25、ローラー式洗濯機
「その可能性は十分にありますね。お二人ともちょうど魔力が増える時期ですし、なにより元々の魔力量が多い分、成長する速度も早いのかもしれません」
「そっか、私とカインの魔力が増えてるんだ」
私は自分の手を何度も開いたり閉じたりしながら、指先に意識を向けた。
魔力切れだから、実感はそこまで湧いていない。けれど、成長していると言われたのは素直に嬉しかった。
「じゃあ馬車に戻ろっか」
私の掛け声にカインが勢いよく頷き、私たちは馬車の中に入った。
「この後どうする?」
馬車の中で、私がシスターさんとカインに問いかけた。
「んーー私は特にしたいことはないし、教会でアイの魔力が回復するまで、待つとかでいいんじゃない?」
「まあ、それが一番無難ですね。魔力切れのまま無理をさせるわけにはいきませんから」
シスターさんは優しく微笑みながら言った。
「でもさ、せっかく街に来たし、私は市場に行って買いたいものがあるんだよね」
私の言葉にカインは身を乗り出し、何を買いたいのか尋ねてきた。
「えっ何買いたいの?」
「ふふん、実は、木の棒が買いたいの!」
私はどや顔で言った。
「木の棒?」
「木の棒?ですか」
カインとシスターは『なぜ木の棒?』と不思議そうな顔で、私に視線を向けた。
「そう! でも木の棒っていうか、麺棒みたいなローラーのことなんだよね」
「「ローラー?」」
カインとシスターさんが言葉を重ねて言った。
「そう!ローラーで洗濯機を作ってみたいんだよね」
「せんたくき?」
二人はさらにポカンとした表情で首を傾げた。
「洗濯機っていうのはね、二本のローラーの間に服を挟んでハンドルを回すと、簡単に脱水ができる機械のこと!」
(前世の教科書で見たローラー式洗濯機を作れたら、いつも服を手で強く絞るのがすごく大変だったけど、絶対に楽になるはず!)
シスターさんが腕を組んで少し考えた後、私の言った事に関心していた。
「なるほど...確かに、それがあったら洗濯での脱水がかなり楽になりそうですね」
「でしょ!」
私は身を乗り出して言った。
「だから、まずはローラーを作るための木の棒が欲しいの!」
「でも、どうして市場なんですか?」
「市場なら木材を売ってる人がいるかもしれないし、ちょうどいい大きさの棒も見つかるかもしれないから!」
「なるほど...」
シスターさんは納得したように頷いた。
「それなら、魔力が回復するまでの時間に見に行ってみるのもいいかもしれませんね」
「やった!」
私は両手を握って喜んだ。
「カインも行くよね?」
「もちろん!」
カインもすぐに頷いた。
「でも、ローラーって二本必要なんだよね?」
「そうそう!」
「じゃあ、同じ大きさの棒を二本買わないといけないの?」
「うーん...」
私は少し考えた後答えた。
「できれば同じ大きさがいいかな。でも、棒だけじゃ足りないんだよね」
「必要なものが多そうですね」
「うん。ローラーを回すための物とか、ローラーを固定するための台も必要!」
「........」
シスターさんの笑顔が少し固まった。
「思ったより本格的ですね」
「洗濯機だからね!」
「洗濯機...」
シスターさんが小さく呟いた。
まだ”洗濯機”という言葉に慣れていないらしい。
「それで、どんな形になるんですか?」
「えっとね...」
私は手を使って、空中にローラーの形を描いた。
「二本の棒を上下に並べて、その間に服を入れるの。それで、こっちの棒を回すと、もう一本も一緒に回って...」
「一緒に?」
カインが首をかしげながら、聞いてきた。
「そう。二本の棒を近づけておけば、服が間に挟まるでしょ?」
「うん」
「その状態で棒を回せば、服が引っ張られて反対側に出てくるの!」
「それなら確かに、水も絞れそうですね」
シスターさんが感心したように言った。
「でしょ?」
私は胸を張って言った。
「ただ...」
シスターさんが私にわからない事を聞いてきた。
「その二本の棒を、どうやって回すんですか?」
「.......」
私は固まった。
「...ハンドル?」
「ハンドル、ですか?」
「うん。棒の端に、こう...持つところをつけて」
私は自分の手を空中でくるくる回してみせる。
「こうやって回す!」
「なるほど」
カインも真似して手を回した。
「こう?」
「そうそう!」
「じゃあ、簡単じゃん!」
「多分!」
「多分...」
カインが少し不安そうな顔をしていた。
私は気まずくて視線を逸らした。
前世で見たローラー式洗濯機は、もっとちゃんとした構造だった。
ローラーが二本あって、片方を回すともう片方も回るようになっていて、洗濯物を挟んで水を絞る。
そこまでは覚えている、でも。
(どうやって二本のローラーを連動させてたっけ?)
私は前世の記憶を必死に探って、どうなっていたか思い出していた。
歯車だったような気がする、多分。
(まあ、実物を見たこともないし、細かいところまで覚えてるわけないよね)
私は小さくため息をついた。
「とりあえず、材料を見てから考えよう!」
「ふふ、そうですね。最初から完璧なものを作ろうとする必要はありません」
シスターさんが微笑みながら言った。
「まずは、実際に使えそうな材料を探しましょう」
「うん!」
私は勢いよく頷いた。
「あっそれと、お金はどうするんですか?」
「あーーとりあえず今日は材料を見るだけにして、買うのは今度にします!依頼が達成できたら、お金が手に入るので」
私たちは、ローラー式洗濯機の材料を探すため、市場へ向かうことになった。




