24、魔力が増えた?
ゆらゆら揺れる湯船の中で、私は天にも昇るような幸福感にどっぷりと浸っていた。
(混合属性で本当によかった! 水蒸気が出せるなら温かいお湯もいけるはずって試してみたら、できたし、やっぱり魔法ってイメージの世界なんだなーー)
「ありがとう、お母さん」
「そう、よかったわ」
お母さんは嬉しそうに目を細めると、大きな干し布を持って木桶のすぐそばに広げてくれた。
「さ、もう上がりましょ」
「はーい」
名残惜しさを感じつつもお湯から上がると、お母さんが手際よく身体を布で包み込んでくれた。全身がポカポカと温かく、お肌もさっぱりとして最高に気持ちがいい。
頭を拭いてもらいながら心の内でガッツポーズを決めていると、寝室の扉がそっと開いてお父さんが顔を出した。
「おお、アイ、もう上がったのか? なんかリビングが温かいな」
「私の魔法でお湯を出したの」
「アイの魔法は凄いなー」
「あら、感心してる場合じゃないわよ。床が濡れないうちに、この桶のお湯を片付けるのを手伝って頂戴」
お母さんにそう促されて、お父さんは「はいはい」と苦笑しながら腕まくりをした。
「大丈夫だよ、桶の中にある水は操れると思うから、外にそのまま出せると思う」
私は桶の水へと手を向け、魔力で包み込むようにしてそっと宙へと持ち上げて、そのまま窓から水を外に出した。
「凄いな、アイ」
「本当、もうこんな事ができるなんて」
「教会で練習したしね!」
「よし、お片付けも一瞬で終わったことだし、体が冷えないうちにベッドに入りなさい」
お母さんは笑いながら、言った。
「はーい」
(今日はもう眠いや、いくら魔力の回復が早くても、一日に二回も魔力切れを起こしたら、めっちゃ疲れたなーー)
私はそのまま、寝室に向かい、藁のベッドでぐっすりと眠りについた。
翌朝
窓から差し込む朝日に照らされて、私はゆっくり目を覚ました。
ベッドから降りると、リビングに向かった。
いつものように朝食を済ませると、私とお父さんはカインの家へと向かった。そこでカインと合流し、三人で教会へと向かう。行く途中にカインと会話をしていた。
「ねえ、金貨ってどこに仕舞ったの?」
「家の中にある、木箱の中に入れたよ」
(この村で盗みとかは起こらないと思うけど、ちょっと怖いよね。多分まだ、銀行がこの世界にはないんだろうな)
「お父さん、お金を預ける場所とかないの?」
お父さんは少し困った様子で歩きながら、腕を組んでいた。
「お金を預ける場所か。この街にはないと思うぞ。でも、王都にそういう場所ができたって話なら、聞いたことがあるような...」
(まあーこの街でお金持ちな人はあんまりいないし、銀行の需要があんまりないのかな?)
カインと会話をしていると、カインの親は彼女に対してどこか無関心なのだと分かった。カインが家を出ても何も言ってこないし、カインがお金を稼いでいることについても、特に気にする様子がないからだ。
(なんでカインに対してそんな感じなんだろう?)
街に着くと、いつもと変わらない様子だった。
教会までお父さんに送ってもらい、私たちはいつもの部屋へと向かった。
「「おはようございます!」」
「おはようございます」
部屋に入るとシスターさんがいたので、私とカインは元気よく同時に挨拶をした。
「では、組合に向かいますか? まだ朝の鐘は鳴っていませんが、歩いている途中で鳴ると思いますよ」
「「はい!」」
(今日は午前に一回、午後に一回防火水槽に水を入れたし、すぐ行った方が良いよね)
私たちは神父様には会わないまま教会の外に出て、組合に向かった。
(昨日や一昨日はこの時間にはいたのに、神父様はどうしたんだろう?)
組合に着くと、私たちはさっそく馬車の申請をして、しばらく待つことにした。カインに何か依頼はないのかと尋ねてみたが、今日はないらしい。
(一回頼むだけでも高額だし、そんなに頻繁には依頼が来ないのかな?個人より団体で依頼を出すケースが多そうだよね。現に、私の受けてる依頼だって団体からだし)
「あ、馬車が来たみたい」
私がそう言うと、シスターさんとカインも長椅子から立ち上がった。
「本当だ」
「行きましょうか」
組合の外に出て御者台の方に目を向けると、バドさんが手を振っていた。
「よう! 朝から感心だねぇ」
「はい! ありがとうございます!」
元気に挨拶をしてから、私たちは馬車へと乗り込んだ。
ガタゴトと馬車が揺れ始め、車窓の外の景色がゆっくりと流れていく。
「また、あっちの方か。最近は暑いし、あんまり無理すんじゃないぞ」
御者台の方からバドさんが声をかけてきた。
「大丈夫ですよ!簡単な依頼ですし、カインやシスターさんもいるので」
「そうかい、それなら安心だな」
馬車に乗っていると、だんだん街が静かになってきた。
「よし、着いたぞ。気をつけて降りろよ」
「バドさん、ありがとうございました!」
私に続いて、カインともお礼の言葉をバドさんに言った。
「ありがとうございました」
シスターさんは軽くお辞儀をした。
その後、シスターさんから馬車を降りて、私とカインも降りた。
降りた目の前には、防火水槽があった。
「あれ?なんか少しだけ増えてる?」
防火水槽の中身が、昨日からほんの少しだけ増えていた。
「本当だ、なんでだろうね」
カインが疑問を口にしたら、シスターさんが答えた。
「もしかしたら、この周辺に住んでいる人が少しずつ入れてくれているのかもしれませんね」
(火事がいつ起きるかもわからないし、少しでも早く水をためたくて依頼したのかな? そうじゃなきゃ、わざわざお金を払ってまで頼む必要もないもんね。街の人たちだけで、水を補充できるなら)
「早く水をためてあげないとね」
「我が魔力よ、清き水に姿を変えよ」
空中からバシャバシャと水が流れ出した。
「あれ?なんか昨日より少しだけ、多く出た?」
私の感じた小さな違和感に、カインもシスターも気づいていなかった。
「そう?変わらないと思うけど」
「見ただけでは、量が増えたかどうかまではわかりませんね」
「もしかしたら魔力量が増えたんじゃない?」
カインがふと思い当たったように言った。
「その可能性は十分にありますね。お二人ともちょうど魔力が増える時期ですし、なにより元々の魔力量が多い分、成長する速度も早いのかもしれません」




