よく考えたらローラーに棒を取り付けるにはどうすればいいんだろう?)
今見ている丸棒には、もちろん穴なんて開いていない
そのままでは棒を差し込むことはできない
「シスターさん、木に穴を開ける道具ってありますか?」
「穴を開ける道具ですか?」
「はい。ローラーの端に、棒を入れるための穴を開けたいんです」
「それなら、木工職人さんのお店で聞いたほうがよさそうですね」
「そっか」
やっぱり、さっきのお店で聞いておけばよかった
明日買う予定とはいえ、必要なものを全部確認してから帰らないと、あとで足りないものが出てきそうだ
「じゃあ、もう一度お店に戻る?」
カインが聞いてくる
「ううん、先に他の材料も見てみよう」
せっかく市場まで来たんだから、一通り見てから戻ったほうがいい
「次は金属を扱っているお店に行ってみましょうか」
「はい!」
シスターさんについて歩いていると、遠くからカン、カン、と金属を叩く音が聞こえてきた
音のする方へ進むと、鉄でできた道具や金具が並んでいる露店があった
「「こんにちは!」」
私とカインは元気よく挨拶すると、筋肉隆々の男性が返事をした。
「おう、いらっしゃい」
少しいかつい男性がこちらを見る
「細い鉄の棒ってありますか?」
「鉄の棒?」
「はい。木で作ったローラーを回すために使いたいんです」
「へぇ、ローラーをねぇ」
男性は少し考えると、店の奥から細い鉄の棒を持ってきた
「これなんかどうだ?」
真っ直ぐな鉄の棒で、長さも十分ありそうだ
「これなら使えそう!」
「何に使うかは知らんが、細いから力をかけすぎると曲がるぞ」
「それなら、もう少し太いほうがいいのかな?」
「ローラーを回すだけなら、このくらいでも十分だと思うがな」
「なるほど...な」
私は鉄の棒を見ながら考える
ローラーを回すだけなら、そこまで太いものは必要ないらしい
「おいくらですか?」
「銅貨三枚だ」
「三枚ですね」
私は頭の中で値段を計算する
ローラーが二本で銅貨十六枚
鉄の棒が三枚だから、ここまでで銅貨十九枚だ
(まだ板と取っ手も必要だから、結構かかりそうだなぁ銀貨二枚どころの話しではないかもしれないなー)
「それと、こういう金具はありますか?」
私は店に並んでいる金属の輪を指さした
「これか?」
男性が手に取る
「これは棒を通して使うものだな」
「棒を通す?」
「こういうふうにするんだ」
男性は近くにあった細い棒を手に取ると、金具の輪の中へ通した。
「こうやって使うんだ」
そう言いながら、男性は棒の片側を手で持って、くるくると回してみせる。
棒は金具の輪の中で滑らかに回った。
けれど、棒を通している金具は動かない。
「この金具は、棒を支えるためのものだ。棒そのものを固定しちまうんじゃなくて、棒が回れるように支えてやるんだ」
「なるほど...」
私は棒と金具を交互に見る、つまり、金具は棒を抱えるように支えているだけで、棒が回る邪魔はしないということらしい。
「これをローラーの両端に取り付ければ、ローラーについている棒を支えながら、ローラーだけを回せるってことですか?」
「そういうことだ」
「なるほど!」
(これなら使えそう!)
ローラーに取り付けた棒を、この金具で支える
そうすれば、棒が回っても金具まで一緒に回ることはない
「これ、二つ必要ですか?」
「二つあったほうがいいな。棒の両端を支えられるからな」
「なるほど……」
男性の説明を聞いて、頭の中に少しずつ形ができていく
木のローラー
その両端から出ている鉄の棒
そして、鉄の棒を支える金具
「この金具はいくらですか?」
「一つ銅貨二枚だ」
「二つで四枚ですね」
今のところ、ローラーが十六枚、鉄の棒が三枚、金具が四枚
全部合わせて銅貨二十三枚だ
(銀貨二枚と銅貨三枚……)
少し高くなってきた、しかも、まだ板と取っ手を買っていない
「アイ、結構お金が必要だね」
「うん。でも、ちゃんと使えるものを作るなら仕方ないよ」
「私もそう思う!」
カインが笑いながら言った。
「おじさん、この金具も明日買いたいんですけど、取っておいてもらえますか?」
「構わねぇぞ」
「ありがとうございます!」
必要なものと値段を確認したところで、私はもう一度、鉄の棒を見る
(あとはローラーにどうやって穴を開けるかだよね)
棒を取り付けるには、ローラーの端に穴を開けなければならない
しかも、棒がぐらぐらしないように、できるだけ真っ直ぐに穴を開ける必要がある
「シスターさん、やっぱり最初のお店に戻りたいです」
「穴を開ける方法を聞くんですね?」
「はい!」
「では、行きましょうか」
私たちは来た道を戻り始めた
(よし、ちゃんと作れる方法を聞いておかないとな)




